世界にはゴルフ文化のない国、あるいは最近ゴルフ場ができたばかりという国がいくつもある。
ここでは、「ゴルフ発展途上国」の歴史と文化、“ゴルフの夜明け”との関係性などを紐解いていく。
第23回はスリナム共和国を紹介する。
スリナム共和国

南米大陸の北部、大西洋沿岸に位置する南米最小の独立国。南はブラジル、西はガイアナ、東はフランス領ギアナに接している。
オランダ植民地時代の影響が今も残り、手付かずの自然が存在する「南米の秘宝」








南米の中でも多民族、多言語の独立国
南米大陸の北部に位置する、小さな独立国「スリナム」は、その面積がわずか16万3000平方キロメートル。
首都はパラマリボで、ラテンアメリカの中でも、最も民族的に多様な国家の一つだ。
ヨーロッパ人が到来する何千年も前から、さまざまな先住民族が暮らしていたスリナム。
1650年、イギリス人がバルバドスからスリナム川沿いに植民地を建設し、最終的に1667年、ゼーラント州のオランダ人が和平条約「ブレダ条約」によってこの地を獲得、支配が開始された。
当時、砂糖のプランテーションが奴隷労働により営まれており、19世紀に奴隷制度が廃止されると、労働力を求めてジャワ島、マディラ島、中国、さらにはイギリスの海外領土から労働者を招き入れた。
今も公用語はオランダ語で、スリナム独自のクレオール言語「スラナン・トンゴ」も使用。
また、ビジネスや観光地、商店などではジャワ語や英語も使用されている。
現在の経済は、豊富な天然資源、特にボーキサイト(アルミの原料)や金、石油、木材に大きく依存している。
独立後は米国、中国と深い関係のスリナム
1965年、アメリカとオランダの宇宙機関が、スリナムの「コロニー」発射場から4基のロケットを打ち上げた。
地理的に赤道に近いことから、世界有数のロケット発射基地として知られるようになったスリナムだが、一方、現在も国土の大半は、森林や熱帯雨林に囲まれ、特に南部は人がほとんど住んでいない。
1975年にオランダから独立したが、外交においては長らくオランダとの緊密な関係を維持。
しかし1980年初頭に軍事クーデターが勃発。
さらに2010年~2020年まで大統領を務めたデシ・ボーターセ氏がオランダの裁判所で麻薬密輸の有罪判決を受けたことから、関係に亀裂が生じ、オランダとスリナムとの特別な関係はストップ。
現在は、アメリカと中国が、スリナムの主要なパートナーとなっており、貿易、エネルギー生産など多岐にわたって協力関係を築いている。
3つのユネスコ世界遺産がある、「南米の秘宝」
「南米の秘宝」と呼ばれるスリナムは、自然と水辺の宝庫として注目を集めつつあるが、まだ観光客で溢れかえるほど賑わってはいない。
スリナムは世界で3か国しかない「カーボン・ネガティブ国家(経済活動によって排出されるCO2などの温室効果ガスの量よりも、森林やテクノロジーによって吸収・除去される温室効果ガスの量が多い国家)」の一つであり、3つのユネスコ世界遺産がある。
❶中央スリナム自然保護区(手付かずの熱帯雨林と多様な生態系を保護)、❷パラマリボの市街歴史地区(17~18世紀の木造建築群が良好に保存され、オランダ、および欧州建築の影響が見られる)、❸ヨーデンサヴァネ考古遺跡とカシポラ・クレーク墓地(ユダヤ人入植地の遺構)だ。
スリナム観光庁のラビン・ブッダ長官は「アマゾン流域の手付かずの熱帯雨林とジャングルツアー、水上アクティビティをぜひ体験してほしい。
パラマリボ旧市街では歴史的木造建築、大聖堂やモスク、ユダヤ人居留区などが長い歴史を物語っており、ホテル、レストラン、ショッピングセンターも充実。
スリナム・カーニバルなどのイベントも大人気なので、ぜひスリナムへ」と語っている。
スリナムの主要なスポーツは、バスケットボール、サッカー、バレーボールなどで、サッカーではスリナム系・オランダ人選手が活躍。
ゴルフはまだまだ発展途中で、ゴルフ場は1つだけ存在している。
パラマリボゴルフクラブ
Golf Club Paramaribo
スリナムでたった1つ存在するゴルフ場

ホールアウト後、テラスで味わう「ジョゴ(地ビール)」が格別!



12ホールのレイアウトで18ホールのスコアを構成
スリナムには、1954年に設立されたパラマリボGCというゴルフ場が1つだけ存在する。
約15ヘクタールの三角形の敷地に、12ホールのレイアウトを持ち、同じホールを回るのでも、ティーグラウンドの位置を変えながら、全18ホールのプレーが可能となっている。
かつてのクラブハウスは、コースとレストランを見渡せる上階テラスが魅力だったが、2017年に改修・拡張され、モダンな設備とイベント会場を備えた施設となった。
レストランや更衣室、プロショップなどを備え、ゴルファーに必要なものが全て揃っている。
メンバーコースだが、もちろんビジターもプレー可能で、初心者から上級者まで楽しめる設計。
個人・グループ向けにゴルフレッスンも提供されており、エチケットの順守を徹底している点も特徴的だ。
また、クラブ選手権や、従業員のキャディのための試合もある。
地元の習慣として、9ホール終了後に軽いソフトドリンク、18ホール終了後にダブルサイズを楽しむのが一般的。
大人は地ビールの「ジョゴ」を一杯やるのが、スリナムゴルフの流儀だ。
Photo/Golf Club Paramaribo,Getty Images
Text/Susanne Kemper

スザンヌ・ケンパー(スイス)
オーストリア国籍、スイス在住。20年以上にわたって米国、欧州を中心に世界中を旅しながら、ゴルフ誌やライフスタイル誌に寄稿。5ヶ国語を操る。




