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【世界のゴルフ通信】From Europe 「ライダーカップ」欧州チームが、次に進む道は?欧州チームの遺産と未来

ニューヨークで開催された「ライダーカップ」で優勝した、ルーク・ドナルド率いる欧州チーム。米国チームと比較すると、メンバー同士の一体感が、より感じられるのが欧州チームの特徴だ。©PGA of America

過去最高の評価を得ているルーク・ドナルド、3回目の欧州キャプテンの可能性は?

普段は物静かなルーク・ドナルド(左)が、キャプテンを務めることで、新たな一面を見せた。自身でも「自分は内向的な性格だが、キャプテンを務めるうちにその性格も変わってきた」と語っている。中央はシェーン・ローリー、右はローリー・マキロイ。©PGA of America
ドナルドの采配を支える、エドアルド・モリナリ(左)とフランチェスコ・モリナリ(右)。エドアルドは、データのアナリストとして大活躍。©Eiko Oizumi

ルーク・ドナルドが確立した勝利の方程式

歓喜の声が去り、ベスページのギャラリーから響いた恥ずべき罵声が歴史の暗がりへと消え去った今、ヨーロッパの「ライダーカップ」の英雄たちは静かに思索の時を迎えている。
ここからどこへ向かうのか、そしてその道を導くのに最もふさわしい人物は誰なのか。

もちろん、最初の問いに対する明白な答えはアデアマナーだ。
アイルランドが誇る、完璧に手入れされたコースは、まさにオーガスタナショナルに比肩する美しさを誇り(天候が許せば)、2年後にアメリカを迎えて戦う次の舞台として申し分のない環境を提供してくれるだろう。

だが、欧州チームの首脳陣が今、最も考えねばならないのは、彼らがこれから歩む道のりの方向性をどう定め、あの貴重な金のカップの防衛を成功させるか―その青写真を描くことだ。

言うまでもなく、ベスページ・ブラックでの劇的な15対13の勝利は、「ライダーカップ」の勢力図における歴史的な転換点となった。
13年ぶりのアウェー制覇を果たしただけでなく、ヨーロッパがプレッシャー下でも見せた冷静な鋼の意志と誇り高い自信―まさに新時代の幕開けを告げる勝利だった。

2023年ローマ大会での圧倒的勝利の流れを受けて、欧州チームは明確な目的意識のもとニューヨークに乗り込んだ。
その基盤は継続性、徹底した準備、そして控えめながら揺るぎない自信であった。
ルーク・ドナルドのリーダーシップで、「ライダーカップ」連覇を達成。
欧米両大陸で勝利を収めたヨーロッパのキャプテンは、1985年と87年のトニー・ジャクリン以来、史上2人目となった。

過去8大会中6勝という実績が示す通り、ヨーロッパはすでに勝利の方程式を確立している。
だが、悪名高いニューヨークの「熊の穴」のような観客の雰囲気は、選手たちの神経と気性を試すと予想された。
だからこそ、ドナルドにとって「継続性」がカギだった。
ベスページでは、12人中11人がローマ大会からの継続メンバー。
チームの結束と経験を重視したドナルドの哲学の表れであり、それが見事に奏功した。

欧州チームの次期キャプテンは誰だ?

だが、果たして毎回同じ顔ぶれで戦い続けることはできるのか?
今後の焦点は、この勢いを持続させつつ、慢心や停滞を避け、将来への発展をどう確保するかに移っている。

まず、最初の課題はキャプテン人事だ。
ドナルドの評価は、今や頂点にある。
その冷静沈着で緻密な采配は、伝説的と称され、宿敵キャプテンのキーガン・ブラッドリーですら「史上最高のヨーロッパ・キャプテン」と賛辞を贈ったほどだ。

当然のように、選手もファンも彼の続投を望んでいる。
だが、本人はどう思っているのか?

歴史的に見ても、キャプテンを3大会連続で務めた例はほとんどない。
負け知らずのまま有終の美を飾りたいという思いがあっても不思議ではない。
最も重要なのは、彼に「続投の選択権」を与えるべきかどうかという点だ。

ヨーロッパの成功の要因の一つは、副キャプテンが次期キャプテンへと昇格していく明確な道筋にある。
その流れを踏まえれば、すでに2大会連続でドナルドの右腕を務めたフランチェスコ・モリナリは、最有力候補といえるだろう。
また、ジャスティン・ローズの名前も挙がるかもしれない。
だが、今季の彼の好調ぶりとベスページでの素晴らしいパフォーマンスを見れば、2027年も選手としての出場を目指すことに集中する可能性が高い。

敵地でも勝てる欧州チームの継続性と、次世代のメンバーの育成

2027年大会が行なわれる、アイルランドのアデアマナー。「アイルランドオープン」や、「JPマクマナスプロアマ」などが開催されたこともある。©GettyImages
次回の「ライダーカップ」では、ルドビグ・オーバーグ(右)やラスムス・ホイガード(左)が中核となってくるだろう。©PGA of America

欧州メンバーの次世代を育てる

しかし、こうしたおなじみの顔ぶれが、いつまでもあの〝ファーストティーの魔窟〟に立ち続けることが、チームのためになるのだろうか?
2025年大会を前に導入された、大きな変更点の一つに、欧州予選プロセスの一本化がある。
単一のポイントリスト制が採用され、最も好調な選手が自然に上位に浮上し、キャプテンにも柔軟な選考権が与えられた。

「データによると、ルーキーはアウェーではなかなか結果を出せない」と、2014年大会優勝キャプテンで、現在は欧州チームの戦略アドバイザーを務めるポール・マギンリーは語る。

「初めてのライダーカップを敵地で戦うのは本当に難しい。だから経験が重要だった。経験を重視しつつ、DPワールドツアーを尊重し、そこからの選手にもチャンスを与える基準を設ける必要があった。エドアルド・モリナリ(ドナルドの参謀の一人)は見事な仕事をしてくれたよ。このポイントシステムによって、12人中11人が前回大会からの継続メンバーになり、そのうち2人はDPワールドツアー経由で出場権を得たんだ」

この先見性は完璧に機能したが、では次の一手として新しい血をどう取り込むべきか。
ヨーロッパの次世代を育てることは喫緊の課題である。
ローリー・マキロイ、ジョン・ラーム、ビクトル・ホブランといった主力はまだ全盛期にあるが、ニコライ・ホイガードやルドビグ・オーバーグといった若手が次の柱となる。
課題は、チームの結束を崩さずに世代交代を進めることだ。
経験と若さのバランス、そしていつ過去の英雄たちを送り出すか―この見極めこそがカギになる。

過去の栄光ではなく、将来への引き継ぎ

2016年、ダレン・クラークがベテラン頼みの布陣で挑み、惨敗した苦い教訓を忘れてはならない。
もちろん、今最も大きな課題を抱えているのはヨーロッパではなくアメリカだ。
2大会連続の敗戦を受け、リベンジに燃えて戻ってくるに違いない。
ヨーロッパにとって重要なのは、その先を読み、変化を先取りし、入念に備えること。
ベスページでの勝利は、単なる勝利ではなかった―それは「宣言」だった。
ヨーロッパは今や、胸を張って言える。どんな敵地でも勝てる、と。

2027年への道が始まった今、一つだけはっきりしている。
これは「黄金世代が栄光にすがる物語」ではなく、「未来へと受け継がれる、生きたプロジェクト」なのだ。

Text/Euan McLean

ユアン・マクリーン(スコットランド)

スコットランド・グラスゴー在住のスポーツライター。『サンデーメール』などに寄稿。欧州ツアーなど過去20年にわたり取材。

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