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最後のオリンピックで念願の金メダルを獲得した
リディア・コー。LPGAツアーの殿堂入りプレーヤーに

Text/Eiko Oizumi
Photo/IGF

今回のオリンピックで3回目の出場を果たしたリディア・コーが、金メダルを獲得した。

 「パリオリンピック・女子ゴルフ」が終了し、ニュージーランドのリディア・コーが金メダルを獲得。エスター・ヘンゼライト(ドイツ)が銀メダル、リン・シユー(中国)が銅メダルを獲得した。コーは「リオオリンピック」、「東京オリンピック」に続き、3回目のオリンピック出場を果たし、銀メダル、銅メダルを獲得。今大会で金メダルを獲得したことで、金・銀・銅全てのメダルを獲得したことになり、男女ゴルフ初の「メダルスラム」を達成。また、LPGAツアー20勝、メジャー2勝のコーは、今大会での優勝により、ツアーのゴルフ殿堂入りも果たした。

「こうして金メダルを獲得することで、殿堂入りを果たすことができ、本当に素晴らしい。実際に起こるまでは現実味がないんだけど、これをずっと目指してきたから。これまでの人生で最も重要な18ホールになるだろうとはわかっていた。これで最後のオリンピックになるかもしれない、と週の初めに言ったが、皆さんに宣言します。これが私の最後のオリンピックだ、と」

 LPGAツアーのゴルフ殿堂は、世界ゴルフ殿堂とは異なり、投票で決まるのではなく、自身の勝利数で達成されるもの。1勝ごとに1ポイントが加算され、メジャーの場合は2ポイント加算されるが、年間を通じた個々の賞も加算される。27ポイントで殿堂入りは決まるが、オリンピック前の段階でコーは26ポイントと、殿堂入りを果たすためにはあと1ポイント足りなかったのだ。

 2022年には数々の優勝を重ねて25ポイント目を獲得し、世界ランク1位に返り咲いていたものの、2023年はキャリア最悪のシーズンに。「あと2勝で殿堂入りできる」ということが大きなプレッシャーとなり、3月からの半年間で4回の予選落ち。トップ30に入ることもできなかった。2024年の初戦で優勝し、26ポイント目を獲得したコーは、その1週間後の試合で27ポイント目を達成しかけたが、プレーオフでネリー・コルダに敗退。LPGAツアーは27本の白いバラの花束を用意して、グリーンサイドでコーの優勝を待ち受けていたが、この週には殿堂入りは達成できなかった。その後も出場する試合ごとに、殿堂入りの話を尋ねられ、その上、30歳での引退を常に話してきた彼女にとって、締め切りが迫っているようにも感じられ、精神的に彼女は追い詰められていた。そんな時、母と夫のジュン・チョン氏に「もし実現しなくても大丈夫だ。殿堂入りしなくても、あなたはすごいキャリアを持っているんだから、それで十分だ」と言われ、救われたのだという。

「オリンピックでゴルフ殿堂入りを実現したのは、本当に信じられないこと。まるで物語の神話的なキャラクターのような気分だわ。これ以上のことは想像できない。これまでのキャリアで感謝すべきことはたくさんあったけど、今回の金メダルはそれを上回るもの。これ以上望むこともない」

 3日目を終えて、2位と2打差の単独首位で迎えた最終日。若い頃なら「みんなが私を追いかけてくる」とプレッシャーを感じていたが、今回は「2打のアドバンテージがある」と考え、自分のプレーに集中できたのだという。自分のゲームプランを守り、ティーショットで攻め続けることができたと胸を張るが、これこそがコーチと一緒に苦労しながら取り組んできたことだった。

「忍耐強く、ゲームプランに従っていた。そして18番ホールのティーショットと2打目は、私の人生でもおそらく最も重要なショットの2つだったと思う。その位置にレイアップできれば、最悪でもパーで終わることができるから。最後のパットまで集中し続けゴルフ人生でいろいろなことが起こったけど、『これで終わった』と言いたかったの」

 過去獲得したメダルは、銅メダルは韓国の妹のアパートに、銀メダルはアメリカの父のクローゼットの中に保管されているのだという。大会前にコーは、金メダルを獲った場合のことを問われ、

「もし金メダルを手に入れたら、他のメダルも返してもらって、それらをどのように飾るか、考えるわ。今は保管するいい場所がなく、オーランドのトロフィールームはゴルフネットやトレーニング用具が置かれており、ゴチャゴチャしているので、新しい家を買うか、ちゃんとそれらをたたえる場所を作る必要があるかもしれない」

と語っていた。実際に金メダルを手にした彼女が、メダルの保管場所をどのようにするかも興味深いところだ。

 もうこれで殿堂入りすることについて質問を受けることもなければ、メダルスラムについて聞かれることもない。引退もさほど遠い話ではないことを示唆する発言もしているリディア・コーだが、具体的に引退する日を考えているわけではないという。

「今はただこの瞬間を楽しみたい。ゴルフは多くのことを私に与えてくれたし、私のキャリアの終わりが近づいていることは確かだけど、今はその時を大切にしながら、競技に臨んでいる間はベストを尽くしたい。この金メダルで、少し肩の荷がおりた気がするけど、ここ数ヶ月で大きな進歩を遂げてきたので、シーズン最後のメジャー(全英女子オープン)とこのシーズンをどのように締め括れるかが楽しみ。それが終わったら、今後のことを考えるつもり」と語った。

 まだまだ引退には早すぎると思われるが、アマチュア時代から「カナディアンオープン」など、プロの試合にも数々と優勝してきた天才少女も、今では27歳。30歳で引退ということであれば、あと3年しかないが、彼女は最終章をどのように描こうとしているのか、非常に興味深い。

ニュージーランド国歌を聴きながら、涙を流すリディア・コー。
最終日は、ニュージーランドらしく、オールブラックのウエアで身を纏ったコー。

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