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【世界のゴルフ通信】From USA 険しい統合への道?近づくどころか遠ざかっているPGAツアーとLIVゴルフの微妙な関係

3月の「プレーヤーズ選手権」開催前の記者会見に出席した、PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏。©GettyImages
2017年「プレジデンツカップ」の表彰式で挨拶を交わす、ドナルド・トランプ大統領(左)とアダム・スコット(右)。©GettyImages

トランプ大統領との会談後も、進展なし

今年に入ってもPGAツアー、DPワールドツアー、そしてサウジアラビアの公共投資基金(PIF)との間でゴルフ界を統一するための合意形成は、6か月前、あるいは1年前と比べても進展していないように見える。

2月20日に行なわれた、トランプ大統領、PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏、選手代表であるタイガー・ウッズとアダム・スコット、そしてPIFのヤシール・アル・ルマイヤン氏が参加した会談の後、そのムードは当初の楽観的な見方から一転して、決して明るいものではなくなっている。

モナハン氏は「アーノルド・パーマー招待」と「プレーヤーズ選手権」の記者会見で、その見方を否定した。
しかし、彼自身が会議後に出した声明や発言からは、楽観的な姿勢が後退していることがうかがえる。
ローリー・マキロイもその点についてコメントしており、ゴルフ界の分裂が続いていることに触れた。

「タンゴを踊るには、2人必要だよね」とマキロイはベイヒルクラブで語った。「片方がやる気でも、もう片方がその気でなければ難しい

また、彼は「状況は数週間前とは異なるようだ」とも述べ、PGAツアーは必ずしも合意が必要だとは考えていないことを認めた。

マキロイは、PIFとの交渉を担当する「取引委員会」の一員ではあるが、PGAツアーの政策委員会のメンバーではなく、ホワイトハウスでの2度の会談にも出席していない。
最初の会談は2月4日に行なわれ、ツアー側は大きな期待感を抱くようになり、モナハン氏とウッズは「ジェネシス招待」でゴルフ界の再統一について過去18か月間のどのときよりも前向きな姿勢を示していた。

しかし、2回目の会談の後、状況は一変。
PGAツアーが出した声明は単に「トランプ大統領に感謝し、対話の開始について言及」するだけで、2023年6月から協議が続いているにもかかわらず、より慎重な声明を発表するにとどまった。

SSGから約15億ドルの投資を受けているPGAツアーには、統合は必ずしも必要ではない

今年の「プレーヤーズ選手権」で優勝したローリー・マキロイ(右)とモナハン氏。©GettyImages

2017年、ニューヨーク近郊で開催された「プレジデンツカップ」をトランプ大統領(左)も訪問。右はジェイ・モナハン氏。©GettyImages
モナハン氏と、PIF(サウジ政府系ファンド)の最高責任者で、LIVゴルフを支援しているヤシール・アル・ルマイヤン氏(右)。©GettyImages

PGAツアーは統合・合意を必要としていない

マキロイは詳細を明かさなかったものの、PGAツアー側が提示し、受け入れられると確信していた案を、PIF側──特にアル・ルマイヤン氏──によって拒否されたことを示唆した。
なお、アル・ルマイヤン氏は交渉についてこれまでいかなる側面も公の場で発言したことはない。

「ゴルフ界の論調としては、合意が必要だとは言わないが、最高の選手たちが再び集結するという点では、合意を歓迎するだろう」とマキロイは語る。

「でも、PGAツアーにとって合意が必要だとは思わない。PGAツアーは良い流れに乗っているし、TV視聴率も好調。TGLも、全体の状況に良い効果を与えている」

「もう一度言うが、3週間前のトーリーパインズでの記者会見のときにこの質問に答えたが、そのときの状況と今では少し違っているかもしれない。合意がゴルフ界全体にとって理想的であることには変わりないが、PGAツアーの観点からすれば、必須ではないんだ」

理論上では、PIFとの契約または提携により、LIVゴルフリーグはPGAツアー・エンタープライズの傘下に入ることになる。
ツアーはすでに、ストラテジック・スポーツ・グループ(SSG)という民間投資会社から15億ドルの投資を受けているが、この資金は、さまざまな手段でPGAツアーの事業の成長を支援するために用いられる計画だ。
モナハン氏によれば、交渉が続いているため、今のところその大半は使われていないという。

PGAツアーの中にLIVゴルフが組み込まれたら?

PIFとの契約の一環として、LIVゴルフは10億ドル以上と見られる現金投資に加えた評価を受けることになっていた。
元「全米オープン」チャンピオンで、PGAツアーの政策委員会メンバーであるウェブ・シンプソンはこう語った。

「LIVのチームコンセプトは、個人的には理解しづらいし、ファンからもそういう反応をもらっている。『ライダーカップ』や『プレジデンツカップ』のように年に1回のイベントなら理解できるが、PGAツアーのフランチャイズモデルや、F1モデルというのは、将来性があるとは考えにくい」

仮にこのチームコンセプトが縮小して導入されたらどうなるだろうか?
それは少なくとも妥協の一歩となる可能性もある。

「自分は(PIFと直接取引する)取引委員会のメンバーではないので、PGAツアー、DPワールドツアー、LIVゴルフを組み込んだ他の形式のチームゴルフについて、ヤシール氏がどう考えているかはわからない。複雑な話だ」

「少なくとも理事会レベルでは、年間を通してではなく、ファンが見たいと思う、何らかの形のチーム戦を時期限定で行なうような案も検討されている。しかし、チームスポーツの魅力は、シーズンを通してそのチームを応援することにあるという考えに戻ってしまう。チームの調子の浮き沈みに、ファンたちは一喜一憂するのだ。年に4回だけで、果たして満足できるのか。ヤシール氏の望む形になるのか?」

LIVゴルフは、この統一交渉が始まって以来、「通常営業」を続けており、2025年はすでに米国での初戦(「マスターズ」前週の「マイアミ大会」)の他、4大会を海外で実施している。
さらに、将来の開催地と契約を結び、スタッフの増員、オフィススペースの増設など、事業への投資を増やしている。

マキロイの発言には、「必要な妥協」が行なわれていないことがにじみ出ている。
どうすれば実現できると考えているかを問われると、マキロイは政策委員会にいた頃のことを振り返り、次のように語った。

「数年前はすごく考えたけど、今はそれほど考えていない。例えば、過去3年のメジャー優勝者や『プレーヤーズ選手権』優勝者に特別枠を設けるとか、免除のカテゴリーを作って、欲しい選手を獲得しようとするとか。 わからないな。まあ、いろいろあるだろうけど、でもそれはもう僕の仕事じゃないから」

合意が遠のいたと感じるかと問われると、マキロイは、「もともと、そんなに近づいた感じもしなかったが、今も全然近づいている気はしないね」と語っている。

Text/Bob Harig

ボブ・ハリグ(アメリカ)

Sports Illustrated誌のゴルフライター。25年以上にわたり、ゴルフトーナメントの取材を続けている。全米ゴルフ記者協会会員。

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