The Open/2025年7月17日〜20日/ロイヤル・ポートラッシュGC(英国・北アイルランド)/7381ヤード・パー71
優勝 Scottie Scheffler

1996年6月21日生まれ。190cm、91kg。世界ランク1位。米ツアー18勝、メジャー4勝。今季は「CJカップ」「全米プロ」「メモリアルトーナメント」「全英オープン」「BMW選手権」で5勝。2024年「パリ五輪」金メダリスト。
クラレットジャグ(優勝トロフィー)を掲げて、笑顔を浮かべるシェフラー。©R&A

4日間60台での優勝は、シェフラーで7人目



タイガーに並ぶ記録で「全英」初優勝
初日を終えて、首位に1打差の6位タイにつけた世界ランク1位のスコッティ・シェフラーは、2日目に64をマークして2位と1打差の単独首位に立った。
3日目も60台を記録し(67)、2位のリー・ハオトンに4打差をつけて臨んだ最終日、通算14アンダーの単独首位でスタートしたシェフラーは、最終ラウンドを68で回り、通算17アンダーで優勝。
優勝賞金310万ドル(約4億6000万円)を手にした。
そして「マスターズ」2勝、「全米プロ」1勝に次ぎ、メジャー4勝目、ツアー通算17勝目を飾った。
「全英オープン」を4ラウンド60台で制したのは、史上7人目(直近では、2021年のコリン・モリカワがこの記録を達成)。
また、今季は「CJカップ・バイロン・ネルソン」「全米プロ」「メモリアルトーナメント」に次ぐ4勝目で、ツアー最多。
世界ランク1位で「全英オープン」を制したのは、タイガー・ウッズ(2000年、2005年、2006年)以来2人目で、4度目となる。
「素晴らしい1週間だった。今日、僕は観客の一番人気ではなかったかもしれないけど、『USA!』や『ダラス、テキサス!』という声援はしっかり聞こえていたし、本当に楽しかった」
「本当に特別な気持ちだ。このキャリアの段階に到達するには、非常に多くの努力が必要だったし、今週は本当に厳しい1週間だった」
週末の36ホールで唯一のミスは、最終日の8番ホールでのダブルボギーだけだったと語ったシェフラー。
その時は、2位のクリス・ゴタラップと4打差まで詰まったが、直後の9番でバーディを奪い、そのままリードを守って勝ち切った。
「全米プロ」の時はピンチもあったが、今回は2日目以降、首位を守り切るゴルフ。
以前はパッティングが弱点と言われていたが、現在は、フィル・ケニオンコーチと取り組み、「自信を持って打てるように導いてくれた」と語る。
4日間の平均パット数が全体の4位であることから見ても、劇的に改善されていることがわかる。
「優勝しても嬉しいのは2分だけ」の真意
大会前、彼は「優勝しても嬉しいのは2分だけ」と話していたが、その言葉だけを切り取るのは間違いのようだ。
「2分だけ、というのは誤解を招いたかもしれない。僕が言いたかったのは、勝利だけでは人生の渇望は満たされないということ」と優勝会見で記者たちに説明した。
ここまでツアー通算17勝、メジャー4勝を挙げているシェフラーでも、勝つことに慣れて「全英オープン」での勝利でも嬉しいのは束の間の話、というわけではない。
「今の時代、人々が求めるのは〝釣り見出し〟なんだよね。5分間のインタビューを3語だけに切り取られたり……。あの時僕が伝えたかったことの本質が、正しく伝わっていなかったかもしれない。それは、僕の伝え方にも問題があったかも。僕はこの瞬間に対して、本当に大きな感謝の気持ちを持っている。僕は人生の全てを、このゲームが上手くなることに費やしてきた。そして、プロゴルファーとして、このゲームをプレーできることは、僕の人生の最大の喜びの一つだ」
シェフラーは、ロイヤル・ポートラッシュでの「全英オープン」に優勝できたことに、言葉では言い表せない感覚があるといい、最高の気分だとしながらも、「『全英オープン』に勝つことは素晴らしいことではあるが、人生の成功――それがゴルフであれ、仕事であれ、心の奥底の渇望を本当に満たしてくれるわけではない」と語った。
シェフラーにとって優先事項は信仰、家族、そしてゴルフ


ゴルフは3番目に大事なこと
それでは何が彼の心を満たすことができるのか?彼にとって最優先事項は、「信仰」と「家族」である。そして「ゴルフ」は3番目なのだそうだ。
「ゴルフは、僕のアイデンティティではない。大会に勝つこと、トロフィーを追いかけること、有名になることで自分を定義してはいない。僕は優勝したからと言って、自分が特別な存在になったとは思わない。心から感謝はしているが、これは人生の全てではない」
ウィニングパットを決めると、シェフラーは必ずメレディス夫人を探すという。
そして今では1歳の息子、ベネットちゃんも、彼の優勝を祝福するシーンに登場するのが日常的となっている。
「彼はあんな大きな丘を登ったことはなかったと思う。何度も転んでいたけど、それも成長の一部。状況は全然わかっていないだろうけど、ただ僕と一緒にいたかっただけ。それがすごく嬉しかったね」
仲間や家族と勝利を祝えることは「最高の喜び」と笑うシェフラー。
メレディス夫人とは、高校時代からの交際を経て結婚したが、「彼女は僕の親友であり、人生のパートナー。家庭の全てを支えてくれている。彼女がいなければ、僕はここまで来られなかったし、この勝利は僕だけのものではなく、チームと家族全員のものだ」と語っている。
今年、「全米プロ」「全英オープン」で優勝したことで、キャリア・グランドスラムに王手がかかった。
残るは「全米オープン」の優勝だけである。来年のシネコックヒルズGCでは、彼のグランドスラム達成が大いに期待されることになりそうだ。

2025 全英オープン 最終成績
優勝 | スコッティ・シェフラー | −17 |
2位 | ハリス・イングリッシュ | −13 |
3位 | クリス・ゴタラップ | −12 |
4位 | ウィンダム・クラーク マシュー・フィッツパトリック リー・ハオトン | −11 |
7位 | ロバート・マッキンタイヤー ザンダー・シャウフェレ ローリー・マキロイ | −10 |
10位 | ブライソン・デシャンボー コーリー・コナーズ ブライアン・ハーマン ラッセル・ヘンリー | −9 |
14位 | リッキー・ファウラー | −8 |
16位 | 松山英樹 トミー・フリートウッド | −7 |
21位 | ルドビグ・オーバーグ | −6 |
34位 | セルヒオ・ガルシア ジョン・ラーム ジャスティン・トーマス | −3 |
40位 | シェーン・ローリー 金谷拓実 | −2 |
56位 | フィル・ミケルソン | +1 |
63位 | 河本 力 ビクトル・ホブラン | +4 |
予選落ち/星野陸也、ホアキン・ニーマン、コリン・モリカワ、アダム・スコット、今平周吾、阿久津未来也
Photo/R&A, Getty Images
Text/Eiko Oizumi
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大泉英子
「ゴルフ・グローバル」編集長。海外メジャー取材は、男・女・シニア合わせて130試合以上。現在も海外ツアーをメインに取材。欧・米ゴルフ協会会員