ハリス・イングリッシュ、コロナ隔離を利用して心技体を見直した末の勝利
セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ
2021年1月7日~10日(米国ハワイ州カパルア・プランテーションコース)
優勝
Harris English
ハリス・イングリッシュ(米国)
1989年7月23日生まれ。191cm、84kg。2011年にプロ転向以来、米ツアー3勝。
チリのホアキン・ニーマン(左)とプレーオフの末、勝利したイングリッシュ。
今年限りの特例を生かしてビッグチャンスをゲット
今年初戦のPGAツアー「セントリー・トーナメント・オブ・チャンピオンズ」は例年通り、ハワイ・マウイ島のカパルア・プランテーションコースで行なわれ、ハリス・イングリッシュが優勝。
チリの期待のホープであるホアキン・ニーマンをプレーオフで下し、ツアー3勝目を飾った。
「本当に素晴らしい!今週はずっといい位置をキープできていたけど、こういうチャンスはそうそうあるわけじゃない。ツアーで勝つのは本当に大変なことだけど、今週はショットもパットもずっとよかった」
彼は昨年、コロナによるツアー中断再開後にツアーで5人目の陽性者になった選手。
戦線離脱しながらもツアーエリート30人のみが出場できる最終戦「ツアー選手権」に出場し、普段は優勝者だけしか出場できない今大会にも特例で参戦。
昨年はコロナの影響で試合数が激減し、優勝者が少なくなったため、今年に限って「ツアー選手権」出場者にも枠を広げたおかげで、イングリッシュは出場できたのだった。
「セントリートーナメント」ではショットが好調だったイングリッシュ。
スランプ脱出のきっかけはコロナ隔離
彼は、2016年まではツアーで活躍していたが、2017年以降3年間はスランプに陥り、シード権を確保するのも困難な日々が続いた。
だが、彼は自宅のあるジョージア州シーアイランドに住むマネージャー、コーチ、トレーナーたちとチーム一丸となって、もう一度復活し、優勝争いを目指して団結。
ちょうど昨年、コロナに感染し、自宅隔離していた8週間という時間を利用して、一生懸命にトレーニングを積み、体を作り上げ、心・技・体を見直す時間に充てた。
その結果、正しい体の使い方やスイング作りにじっくり取り組むことができ、自信を取り戻せたのだと言う。
そのおかげでツアー復帰後はほとんど予選落ちなし。
秋から昨年末にかけての試合では、何度もトップ10入りを果たし、年末の「QBEシュートアウト」(ツアー非公式)ではマット・クーチャーとタッグを組んでチーム優勝。
そして年明け早々、今大会で7年ぶりの優勝を遂げることができた。
「調子を取り戻すために試行錯誤を繰り返していると、そこから抜け出すまでが本当に大変。ツアーの仲間たちと賞金をかけて戦いながら、自信を取り戻すには時間が必要なんだ。でも、ラウンドを積み重ねているうちに突然自信を持てるようになり、スランプの山を克服して優勝できたよ」
彼の今後の目標は、今年ウィスコンシン州ウィスリング・ストレーツで開催される「ライダーカップ」に出場すること。
大学時代からチーム戦が好きだと言う彼が、スティーブ・ストリッカー主将率いる強豪揃いのアメリカ選抜チーム入りを果たし、どのように戦うのかが楽しみだ。
最終成績
優勝 | −25 |
ハリス・イングリッシュ
|
2位 | −25 |
ホアキン・ニーマン
|
3位 | −24 |
ジャスティン・トーマス
|
4位 | −23 |
ライアン・パーマー
|
5位 | −21 |
ザンダー・シャウフェレ
イム・ソンジェ |
7位 | −20 |
ブライソン・デシャンボー
ジョン・ラーム コリン・モリカワ |
10位 | −19 |
ダニエル・バーガー
|
– | −4 | 松山英樹 |
1日200人の観客がコロナ流儀で観戦
18番グリーン周りにだけ、人数を絞って観客を入れた。
「アロハクラブ」と称する観客エリアでもソーシャルディスタンスを守るよう、告知がされている。
マウイ島で開催される「セントリー・トーナメント」はハワイ、しかも離島での開催のため、もともと観客が少ない大会だが、今年は18番グリーン周りにだけ1日200人限定で観客を入れて実施した。
