昨年10月に50歳を迎え、シニア入りしたISPSアンバサダー、アーニー・エルス。
3日間60台の好スコアを連発し、チャンピオンズツアー(米シニアツアー)3試合目にして初優勝をつかんだ。
じつに7年ぶりの71勝目の栄冠となった。
アーニー・エルス(南アフリカ)
1969年10月17日生まれ。
全米オープン、全英オープンでメジャー4勝。米ツアー19勝、世界で71勝。世界ゴルフ殿堂入り選手。リズル夫人と自閉症患者のためのチャリティ活動も行なっている。2019年プレジデンツカップ・キャプテン。
シニアルーキー1年目、再び自信を取り戻した
50歳を迎え、今年から米チャンピオンズツアーに参戦し始めたISPSアンバサダーのアーニー・エルスが、ホーグクラシックで参戦3試合目にして早くもシニア初Vを飾った。
2012年に全英オープンで優勝し、翌年13年には欧州ツアー・BMWインターナショナルオープンで優勝。今回はそれ以来7年目の復活Vとなる。
「初優勝を飾ることができてよかった。ハワイでプレーオフになって、それ以来優勝は近いと感じていた。今回は負けたくなかったので、優勝したかったんだ」
1月にハワイで行なわれた三菱電機選手権アット・フアラライでシニアツアー初デビューを飾ったエルスは、デビュー早々ミゲル・アンヘル・ヒメネス、フレッド・カプルスと3人のプレーオフに突入。
1ホール目でカプルスが脱落し、2ホール目でバーディを奪ったヒメネスの勝利に終わったが、しばらく優勝争いに食い込むことがなかったエルスにとって、大きな自信となったに違いない。
昨年まではレギュラーツアー18試合に出場し、予選通過は9試合。4月のRBCヘリテージ以降は予選落ちと棄権が続いていた。
過去世界で70勝を挙げた世界ゴルフ殿堂入り選手のエルスも、シニアツアーではルーキー。
他の選手たちは毎年同じコースでプレーしているのでコース攻略法も熟知しているが、一方エルスは優勝経験が豊富とはいえ、どのコースも初めてプレーするところばかり。
ホーグクラシック前週のコロガードクラシックではプロアマ1日しかラウンドせずに試合に臨んだため、十分な準備ができなかった(成績は34位タイ)。
そこで彼は同じ過ちを犯したくないと、今大会には火曜日に入り、2日間の練習とプロアマ1日のラウンドをこなして試合に臨んだ。
「シニアツアーの選手たちは、とても強くて本当にびっくり。だから自分も優勝するには最高の状態で臨まないといけない」
ポアナ芝のグリーンには多少手こずったようだが、体調もスイングの調子も良かったというエルス。
昨年末のプレジデンツカップでは世界選抜のキャプテンを務め、選手たちに「常に高いレベルでプレーしろ」と言い続けたが、今回は自分自身にその言葉を言い聞かせてプレーした結果、シニア初優勝を手繰り寄せることができた。
昨年のISPSイベント参加のため、来日した彼は「シニアツアーは今まで頑張ってきたごほうびのようなもの。昔からの友人たちと楽しくやりたい」と語っていた。
かつてはタイガー・ウッズらとともに最強の4人の一人だったエルス。
これをきっかけに再び強い姿を見せて欲しいものである。
Hoag Classic
2020年3月6日〜8日
ニューポートビーチCC(米国・カリフォルニア州)
最終成績
① | アーニー・エルス | −16 |
② | グレン・デイ | −14 |
フレッド・カプルス | ||
ロバート・カールソン | ||
⑤ | スコット・マッキャロン | −13 |
⑥ | ジェイ・ハース | −12 |
⑦ | ケビン・サザーランド | −11 |
デビッド・モーランドⅣ | ||
⑨ | スコット・ダンラップ | −10 |
⑩ | ケン・デューク | −9 |
デビッド・マッケンジー | ||
スティーブ・フレッシュ |
「プレジデンツカップのキャプテンは1回で十分」アーニー・エルス
昨年12月にロイヤル・メルボルンGC(豪州)で開催されたプレジデンツカップでは、世界選抜チームのキャプテンを務めたアーニー・エルス。
残念ながら2ポイント差で敗北を喫したが、1月に入り「もうキャプテンはやらない」と辞退を宣言。
PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハンはエルスに再考を促したが決意は変わらなかった。
過去13回開催されているが、世界選抜が優勝したのは98年、丸山茂樹が5戦5勝を挙げたロイヤル・メルボルンでの大会のみ。
あれから21年、優勝に飢えた世界選抜はエルスを主将に据え、今度こそ優勝しようと選手たちのデータをもとに緻密な戦略を立てて臨んだものの、最終日のシングルス戦で大敗。
米国選抜16ポイント、世界選抜14ポイントでまたしても米国に優勝を奪われてしまった。
初出場の若手が多かった今回のチームを、全身全霊を尽くして正しい方向に導いたかに見えたエルス。だが、敗北の夜にはすでにキャプテン辞退を選手たちに伝えていた。
「全力を尽くしたが、うまくいかなかった。最終日にタイガーとエイブラハム(アンサー)をぶつけたのは私のミスだ」と語っている。
だがエルスは、選手たちの心に勝つための大事な心構えを植え付けた。〝プレッシャーの中でも最高のプレーができる〟ということを……。
このエルスの教えは、今年に入ってキャメロン・スミス、マーク・リーシュマン、アダム・スコットらの優勝に生かされている。
2021年のプレジデンツカップは米国のクエール・ホローで開催が予定されているが、4月上旬に2008年マスターズチャンピオンのトレバー・イメルマン(南ア)がキャプテンに就任した。
エルスは敗北した日曜日の夜、選手たちに「もうキャプテンはやらない」と語っていたという。
エルスキャプテンの右腕となって補佐したトレバー・イメルマン(写真右)が、次回のプレジデンツカップ キャプテンに選ばれた。
Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images