

バルセロナ近郊のカミラルリゾートが舞台
2011年、スペインは男子・女子・シニアを合わせて17試合もの国際大会を開催し、ゴルフ史上最も華やかな一年を迎えた。
しかし、2012年の金融危機によって、一時は「トーナメント開催国」として隆盛を極めたスペインのゴルフ界は急速に低迷。
その後は長らく不況に苦しんできたが、今ようやく復調の兆しが見え始めている。
2031年にスペインで再び開催される「ライダーカップ」は、英国以外で2度目の開催となる史上初のケースであるだけでなく、かつてゴルフ強国だったスペインにおける国際大会復興の起爆剤として注目されている。
「ライダーカップ」が初めてスペインにやって来たのは、1997年。
開催地はバルデラマで、キャプテンはセベ・バレステロス。
チームにはホセ・マリア・オラサバル、イグナシオ・ガリードらスペイン勢が名を連ねた(フエルバ出身のミゲル・アンヘル・マルティンも本来なら出場資格を得ていたが、手首の故障をめぐる理由からセベがメンバーに入れず、結果的にチーム写真にのみ参加した)。
副キャプテンにはミゲル・アンヘル・ヒメネスも加わっていた。
この1997年の開催は、スペインゴルフ界の大きな転換点となり、国内では大会数が一気に増加。
スポンサーも相次いで参入し、またリゾート住宅と一体化したゴルフコースの建設が爆発的に進んだ(むしろ「住宅販売のための口実としてゴルフコースを造った」と言った方が正確かもしれない)。
その結果、2011年には実に17試合もの国際大会が開催されたのだ。
欧州ツアーでは、セルヒオ・ガルシアがバルデラマと故郷・カステヨンで2勝を挙げ、さらにダレン・クラーク、ポール・ローリーといった「全英オープン」覇者たちもそれぞれ、スペインのマヨルカ、マラガで優勝。
イアン・ポールターもフィンカ・コルテシンでタイトルを手にした。
彼は翌2012年「ライダーカップ」のヒーローとなる。
国内サーキットのプジョーツアーではアルバロ・キロスやハビエル・コロモらが活躍し、シニアではカール・メイソンがムルシアで優勝を飾った。
女子ツアーでも、マラガでの優勝はメリッサ・リード。
そして若き日のカルロタ・シガンダがムルシアのLET(欧州女子ツアー)アクセスシリーズで勝利を挙げた。
今やスペイン女子ゴルフの象徴となった彼女の原点は、そこにあった。
こうして国中で17大会が行なわれたのは、1997年のバルデラマでの「ライダーカップ」の影響に加え、当時400超に増えたゴルフ場の勢いによるもので、計画中のコースを含めれば600に達するとも言われた。
一時途絶えたプロゴルフ大会の開催が再び増えつつあるスペインゴルフ


ゴルフは富裕層の贅沢とみなされ、支援打ち切り
しかし、その後2つの要因が重なって状況は暗転する。
一つは経済的理由。
2008年のリーマン危機が欧州を直撃し、2011年には不動産バブル崩壊によってスペイン経済は再び不況に陥った。
リゾート開発や別荘販売を目的にしたスポンサー(高級物件を外国人観光客に売るためにゴルフ大会を利用していた)が撤退し、多くのプロジェクトが中止・倒産・破綻へと追い込まれた。
もう一つは政治的要因。
選挙で左派政党が勝利し、「共産主義的思想」を掲げる政治家たちが政権を握ると、ゴルフは「富裕層の贅沢」とみなされ、観光促進として行なわれていた公的資金の支援が打ち切られた。
特にアンダルシア州ではその影響が大きかったと言われている。
その結果、スポンサーが激減し、17試合あった国際大会が、翌年には片手で数えられるほどに減少した。
プロゴルフが復活しつつあるスペイン
さらにDPワールドツアー(旧欧州ツアー)とスペインゴルフ連盟の関係も悪化。
マドリードが最有力だった2023年「ライダーカップ」開催地をイタリアに奪われたことが決定打となり、当時の同ツアーのCEO、キース・ペリー氏に対してスペイン側が不満を爆発させた結果、欧州ツアー開催が途絶える時期もあった。
しかし、今ようやく再び歩みが進み始めている。
2025年には年間を通して17のプロゴルフトーナメントを開催、もしくは開催予定だ。
アルプスツアー4試合、LET・アクセスシリーズ3試合、レジェンズツアー3試合、LET2試合、DPワールドツアー1試合、チャレンジツアー3試合、そして障がい者ゴルフ大会1試合―合計17大会である。
確かに多くは下部ツアーだが、DPワールドツアー自体が現在PGAツアーとLIVゴルフの狭間で迷走しており、ツアー全体の危機という背景もある。
一方、スペインは過去の過ちを繰り返さぬよう、一歩ずつ着実に再生への道を歩んでいる。
2031年、カタルーニャでの「ライダーカップ」開催が、再びスペインゴルフ界に大きな追い風をもたらすことを願ってやまない。
Text/Isabel Trillo Amores

イサベル・トリロ・アモーレス(スペイン)
PGA・オブ・スペインのコミュニケーションディレクター。80年代後半からゴルフ取材を始め、その数は世界250試合以上。ゴルフのラジオ番組も手がける。




