Text & Photo/Eiko Oizumi

2022年にLIVゴルフに参戦し、2023年には「グリーンブライヤー大会」と「シカゴ大会」で2勝を挙げたクラッシャーズGCのキャプテン、ブライソン・デシャンボー。昨シーズンは13試合中7試合でトップ10入りを果たしたものの、勝利には届かず。今季もここまで未勝利ながら、6試合中4試合でトップ10入り(うち前週の「メキシコシティ大会」では2位タイ)と安定した成績を残しており、直近3試合ではいずれも2日目を最終組でプレーしている。
そんな中、最終日に向けた心構えを尋ねられると、こう語った。
「とにかく子供のように、楽しみながらプレーすること。そして、冷静に、自分の力を信じてやりきること。スイングの動きも確認しながら、しっかりとしたプレーを心がけたい。“自分のゴルフ”を貫くことが、何よりも大切なんです」
先週は標高2700メートルのメキシコシティ、今週は海抜ゼロの韓国と、全く異なる環境下での戦いが続く。
「僕はボールを大きく曲げて打つタイプだから、高地ではボールの直進性が増して助かるんです。でもここでは、よく曲がる。その分、そのカーブをしっかりコントロールしながら、コースを攻略する必要がある」と分析する姿は、まさに“ゴルフの科学者”の異名にふさわしい。
LIVゴルフは世界各地を転戦するグローバルツアーだけに、気候、地形、時差といった条件への適応力も問われる。デシャンボーは、どんな地においても共通する調整法を持っているという。
「最も大事なのは、練習場でデータを正確に把握すること。ボールがどれくらい曲がるかをチェックし、その環境に自分を慣らしていく。今回の会場のようにジャック・ニクラス設計のコースは、非常に良いテストになる。ティーショットは比較的やさしいけれど、2打目の精度が問われるし、バーディを取るには長いパットも決めなければならない。僕にとっては、グリーン上の感覚、飛距離や弾道の特徴、空中でのカーブ量に順応することがカギだった。そして、狙うべきでないピンポジションに対しては無理をしない判断も重要だと思っているんです」
冷静に数字を分析し、ショットを緻密に調整していく男だが、ひとたびコースに出れば、ファンの熱気も自らのエネルギーに変えて戦う。LIVゴルフはときにメジャー大会以上の盛り上がりを見せることもあり、それゆえに「LIVでのプレーは、メジャーのための絶好の準備になる」と語る。
ラウンド中、声援を送るファンに目を合わせ、フィル・ミケルソンのように親指を立てて応える姿は、自らが語るように「プロゴルファーであると同時にエンターテイナー」。ファンとの交流を「自分の責任」と捉え、自身のYouTubeチャンネルを通じてゴルフの魅力を世界に発信するその活動スタイルは、プレー中の姿勢にも通じるものがある。
今季初優勝を目指すと同時に、韓国の地で新たにゴルフファン、そしてデシャンボーファンの心をつかみつつある。
