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【DPワールドツアー】ローリー・マキロイ、バレステロスと並ぶ欧州ゴルフの偉業を達成

DP World Tour Championship
2024年11月14日〜17日 Jumeirah Golf Estates Earth Course, Dubai UAE, 7706ヤード・パー72

「全米オープン」での失敗、離婚危機を乗り越えて……
バレステロスと並ぶ、欧州ゴルフの偉業を達成したローリー・マキロイ

優勝 Rory Mcilroy

ローリー・マキロイ(北アイルランド)
1989年5月4日生まれ。178cm、73kg。米ツアー26勝、欧州ツアー18勝、メジャー4勝。「マスターズ」で優勝すれば、キャリアグランドスラム達成。22年には、欧米両ツアーで年間王者に輝いた。24年フェデックスカップ9位タイ。現在、世界ランク3位。©Eiko Oizumi
©GettyImages

セベ・バレステロスに並んだ!
欧州ツアー レース・トゥ・ドバイランキング総合優勝6回目

「レース・トゥ・ドバイ」総合優勝の行方は、ローリー・マキロイか、トリストン・ローレンスか、最終戦までもつれ込んだが、これを制したマキロイが、22年、23年に続き、総合優勝6回目、3連覇を達成。
また、総合優勝6回は、欧州のレジェンド、セベ・バレステロスと並ぶ大記録。
マキロイの歴史的快挙を振り返る。

「欧州ゴルフにとって特別な存在のセベと同じ記録に並んだことを誇りに思う」  R・マキロイ

2つの優勝トロフィーと記念撮影するマキロイファミリー。左からエリカ夫人、ポピーちゃん、マキロイ。©GettyImages
初日は、ポイントランキング2位のトリストン・ローレンスとプレーしたマキロイ。マキロイは67、ローレンスは73と初日から明暗が分かれた。©GettyImages

バレステロスの記録に並び、涙を流したマキロイ

DPワールドツアー(欧州ツアー・以下DPWT)の最終戦「DPワールドツアー選手権(以下DPWTC)」は11月14日~17日に、アラブ首長国連邦・ドバイのジュメイラ・ゴルフエステーツで開催。
今回はローリー・マキロイがレース・トゥ・ドバイ総合優勝3連覇&6勝目を達成できるかに注目が集まっていた。

彼は初日から安定感のあるプレーを披露し、67、69、68、69と4日間、60台のスコアを連発。
通算15アンダーで、2位のラスムス・ホイガードに2打差で、本大会3勝目を飾った。
そして、1年間かけて争われたポイントレース「レース・トゥ・ドバイ」で1位を獲得し、2024年DPワールドツアー王者に。
セベ・バレステロスの総合優勝6勝に並ぶ、大記録を樹立した。
ホールアウト直後、TVレポーターに、セベ・バレステロスの記録に並んだことについて感想を聞かれると、涙を流し、声を震わせながらこう語った。

「本当に素晴らしいこと。セベが欧州のゴルフ、そして『ライダーカップ』にとってどれだけ重要な存在か。彼の残した功績を考えると、非常に感慨深い。欧州の『ライダーカップ』のロッカールームには、セベの言葉の引用文がたくさん書かれているが、彼が最後にプレーした1995年の『ライダーカップ』で着ていたシャツも飾ってあるんだ。セベは欧州ゴルフにとって、本当に特別な存在。彼と同じ記録に並び、語られることを誇りに思う」

最近では、このように感情を露わにするマキロイの姿は、あまり見たことがない。
彼は欧州のゴルフの歴史に深い敬意を抱き、バレステロスという欧州ゴルフの象徴のような選手と肩を並べる形でその名が記されることに、深く感動している様子だった。
ポイントレースに関しては、大会前に2位だったトリストン・ローレンスの優勝も理論上はまだ可能性があったが、ローレンスが初日に73を叩き、6打差がついたことでマキロイは、「どこかで、これはもうほぼ決まりだ、と思っていた部分もあった」と告白。
しかしこの3年間、レース・トゥ・ドバイの優勝を目指し、DPWTでできるだけ多くプレーすることを優先してきたと語る彼は、最後までその手綱を緩めることはなかった。

