• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. トーナメントレポート >
  3. 【LIV GOLF NEWS】元CEOグレッグ・ノーマンがL...

【LIV GOLF NEWS】元CEOグレッグ・ノーマンがLIVゴルフから完全撤退

グレッグ・ノーマン(オーストラリア)

1955年2月10日生まれ。世界ランク最高位1位(通算331週)。米ツアー20勝(永久シード選手)、欧州ツアー14勝など世界で90勝以上。「全英オープン」2勝。“ホワイトシャーク”の異名を持つ。2001年に世界ゴルフ殿堂入り。近年は、LIVゴルフをCEO兼コミッショナーとして牽引。コース設計やワインビジネスなども手掛ける。©LIV GOLF
今年のLIVゴルフ・アデレード大会にて。左からグレッグ・ノーマン、南オーストラリア州のピーター・マリナウスカス首相、LIVゴルフ新CEOのスコット・オニール氏。©LIV GOLF
2022年6月に第1回大会「LIVゴルフ・ロンドン」を開催。その表彰式でスピーチした、グレッグ・ノーマン(当時のLIVゴルフCEO・右)。左はサウジ政府系ファンドの代表、ヤシール・アル・ルマイヤン氏。©Eiko Oizumi
LIVゴルフは、アジアンツアーにも巨額の投資を行ない、高額賞金の「インターナショナルシリーズ」を開催。アジアンツアー・コミッショナーのチョ・ミンタン氏(左)とノーマン。©Eiko Oizumi

4年間のLIVでの活動を終了したノーマン

2021年にLIVゴルフが発足。サウジ資金を背景にその翌年スタートした新ツアー「LIVゴルフ」の〝顔〟として活動してきたグレッグ・ノーマンが、9月に自身のSNSを通じて正式に退任することを発表した。
CEO兼コミッショナーだったノーマンは、プロゴルフ界にかつてないほどの多額の資金を引き入れ、敵対関係にあったPGAツアーの賞金増額にも大きな影響を与えた。
また、LIVゴルフ初期段階から、ダスティン・ジョンソン、ブライソン・デシャンボー、ブルックス・ケプカ、ジョン・ラームら数多くのトッププロを巨額契約で呼び込み、軌道に載せたことは大きな功績の一つである。
彼はPGAツアープレーヤーだった頃から、ゴルフのワールドツアー化を提唱していたが、LIV ゴルフを発足させるにあたり、アメリカだけでなく、アジアや豪州、中東の都市への進出も推し進めた。
日本では現在のところ実現していないが、LIVゴルフ・ジャパンの実現に向けてノーマン自ら来日し、JGTO側と会合を持ったこともあった。

だが一方で、任期中のノーマンは波紋も巻き起こした。
LIVゴルフの成長を誇示するような発言を繰り返し、PGAツアーをはじめ、R&Aや世界ゴルフランキングなど、数々の組織と対立。
ゴルフ界を分断し、選手やファンを二分する存在でもあったノーマンは、タイガー・ウッズやローリー・マキロイらからも、「ノーマンが辞めなければ、交渉は進まない」と言われたことがあった。
PGAツアーとの交渉・会合は、PIF(サウジ政府系ファンド)の最高責任者、ヤシール・アル・ルマイヤン氏が担当し、ノーマンは蚊帳の外だったが、今年CEO にスコット・オニール氏が就任。
ノーマンはCEOの座を退き、ついに正式に退任することを決めた。
以下は、彼のSNSで書き込まれた内容である。

「我々は世界的にゴルフというゲームを変える動きを築き上げた。ゴルフを真にグローバル化し、世界中のファンにその魅力を届けることができた。エンタメ、革新、そしてプライベートエクイティ(非上場企業の株式に投資すること)をゴルフに持ち込み、このスポーツを一つの資産として位置付けたのだ。達成したことを誇りに思うし、ゴルフ、選手、ファンのために正しいことをするという私の思いは、これまでもこれからも揺らぐことはない」

70歳のノーマンは今後については、具体的に語っていないが、まだ終わりではないことを示唆し、「楽しみな時が待っている」と結んだ。

2032年には、豪州ブリスベンで「オリンピック」が開催されることになっており、豪州の五輪ゴルフにも関与していると言われているノーマン。
彼の「ゴルフをグローバル化する」活動は、今後も続く。

LIVゴルフの影のボス、Y・A・ルマイヤン氏が米国でのインタビューで答えたこととは?

LIVゴルフの資金源「PIF(サウジ政府系ファンド)」の最高責任者、ヤシール・アル・ルマイヤン氏。サウジアラビア最大の石油会社「アラムコ」のCEOでもあり、サウジの経済を握る重要人物だ。©Eiko Oizumi
今年グレッグ・ノーマンに代わり、LIVゴルフのCEOに就任したスコット・オニール氏(左)。穏健な彼は、ノーマンよりもPGAツアーとの交渉をうまく進めるだろうと期待されている。©LIV GOLF

サウジ政府系ファンド(PIF)の最高責任者であり、LIVゴルフの立ち上げや運営に深く関わってきたサウジアラビアのヤシール・アル・ルマイヤン氏。
彼はPGAツアーとの交渉時に、LIVゴルフの代表として出席しているが、LIVゴルフの試合会場で記者会見を開くことはなく、公式の場で発言することもない、謎めいた存在である。

そんな彼が今夏、米国ワシントンDCで経済紙のインタビューに応えた。
これは、非常に珍しい出来事だ。
そこで彼は、LIVゴルフについて次のように語っている。

LIVはローマ数字で54を意味するが、その本質的な意味は別にあり、「完全性の追求」を示す。
「我々はゴルフを次のレベル、つまり54打に到達させたいのだ」
―― これはつまり、ゴルフを究極の領域に押し上げるという意味合いだ。
そしてLIVゴルフが目指しているのは、「ゴルフをノンゴルファーにも届けること。サッカーやテニス、F1のように、実際にプレーする人はほとんどいないが、世界中で何百万人もが観戦している。ゴルフもそうなってほしい」というのが狙いだという。

PIFとPGAツアーが手を組むのかどうかについては、明確な答えはなかったようだが、それが現状なのだろう。
ルマイヤン氏は「PGAツアー、DPワールドツアーと協力できる日を楽しみにしている。将来的にはゴルフを一つにまとめたいし、パイを大きくすることを目指している」と答えている。

サウジアラビアでは現在、「ビジョン2030」というムハンマド皇太子が掲げた経済改革計画に従い、「脱石油依存型国家」を目指している。
世界中の観光客に門戸を開き、サウジの文化、歴史、F1やパリダカ、サッカー、ゴルフなどのスポーツを通して観光客数を4000万人から1億人まで増やしたいという目論見がある。
LIVゴルフもその一端を担っているが、ゴルフへの投資額は、サウジ政府の全資金の中のほんの一部。
直接的な利益を生むものではないが、国際的な知名度向上という意味では大いに貢献していると言っていいだろう。

Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/LIV GOLF

関連する記事