Text & Photo/Eiko Oizumi

「DPワールドツアー選手権」最終日を5バーディ、2ボギーの69で回り、通算11アンダーでホールアウトした中島啓太は、16位タイで大会を終えた。レース・トゥ・ドバイランキングでは14位に入り、有資格者を除く上位10名に与えられる来季のPGAツアー出場権を“8番目”で見事獲得した。
「前日に緊張で寝られないということはなかったけれど、プレッシャーはすごかった。やっぱりケンセイ(平田憲聖)の存在が大きかった。彼はコーンフェリーツアーからPGAツアーに行くことが決まっていたので、“一緒に行きたい”という気持ちに後押しされて最後まで戦い抜けた」と振り返る。
プロ仲間の中でも、最も仲が良いという平田からは、先週の「アブダビHSBC選手樿」でも励ましのメッセージが届いていたという。「とにかくケンセイと一緒にPGAツアーに行けるのが嬉しい」と中島。スコア提出を終えて出場権獲得が確定した瞬間には、思わず涙があふれた。この週は両親が金曜日まで現地で観戦し、最終日は日本に帰国してテレビで応援していた。母親に報告し、その喜びを分かち合ったという。
念願のPGAツアー行きを決めた喜びは大きい。しかし同時に、これから挑むことになる世界最高峰ツアーのレベルも十分に理解しており、「ホッとしたけど、今すぐ練習したいくらい、取り組みたいことがある」と気持ちを引き締めている。今オフに真っ先に着手したいのは飛距離アップだ。昨年は腰痛の影響で満足にトレーニングができず、その分飛距離が落ちてしまったという。体作りからやり直し、ショートゲームの強化にも取り組んでいくつもりだ。
来季は「ソニーオープン・イン・ハワイ」で本格始動する。PGAツアーには松山英樹という大先輩がいるが、「同じ試合に出られるとは限らないので、勝つことを目標にやっていきたい」と意気込む。2年前には久常涼が同じ道を経てPGAツアー入りを果たし、昨年は星野陸也が続いた。その姿を間近で見てきただけに、中島には「自分もその後に続けるのだろうか」というプレッシャーが常にあったという。最終ホールの1メートル強のパットでは緊張で手が震えたが、それをしっかり沈めてバーディ。PGAツアー行きを決めた瞬間、普段は淡々とプレーする中島にしては珍しく、渾身のガッツポーズが飛び出した。だが本人は「ガッツポーズをしていたなんて覚えていない」と苦笑する。緊張と重圧から解き放たれた瞬間だった。