「2024年を締めくくるのにふさわしい終わり方だと思う。今年は何度もあと一歩のところで勝利を逃してきたことを考えると、自分で自分を追い込んでしまった感もあるが、本当に今日は大きな一日だった。感謝の気持ちでいっぱいだ」と満足そうに振り返った。

欧米両ツアーで4勝するも勝てなかった試合で評価される1年

最終日は、マキロイ(右)とラスムス・ホイガードが最終組でプレー。2位に入ったホイガードは、双子の兄のニコライに続き、今季は米ツアーに参戦。©GettyImages

世間の評価と自分の評価

マキロイは昨年、欧米両ツアーで通算27試合をこなし、「ヒーロー・ドバイデザートクラシック」「チューリッヒクラシック・オブ・ニューオーリンズ(シェーン・ローリーと組んだチーム戦)」「ウェルズファーゴ選手権」「DPWTC」と計4勝を挙げた。
しかし、最終戦で歴史的な偉業を達成し、長い1年を輝かしい勝利で締めくくったにもかかわらず、「他の人から見れば、2024年は勝った試合よりも、勝てなかった試合で評価される年になることはわかっている」とマキロイは優勝記者会見で語った。
つまりこれは、「全米オープン」での自滅(最終ホールでボギーを叩き、2位に後退)や「パリ五輪」でメダルを獲得できなかったこと、「BMW PGA選手権(DPWTのフラッグシップイベント)」でプレーオフの末、2位に甘んじたことなどを指すのだろう。
しかし彼は「勝てなかった試合で学んだことは、それが他の人にとって重要である必要はないということだ。今日の勝利は自分にとって非常に意義深いものだが、他人は僕が達成したことや、今年達成できなかったことに比べると、そこまで重要とは思わないかもしれない。でも自分にとっては重要であるべきだと理解している。自分でも他人と同じように考える部分もあるが、今年4勝して、レース・トゥ・ドバイで優勝したことは忘れてはいけないと思う」と語った。

優勝週のWining Swing

現在、スイングの微調整が進行中のマキロイ。「ショットのスタートラインがもう少し安定すると、ショットも少し改善されるはず。過去1年半、ミスの幅が広がり過ぎていることがトラブルの原因になっていた。ミスを最小限に抑え、致命的なミスが出ないようにすることが大切」と語っている。©Eiko Oizumi

コリン・モンゴメリーの最多記録8勝まで2勝に迫ったマキロイ

レース・トゥ・ドバイ総合優勝と、「DPワールドツアー選手権」で優勝できた喜びを表彰式で語るマキロイ。右隣は、DPワールドツアーCEOのガイ・キニングス氏。©Eiko Oizumi

バレステロスの6勝という記録に並んだ彼の次なる目標は、コリン・モンゴメリーの8勝だ。

「自分にはまだあと10年くらい、いいゴルフができる時間があると思う。今後ゴルフ界がどう変化するかわからないが、レース・トゥ・ドバイやオーダー・オブ・メリット(賞金ランク)が存在する限り、このツアーで勝ち続け、総合優勝を8回、9回と伸ばしたい。そしてモンティ(モンゴメリー)の記録に追いつけるよう頑張りたい」と公言した。
このような大記録を樹立するためには、小さな努力の積み重ねが必要だが、マキロイは「1年を通して目標を設定し、それに向けて努力するのが得意。特に短期的な小さな目標を設定して、それを一つ一つクリアしていく方法が好きだ。それが大きな成果につながることを期待している」と語る。

