
皆さんがゴルフをしていて思い浮かぶ疑問や、「なぜそうなるの?」という事象について、過去の統計・データや論文、独自の実験をもとに紐解いていく「ゴルフの科学」。
第1回は、「アベレージゴルファーが同じ場所から、何回もショットができたら、パープレーができるようになるのか?」についてお話しします。

鈴木タケル(スポーツインダストリー)
1976年生まれ。静岡県出身。PGAティーチングプロA級・ジュニア指導員。日本ゴルフ学会理事として学術活動にも携わり、国際武道大学大学院修了後、武蔵野美術大学では非常勤講師を務める。非利き側でも練習する独自理論「スイッチゴルフ」を提唱。
アベレージゴルファーは、何回も打ち直せばパープレーできるの?

ゴルフのスコアを決定する要因は、さまざま考えられますが、特に技術の練習は重要であり、練習の中にはショット、アプローチ、パッティングなどがあります。
スコアを向上するために必要なことはそればかりではなく、戦略を立て、実践する練習をすることも必要と考えられます。
そこで、次のような実験を行ないました。
ルールの束縛を軽減、つまり、本来目の前のショットを1回しか打てないことがゴルフの難しさですが、そのルールを取っ払い、毎ショットで打ち直しOKとし、結果の良いボールを採用するというものです。
実験対象は、普段のスコアが90台前後のアベレージゴルファーで、スコアの違いを比較し、上達に必要な事項を調査しました(引用1)。
実験参加者は10名の男性アベレージゴルファー
実験参加者は、一般男性ゴルファー10名。9ホールの平均スコア41.7~51.3ストローク、生涯ベストスコア76.4~90.2ストローク、ドライバー・クラブヘッドスピード平均38.2~41.8m/sと、18ホールをボギーペース前後でラウンドする、アベレージゴルファーが実験に参加しました。
3つのプレー方式で比較
以下の3つのプレー方式により、実際に9ホールをラウンドし、それぞれのスコアの比較を行ないました。
❶ノーマルラウンド/通常通り1球でプレーを行なう。
❷スクランブル2/毎ショット2回打ち、ベストボールを選択していく。
❸スクランブル3/毎ショット3回打ち、ベストボールを選択していく。
アベレージゴルファーならタラレバショットを2回やれば、1回はパープレーできる

1球の打ち直しで30台、2球でパープレーに
❶ノーマルラウンドでは、平均46.6打でしたが、❷スクランブル2では、7.7打スコアがよくなり、38.9打でした。
さらに、❸スクランブル3では、10.6打よくなり、36打となりました。
毎ショット1回の打ち直しショットがあれば、30台のスコアを出すことができ、毎ショット2回の打ち直しショットができればパープレーでラウンドできる結果となりました。
状況判断だけでスコア改善の可能性
この結果から、プレーヤーは状況判断とショットの確率を上げることで、現在持っている能力でもスコアを大きく改善できる可能性があることがわかりました。
ショットの確率を上げるには、ゴルファーが一生、練習を継続していかなければなりません。
一方、状況判断力は、意識的にそれを行なえば、大いに改善されるでしょう。
この実験でも、ショットの戦術、番手の戦術、パッティングラインの戦術などにおいて、多くの場合1球目では読みが甘く、戦術を変えるだけで2球目、3球目の結果が変わる場面が多く見られました。
スコア向上のためには、技術の練習だけでなく、状況判断、戦術の重要性にも目を向ける必要があります。
コースでの成功体験は有益
この実験では、俗に言う「タラレバショット」(打ち直しショットの意)を毎ショット実行して、実際にスコアの比較を行ないました。
チーム戦として行なうスクランブルルールを1人で行なうことから、2023年のルールブックには、「ワンパーソン・スクランブル」として紹介されていますが(引用2)、通常このようなプレーはゴルフ場では許可されていません。
今回は、特別にゴルフ場の許可を得て、実験を行ないましたが、夕方の空き時間にゴルフコースを活用したレッスン形態が、日本でも広く行なわれるようになった現在、ゴルフ場の許可を得た上で、このような方法でプレーヤーの成功体験を積むことも、スコアを作るいい練習につながると言えるでしょう。
引用文献
1. Suzuki, T., Sheahan, J. P., Okuda, I., & Ichikawa, D. (2020). Investigating factors that improve golf scores by comparing statistics of amateur golfers in repeat scramble strokes and one-ball conditions. Journal of Human Sport and Exercise, 16(4), 1–13. https://doi.org/10.14198/jhse.2021.164.09
2. United States Golf Association, & The R&A. (2023). Official guide to the Rules of Golf 2023 ,9C, Scramble, (p. 81).
Illustration/Koji Kitamura