PGAツアーで有観客で実施した試合は、昨年の「ビビント・ヒューストンオープン」に続き、今大会で2試合目。
観客はコース内を歩くことは許されず、「アロハクラブ」として指定されたエリア内のみで観戦が可能で、通常はこのエリアには大きなスタンド席が建てられるが、今年は椅子を貸し出し、芝生の上での観戦となった。
ソーシャルディスタンスやマスク着用など、コロナ時代の流儀を守って安全に、快適に選手たちに声援と拍手を送っていた。
なお、コース内はツアー関係者や家族(1人につき2名まで)、報道陣が選手について歩くことが許されたが、ツアーで最も歩くのがタフなコースをマスク着用で歩くのも、高地トレーニング並みに苦しかった。
パターの芯に当たったのは救い─松山英樹
カパルア・プランテーション11番ホール(パー3)の松山のティーショット。
多くの選手が初日からスコアを伸ばす中、特にパットに苦しみ、オーバーパーのスコアが先行した松山英樹。最終日は1イーグル、6バーディ、3ボギーの68をマークしたが、最下位に沈んだ。
「(最終日は)パッティングが芯に当たったという感じで、その後何ホールか入ったのが救いかな、と思います。
ショットはあまり良くなかったけど、最後(18番)のティーショットでは4日間で一番いい球が打てたし、ああいうスイングができれば……。
まったくもっていいところがなかったけど、最終ラウンドでやっとパターが芯に当たったので、それはよかった。
まぁ、この順位だし、バーディを取ってもほぼ1オンとか2オンできるところでのバーディなんで、あまり嬉しくないですよね」
短いパットを外して悔しい表情を浮かべる松山。
ついに米ツアー取材再開!
O嬢日記 in Hawaii
コロナの影響で、ツアーはメディアの人数を絞っている上、国境をまたぐ、海外からのメディアはなかなか思うように取材に行けないのが現状だ。
ソニーオープンでメディア向けに支給されていた「コロナ対策グッズ」。除菌シート、マスク、消毒スプレーなどが入っていた。
メディアセンター内も一人につき1つの机を割り当てられ、隣の人との距離を十分取っている。
メディアセンター内での食事は、一人一人小分けにされ、衛生的な状態で支給される。
昨年3月の「アーノルド・パーマー招待」の取材以来、初めてPGAツアー取材に出向いた。
過去20年以上、ほとんど毎月のようにPGAツアーやメジャーの取材で海外に出向いていた私にとって、10ヶ月間のブランクは本当に長かった。
コロナ以降、ツアー側はメディアの人数を普段よりもかなり絞り、メディアセンター内に入れる人数も少数に限っているため、なかなか私のような海外メディアの取材申請が通ることはない。
だが、日本から比較的近いハワイ2試合に関してはラッキーにも取材が許可され、ようやく取材に出かけられたというわけだ。
話には聞いていたが、メディアセンター内はテーブル一つに一人が座り、広いスペースの中でソーシャルディスタンスがしっかり取られているため、安心ではあるが、逆にいえば、それだけ取材に来ることができるメディアの人数が少ないということ。
今後もこの状況は当分続くだろうが、まだまだ気軽に取材に行ける状態ではないことを実感した。
また、PGAツアーのロゴ入り除菌シートは、マニアにとっては垂涎の品だろうが、必要なだけ入手することができ助かった。
選手へのインタビューに関しては、距離を取りながらマスク着用で決められた場所で行なわれていた。
おそらくコロナ中断明け直後はもっとピリピリした感じがあったのだと思うが、今ではちょっとした世間話などであれば、マスクを付けた記者たちは選手やキャディといつも通りにしている雰囲気だった。
マスク越しなので、自分を認識してくれるだろうか?と恐る恐るだったが、意外と選手たちはすぐにわかってくれて、試合中でも手を振ったり、グータッチで迎えてくれた。
特に、愛しのアダム(スコット)とは久しぶりに再会でき、話せたことも嬉しかった。
こうしてコロナ時代のツアー会場に来てみると、いかに昔は選手やキャディたちとの距離が近かったか、ということを実感させられる。ハグや握手で交流し、たわいない会話をしていた時代に戻って欲しいと願うばかりだ。
Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/PGA TOUR、Stan Badz