表彰式では、エリカ夫人、愛娘ポピーちゃんも登場し、優勝トロフィーの記念撮影が行なわれた。
カメラマンのリクエストでポピーちゃんが6本指でマキロイの6勝を表現し、マキロイとエリカ夫人がそれを見て顔を見合わせて笑うという、微笑ましいシーンも見られたが、この家庭も昨年、崩壊した時期があった。
「全米プロ」の週に離婚を発表し、TVレポーターとの不倫が報道された。
だが、1か月後の「全米オープン」では復縁。
この3人の仲睦まじいシーンを見ながら、2024年をこのような形で終えられたことが、彼にとって最高の瞬間だったのではないか、と思った。

2024年「レース・トゥ・ドバイ」最終成績

1ローリー・マキロイ(北アイルランド)
2ラスムス・ホイガード(デンマーク)※
3トリストン·ローレンス(南アフリカ)※
4ティレル·ハットン(イングランド)
5ポール·ウェアリング(イングランド)※
6ビリー·ホーシェル(米国)
7トミー·フリートウッド(イングランド)
8アダム·スコット(豪州)
9ロバート·マッキンタイヤー(スコットランド)
10イェスパー·スベンソン(スウェーデン)※
11ニクラス·ノーガード(デンマーク)※
12マテオ·マナセロ(イタリア)※
13トービヨーン·オルセン(デンマーク)※
15アントイン·ロズナー(フランス)※
16星野陸也(日本)※
17シェーン·ローリー(アイルランド)
18トム·マッキビン(北アイルランド)※
25ホアキン·ニーマン(チリ)
32ジャスティン·ローズ(イングランド)
35中島啓太(日本)
46ジョン·ラーム(スペイン)
84桂川有人(日本)

※マークの選手は、今季のPGAツアーの出場権を獲得した選手。

「レース・トゥ・ドバイ」歴代優勝者

2024年ローリー・マキロイ
2023年ローリー・マキロイ
2022年ローリー・マキロイ
2021年コリン・モリカワ
2020年リー・ウエストウッド
2019年ジョン・ラーム
2018年フランチェスコ・モリナリ
2017年トミー・フリートウッド
2016年ヘンリク・ステンソン
2015年ローリー・マキロイ
2014年ローリー・マキロイ
2013年ヘンリク・ステンソン
2012年ローリー・マキロイ
2011年ルーク・ドナルド
2010年マーティン・カイマー
2009年リー・ウエストウッド
2008年ロバート・カールソン
2007年ジャスティン・ローズ
2006年パドレイグ・ハリントン
2005年コリン·モンゴメリー
2004年アーニー·エルス
2003年アーニー·エルス
2002年レティーフ·グーセン
2001年レティーフ·グーセン
2000年リー·ウエストウッド
1999年コリン·モンゴメリー
1998年コリン·モンゴメリー
1997年コリン·モンゴメリー
1996年コリン·モンゴメリー
1995年コリン·モンゴメリー
1994年コリン·モンゴメリー
1993年コリン·モンゴメリー
1992年ニック·ファルド
1991年セベ·バレステロス
1990年イアン·ウーズナム
1989年ロナン·ラファティ
1988年セベ·バレステロス
1987年イアン·ウーズナム
1986年セベ·バレステロス
1985年サンディ·ライル
1984年ベルンハルト·ランガー
1983年ニック·ファルド
1982年グレッグ·ノーマン
1981年ベルンハルト·ランガー
1980年サンディ·ライル
1979年サンディ·ライル
1978年セベ·バレステロス
1977年セベ·バレステロス
1976年セベ·バレステロス
1975年デイル·ヘイズ

※「レース・トゥ・ドバイ」は2009年から施行。それ以前は、賞金「オーダー・オブ・メリット」によるランキング。

Text/Eiko Oizumi

大泉英子

「ゴルフ・グローバル」編集長。海外メジャー取材は男・女・シニア合わせて130試合以上。現在もLIVゴルフも含め、海外ツアーをメインに取材。全米・欧州ゴルフ記者協会会員。

Photo/Eiko Oizumi, Getty Images

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