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「今まで閉じ込めてきた、本当の自分を見せたい!」 デシャンボーがLIVゴルフ入りして学んだことと、今後のゴルフ界に必要なもの

もともと「ちょっと気まぐれな一面もある、一風変わったプロゴルファー」という印象のデシャンボーが、「全米オープン」ではフレンドリーな「国民のゴルファー」へと、大きなイメージの変化を遂げた。
その変貌ぶりを、彼の言動や振る舞いを通じてレポート。

優勝後の記者会見で、「自分の優勝によって、ゴルフというゲームの分裂を埋められれば……」と語った。©Eiko Oizumi
優勝争いの最中でも、ギャラリーに向かって拳を見せ、応援に応えていた。©Eiko Oizumi
観戦していた障害者に、最終日のラウンド中でも立ち止まり、サインをしていたデシャンボー。©Eiko Oizumi

2016年にプロ入りし、PGAツアーに在籍していた頃は、毎年のようにツアー優勝を遂げていた。
世界ランクでも常にトップ10をキープし、独自のスイング理論やクラブ理論を展開する、ちょっと変わった世界のトッププレーヤーだった。

だが、2022年にLIVゴルフに移籍したデシャンボーは、他のLIVゴルファーたちと同様、ゴルフファンやゴルフ界から批判を大いに浴びた。
それまでPGAツアーに忠誠を誓い、LIVを批判していながら、急にLIV入りを図っただけに、ファンたちからのバッシングも相当なものだったに違いない。
そういう精神的にも辛い時期を過ごしたこともあってか、LIV入り後の彼はファンを大事にするようになった。
そして私のようなメディアに対しても、いつもフレンドリーに接してくれるようになった。
練習ラウンドの合間でも、取材に応じてくれるようになり、「最近もPGAツアーの取材に行ってるの?」などと声をかけ、たわいもない会話ができるようになったのだ。
以前の彼なら、自分の練習に集中し、時には非常にピリピリしたムードを醸し出していたものである。

そして今、彼は1人でも多くゴルフファンを増やしたい一心で(自分のため、というわけではなく、一般的にゴルフを成長させるため)、試合中でもフレンドリーにファンたちに接するようになった。
アイコンタクトを取り、サムアップするフィル・ミケルソンのように、ファンたちのリアクションを楽しみながら、それに反応するようになったのだ。
となれば、もともとデシャンボーのファンではなかったとしても、自分の声援に応えてくれれば、ファンになってしまうのが人情。
時には「ライダーカップ」のように、自分に対するファンの応援を煽るような仕草が今回の「全米オープン」では見られたが、「ファンを味方につけ、ファンからのパワーを自分のパワーに変えて、戦っていた仕草や反応は、演技や芝居だといっている人がいるが、どう思うか?」の問いに、「いや、それは僕の情熱だ。タイガーは僕のアイドルであり、今もヒーローだが、彼やペイン(スチュワート)のゴルフ場での反応と同じなんだ。世代を超えて、たくさんの人たちが、最高の反応を見せてくれた。僕の視点からすれば、これは僕が情熱的なだけ。ここでのプレーに全力を尽くし、ファンに長い間閉じ込められていた自分の一面を見せたい、と思っているだけなんだ」と答えた。

そして、父の死をきっかけに人間として多くの成長を遂げた、と自身語っている。
具体的にどういうことなのかを、大会優勝後に次のように語っている。

 「まず、人々の意見を尊重し、理解することを学んだ。2022年にはさまざまな理由で非常に厳しい批判を受けたが、周りに素晴らしい友人や人々がいて、頑張るように言ってくれた。自分は当時、スイングが不調で、ボールストライキングもひどく、パッティングもよくなかったが、クラッシャーズ(LIVゴルフの彼のチーム)のポール·ケーシー、アニルバン·ラヒリ、チャールズ·ハウエルⅢが僕を正しい方向に導いてくれた。これは実際、心構えを改善する上で、大きな助けになったよ」

「『君は大丈夫だ。心配するな。これからも素晴らしい人生が待ってる』と言ってくれた人もいた。僕はゴルフ以外にもたくさんの大事なことがあることに気づいたんだ。そして自分を第一に尊重し、大切にすることが、他人を尊重するための重要なステップであることも学んだ。僕は完璧な人間ではないし、誰もが完璧ではない。絶不調の時期に、新しい心構えを確立することができたんだ」

そして彼はさらに、現在のPGAツアーとLIVゴルフの分断についても触れた。

「(自分の優勝や人気によって)物事を迅速に解決できることを願っており、このゴルフというゲームの分裂を埋めることができればと思っている。ファンに素晴らしいエンタメを提供し、ゴルフのために最善を尽くすこと、国内外でゴルフを成長させることが僕の使命。過去に何があったとしても、素晴らしいゴルフというゲームを、再び元の場所に戻せれば」と語った。

Text & Photo/Eiko Oizumi

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