北アイルランド出身の4人のメジャーチャンピオンが生まれ育った、ちょっと複雑だけどおもしろいタイタニックと壁画の町「ベルファスト」
北アイルランドの首都ベルファストは、タイタニックの造船で知られる港町。
また、世界中の政治・宗教対立に対してのメッセージを壁画に描いたものが街の中で見られる興味深い場所でもある。
有名なアイリッシュパブなどもあり、街を散策してみるのも楽しい。
北アイルランドのメジャーチャンピオンたちが慣れ親しんだ街をご紹介しよう。
ローリー・マキロイ
ダレン・クラーク
グレアム・マクドウェル
小さい漁村から造船、観光の街へ
マキロイたちのバックグラウンド
ノース海峡のベルファスト湾周辺に栄えたベルファストは北アイルランドの玄関口。
イギリスの一部ながら、アイルランドのアイデンティティも持ち合わせるという、イギリスとアイルランドの両方が入り混じった独特な文化が発展している街だ。
ベルファストで最も有名なのは、20世紀初頭に建造され、ニューヨークへ向かう途中に氷山に衝突し沈没してしまったタイタニック号の造船所だろう。
タイタニック沈没100周年の2012年にはタイタニック博物館が建てられ、多くの観光客が訪れている。
またその目の前にはタイタニックホテルがあり、食事やお茶が楽しめるレストランも完備
まるで船内にいるかのようなインテリアが素敵だ。ベルファストに来たら1度は泊まってみたいホテルである。
また、北アイルランドの地で民族間の紛争があったことが感じられる「ピース・ウォール」もベルファストで訪れたい場所の一つ。
カトリック系住民とプロテスタント系住民の居住地を分けるための壁で、この壁を隔てて激しい紛争が繰り広げられた。
今もなお夜になるとゲートが封鎖するというエリア。
ダレン・クラークも爆弾テロに巻き込まれそうになったことがあったと語るが、北アイルランドの人々にとっては消えることのない悲しい歴史である。
インターナショナル・ウォールの壁画の数々もまた必見。ここは北アイルランドに限らず、世界の政治や宗教、環境問題を題材にメッセージが描かれている。
ローリー・マキロイ、グレアム・マクドウェル、そしてダレン・クラークが生まれ育った街であり、少なからずこの街の影響を受けている3人。
街を散策しながら彼らの歴史的背景も想像すると、彼らのゴルフの新しい一面やメンタリティを垣間見ることができるかもしれない。
イギリスのユニオンジャックとアルスターバナー(北アイルランドの旗)が掲げられているエリアは、連合への支持や北アイルランドへの忠誠を示すエリア。昔はこのエリアにアイルランド人が入ることは危険とされていた。
ベルファスト・シティホール
市庁舎で、館内の見学は無料で可能。館内ツアーも実施されている。市民の憩いの場所。
クラウン
ベルファストで最も有名なパブ。伝統文化財として保護指定を受けている。午前10時から真夜中まで営業。タイルのモザイク画の数々は一見の価値あり。
ジョージ・ベスト像
スポーツ用品店の玄関先に設置されている像は、北アイルランドのサッカーのレジェンド、ジョージ・ベストのもの。空港名にもなっている。
世界で最も有名な豪華客船はベルファストで造られた
マキロイの生家のご近所
タイタニック号の造船所
タイタニック号の母港はリバプールだが、造船が行なわれたのは北アイルランドのベルファスト。実は全英オープン開催地はタイタニックにゆかりの深い地であることが多い。その造船された跡地が今もなおそのまま残っており、博物館も建てられている。博物館では沈没までの経緯や沈没後に海底に沈んでいる遺物なども紹介されており、非常に興味深い。
タイタニック博物館
近代的なシルバーの建物がひときわ目を引く博物館。目の前には
タイタニックの大きさがわかる造船跡地を見学することができる。
博物館の横にはタイタニックホテルがある。ガラス張りで陽光が差し込む明るい館内には、まるで船の内部のようなインテリアのレストラン&バーもある。
「ジャック&ローズ」というカクテルは、映画『タイタニック』で主演を演じたレオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの役名にちなんでつけられている。
タイタニックの模型も飾られている。
1700年代よりベルファストの造船産業の発展に大きく貢献してきたのが、イギリスの重工業メーカーの「H&W(ハーランド&ウルフ)」。今も造船業を営んでいる。
ハンガーストライキで死亡したB・サンズの壁画は必見!
複雑なお家事情と政治的壁画
ハンガーストライキで死亡したボビー・サンズの壁画。ひときわ大きくカラフル。
ベルファストの街には至る所に壁画がある。
文化や歴史、政治、宗教上の紛争などあらゆるテーマについて、芸術性の高い壁画が描かれ、街ゆく人へメッセージを送っているのだ。
中でも有名なのはIRA(北アイルランドをイギリスから分離させ、全アイルランドを統一させる目的を持つアイルランド共和軍)のヒーロー、ボビー・サンズの壁画だ。
1981年、刑務所に囚われていた彼はハンガーストライキを起こし、66日目に27歳で死亡。
壁画には「共和主義者であってもなくても、誰でも自分だけの特別な役割がある」と書かれている。
「サウジアラビアに武器を供給するのはやめろ!」と書かれた政治的な壁画。
シアトルから来たというアメリカ人男性。「何か僕にもできることがあれば、と思ってね」。きれいな空色のペンキを塗りながら平和を祈っていた。