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【世界のゴルフ通信】From Europe ゴルフの生地の伝統と革新!R&Aの建物に女性ロッカールーム誕生

クラブハウス内のロッカールーム。女性用ロッカールームも新設された。©R&A
クラブハウスのフロントデスク。©R&A
クラブハウス内のトロフィールーム。ソファーもあり、ゴルフ仲間とゆっくりくつろげる。©R&A

R&Aが100年ぶりにクラブハウスを大改造

欧州ゴルフ界ではトップの座に新しい顔ぶれが登場し、ゴルフシーズンが本格的な夏に突入する中、新たな装いを見せる伝統もある。

セントアンドリュースでは、ロイヤル・アンド・エンシェント(以下R&A)の歴史的な建物の内部が改装され、象徴的な古い建物が、未来にふさわしい現代的な施設にアップグレードされた。
この改修は100年ぶりの大規模な事業で、最後に大きな改築が行なわれたのは1924年のこと。
今回の工事には女性用の施設(ロッカールームスペース)の新設、拡張が含まれている。
クラブハウスの歴史的な建築計画を展示する新しいヘリテージラウンジ、新しいメンバーズショップ、改装されたトロフィールームは、伝統を損なうことなく現代的な外観を持たせている。
この新しいデザインの公開に際し、特に満足していたのは、今年後半に退任する予定の最高経営責任者マーティン・スランバーズ氏だ。

「この特別な性格と外観を保ちながら、これらの改良を行なえたことを嬉しく思う」と、スランバーズ氏は述べた。

「全てのメンバーは、セントアンドリュースを訪れ、ゴルフを楽しむ際に、改良された施設を利用することができ、その体験が豊かになることだろう。特に、毎年春と秋に開催するメンバーズミーティングに参加するメンバーの増加に対応できるようになっただけでなく、ここで行なわれるプロおよびアマチュアの大会の要件も満たすこともできるようになった」

R&Aの最高責任者も大満足の100年ぶりの改修

100年ぶりの改修工事を行なったR&A。施設が拡張されたことで、春、秋にプレーするメンバーの人数の増加に対応できるようになった。
セントアンドリュース・オールドコースに聳えるR&Aの建物は、メンバーのクラブハウスになっている他、ゴルフ団体のミーティングなども行なわれている。©GettyImages

チャールズ国王がR&Aのパトロンに就任

2010年、ケルティックマナーリゾートで行なわれた「ライダーカップ」を訪れた、チャールズ国王(中央・当時は皇太子)。©GettyImages
皇太子だった頃に「ライダーカップ」会場を訪れ、パッティングをする英チャールズ現国王。©GettyImages

リニューアルされたR&Aの施設は、国王が訪れるかもしれないことを考えると、好都合だったかもしれない。

5月に発表されたところによると、チャールズ国王がR&Aのパトロンシップを承諾したことが確認された。
1834年のウィリアム4世以来、彼の母親(故エリザベス女王)や他の全ての歴代国王が務めてきた名誉職だ。
スランバーズ氏はさらに「亡きエリザベス女王の70年間にわたるクラブのパトロンシップは、メンバーにとって計り知れないほど誇り高いものだった。バッキンガム宮殿から、国王陛下がパトロンシップを受け入れたとの連絡を頂き、大変光栄に思う」と語った。

ゴルフ界を統一するために…
欧州ツアー新CEOの思惑

「ゴルフのゆりかご(ゴルフの聖地・セントアンドリュース)」が、伝統と革新の完璧な組み合わせで運営され続ける一方で、プロゴルフ界全体では革新的な変化が現状を揺るがし続けている。
そしてヨーロッパでは、その新たなゴルフの夜明けにおいてヨーロッパの立場を形作る役割を担う男が、楽観的な姿勢と平和のメッセージを持って職務に就いている。
4月にガイ・キニングス氏がDPワールドツアーの最高経営責任者、および国際ゴルフ連盟の会長として前任のキース・ペリー氏の後を継いで以来、彼はプロゴルフ界の対立する勢力の統轄と協力を説く平和維持の役割を担っている。

PGAツアーとサウジアラビアの公共投資基金(PIF)との提携に関する衝撃的な発表から1年が経ったが、いまだに合意に達する兆しはなく、分断されたプロゴルフ界は依然として宙ぶらりんのままだ。

