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最難関のアウェーの地・ニューヨークで起きた奇跡
「ライダーカップ」欧州チーム2連覇達成

Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/PGA of America

2025年「ライダーカップ」で優勝した、ルーク・ドナルド主将(中央)率いる欧州チーム。

  選手たちのガッツと観客の熱い応援はメジャー以上という、2年に一度行われる世界最大のゴルフの祭典「ライダーカップ」。2023年「ローマ大会」でホーム優勝を遂げた欧州チームにとって、今年は米国開催で、しかもニューヨークのベスページ・ブラックが舞台とあり、ヤジも飛び交い、厳しい洗礼を受ける土地柄のため、欧州チームが優勝するようなことがあれば、奇跡とまで言われていた。

 そんな過酷な状況の中、2回連続でキャプテンを務めたルーク・ドナルドの采配のもと、欧州チームが15ポイントを獲得し、米国チームと2ポイント差で勝利。欧州が米国で勝利したのは、1987年、1995年、2994年、2012年以来、5回目のこと。また、ルーク・ドナルドは欧州チームで2連覇を達成した2人目のキャプテンとなった。1987年、トニー・ジャクリン以来の快挙だ。

 ドナルドは、ニューヨークで起こりうるあらゆる場面を想定し、受けるヤジや騒がしさに対応できるよう、VRヘッドセットを選手たちに配布して、入念に準備。実際はジョン・ラームが「VRよりも、実際のヤジの方がひどい」と言うように、米国を応援する一部の観客たちのマナーが問題となったが、選手たちは会場で何を言われても毅然とした態度でプレーし、目の前の1打に集中してポイント獲得に注力した。

オープニングセレモニーでスピーチする、欧州チームキャプテンのルーク・ドナルド。

 その結果、初日と2日目の合計4セッションを終えた時点で、欧州11.5ポイント、米国4.5ポイントと大差をつけた。その差は7ポイント差。「ライダーカップ」は全28マッチあり、14.5ポイントを獲得すれば優勝が決まるが、欧州チームは3日目(最終日)のシングルス戦を前に、あと3ポイント獲得すれば優勝、という展開となった。最終日のスタート前、欧州のビクトル・ホブランが首痛で棄権し、ホブランとハリス・イングリッシュの対戦はなくなったが、今大会の「封筒ルール」に従い、両者引き分けとなり、0.5ポイントが与えられた。そのため、最終日は欧州12ポイント、米国5ポイントからスタートしたのだった。

首痛のため、最終日のシングルス戦で棄権したビクトル・ホブラン。対戦相手は、ハリス・イングリッシュの予定だった。

 だが、最終日はまさかの展開が待っていた。全11マッチ中、6マッチで米国が勝利し、欧州はルドビグ・オーバーグがたった1人勝利ポイントを獲得しただけ、という予想外の展開だった。序盤は欧州の青のリードが目立ち、「これは欧州にとってイージーな展開だ」と誰もが思ったが、後半に入ると世界のトップランカー揃いの米国が反撃に出て、1組目のキャメロン・ヤング、2組目のジャスティン・トーマス、3組目のブライソン・デシャンボー、4組目のスコッティ・シェフラーまで、最終ホールまでもつれ込み、引き分け、あるいは逆転勝利を決めたのだ。

シングルス戦で、欧州チームに唯一の勝利ポイントをもたらした、スウェーデンのルドビグ・オーバーグ。

 だが、それでも2日目までの大きな貯金がものをいい、8組目のシェーン・ローリーが引き分けて「ライダーカップ」を欧州チームが保持する0.5ポイントを獲得。14ポイントまで到達したため、欧州の負けはなくなった。そして、10組目のティレル・ハットンが引き分けたことで、14.5ポイントとなり、欧州チームの2連覇が決定。その後、最終組のロバート・マッキンタイヤーが引き分けで0.5ポイントを獲得して、15ポイントとし、米国とは2ポイント差での勝利となった。

 米国の逆転を阻止したシェーン・ローリーは、ホールアウト後に涙を流しながら「最後の数時間は人生で一番辛いものだった。あのボール(最終ホールのパット)が入るなんて本当に信じられない!『ライダーカップ』は僕の全て。アイルランドで『全英オープン』に勝った以上のものなんだ」と語った。

優勝トロフィの保持が決まった瞬間、雄叫びを上げたシェーン・ローリー(手前)。うしろはジョン・ラーム。

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