むしろこの合意は、PGAツアーを離れてサウジ資本のLIVゴルフに参加する選手が増えた最高潮の時よりも、さらに遠ざかっているように見える。
現在、複数の新しい投資会社がPGAの立場を強化しているからだ。

この混乱の渦中にいるのがキニングス氏で、彼はゴルフの将来に向けた永続的な統一を実現できる和平協定の仲介を手助けしたい、と熱望している。

「私の〝受信トレイ〟にはたくさんのものが入っているが、まず最初に整理しなければならないトピックが1つある。それが解決すれば、他の全てがそこから流れていくでしょう」とキニングス氏は語る。

「皮肉なことに、ゴルフは参加率や関心度といった多くの指標において、非常に健全な状態にあるが、解決策が得られ、プロゴルフの将来がどのようになるかがわかるまでは、他のことは全て待たなければならない。」

「私が望むのは、PGAツアーエンタープライズ、フェンウェイ・スポーツグループ、ストラテジック・スポーツグループ(SSG)、DPワールドツアー、サウジ公共投資基金(PIF)など、適切な人材をテーブルにつかせることだ。そして、未来がどうなるかを話し合う必要がある」

「しかし、適切な人々を、適切な意図を持って、適切な部屋に配置するまでは、決して合意に達することはできない。それが今、必要とされていることだ。これはどのビジネスでも同じことだが、取引が完了するまではその場を離れないで欲しい」

そのために、キニングス氏はLIVゴルフリーグの財務担当者であり、PIFの会長兼総裁であるヤシール・アル・ルマイヤン氏との取引に勇気づけられたと主張している。

「彼が現在起こっている力関係を検討していることは間違いない。しかし、私が聞いた全ての話は、彼は長期的な解決策を見つけたいと考えているということだけだ。彼がゴルフというゲームの利益を信じているなら、長期的にはゴルフ界の分裂は良くないことを知っているだろう。ヤシールはゴルフにダメージを与えたいとは思っていないし、ゴルフが大好きだ」

具体的にどのような取引が必要かについては、キニングス氏は今年初めにローリー・マキロイが提案した「真の国際的」モデルを支持している。
例えば、PGAツアーとDPワールドツアーが新たに創設された世界的なサーキットに選手を「供給」する形で、20試合から成る「ワールドツアー」を構成する、というものだ。

「それは非常に理にかなっていると思う」とキニングス氏は付け加えた。

「ファンが本当に見たいものは何か?それは、最高の選手たちがより頻繁に競い合う姿だ。だから、このモデルには魅力がある。しかし、これは全体の一部に過ぎない。解決策を見つけるためには、チームゴルフを何らかの形で統合することを検討する必要がある。そうすれば、LIVが行なったことを満足させると同時に、私たち全員がチームゴルフが大好きであることも認識してもらえるだろう」

既存のルールに従うなら、
LIVゴルファーでも「ライダーカップ」に出場可能

今年の4月からDPワールドツアーCEOとなった、ガイ・キニングス氏。©Eiko Oizumi

キニングス氏はすでに、来秋にベスページで開催される次回の「ライダーカップ」での、ジョン・ラームなどのLIVのスター選手の参加について、話している。

マキロイは、ラームが12月にサウジ支援のLIVに移籍したとき、彼をチームに残すために欧州ツアーのルールを書き換える必要があると考えた。
しかし、キニングス氏は、ラームや他のLIVゴルファーを選考枠に留めておく構造はすでに出来ているため、その必要はないと主張している。

「少し誤解があったと思う。現在のシステムでは、選手がヨーロッパ人で、DPワールドツアーのメンバーであり、既存のルールを守っていれば、出場資格がある」

そのルールとは、ラームやティレル・ハットンのようなDPワールドツアーメンバーが、ツアーからの許可がないままLIVイベントに出場した場合、罰金を支払い、出場停止処分を受ける必要があるというものだ。

「ジョン・ラームがライダーカップから除外されたと考えるのは間違いだ。人々はすぐにルールを変える必要があると思ったが、実際にはそうではない。ジョンが既存の手続きに従うなら、2025年の『ライダーカップ』出場資格はある」

Photo/Getty Images、R&A

Text/Euan McLean

ユアン・マクリーン(スコットランド)

スコットランド・グラスゴー在住のスポーツライター。『サンデーメール』などに寄稿。欧州ツアーなど過去20年にわたり取材。

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