2020年全米プロチャンピオン
コリン・モリカワを育てた自由発想のゴルフコース
プロ転向後2年目にして、初メジャー優勝を「全米プロ」で飾った日系米国人のコリン・モリカワ。
彼がゴルフを覚えたカリフォルニアのゴルフ場は9ホールだが、10個のグリーン、36個のティーグラウンドのある独創的なコースだった。
コリン・モリカワ(米国)
1997年2月6日生まれ。カリフォルニア州ロサンゼルス出身。カリフォルニア大学バークレー校出身。アマチュア時代から活躍し、2019年プロ転向。2020年「全米プロ」でメジャー初優勝。ツアー通算4勝。
シェビーチェイス・カントリークラブ
Chevy Chase Country Club
クラブハウスから見た風景。樫の木や、ヒノキ、スズカケの木などでセパレートされた狭いフェアウェイが特徴。ショットの精度が試される。
1927年にオープンしたシェビーチェイスCC。
9ホールのメンバーコースで、ロサンゼルス市街から車で20分ほどの場所にある。
モリカワのルーツは9ホールのコースにあった
「全米プロ」で優勝した後に、シェビーチェイスをガールフレンドと一緒に訪れたモリカワ。左端は以前、同コースのティーチングプロであり、モリカワのコーチを務めるリック・セシングハウス氏。
ロサンゼルス近郊に、「全米プロ」チャンピオンのコリン・モリカワがゴルフを覚えたコースがある。
「シェビーチェイスCC」というメンバーコースだ。
ここは9ホール(パー67)のコースなのだが、ティーグラウンドの数は36個、グリーンは10個あり、その日のセッティングによって違った顔を持つコースを楽しめるという非常にユニークなゴルフ場なのだ。
モリカワには8歳からコーチのリック・セシングハウス氏がついているが、彼はもともとシェビーチェイスのインストラクター。
2008年には南カリフォルニアでティーチャー・オブ・ザ・イヤーに輝いたこともある。
「私たちはいつもコースを回りながら、いろいろなシチュエーションを考えていたんだ。私はショットや状況を分析する担当で、彼は想像力を働かせる担当。彼は小さい頃にすでにそういうことができていたんだ」とセシングハウス氏は「サンフランシスコクロニクル」紙の記者に語っている。
セシングハウス氏と一緒にコースを回る時もあるが、基本的にはモリカワ1人でシェビーチェイスをプレーし、独学でゴルフを学んだと言う。
彼は予選落ちの少ない、安定感のあるプレーヤーだが、彼の正確なショットや、どんな場所からでもピタリと寄せるアプローチなどは、ここで練習したからこそ育まれたもの。
木々でセパレートされた狭いフェアウェイが特徴のシェビーチェイスで、幼少の頃から想像力を働かせて様々なショットを打ち分ける練習をしてきたのだ。
モリカワの最大の長所は「アイアンショット」だが、このコースからはいかにアイアンショットをコントロールするか、について学んだという。
また、セシングハウス氏は「コリンはいかに1打1打から学ぶことが大切かを知っていました。打ったショットから何を学べるのかを知りたがったんです。彼はゴルフコースを見、自分の能力の範囲でそのコースをどう攻めればいいのか作戦を考えることができました。自分の力以上のことはしようとせず、自分の能力に応じた攻め方でプレーするんです」と語っている。
9ホールのコースを9ホール以上のバリエーションを持ったコースとして使えるシェビーチェイスの自由な発想が、モリカワのような発想力豊かで、ショットメーカーのメジャーチャンピオンを生み出したと言える。
ゴルフをするだけの場所ではないシェビーチェイスの新たな提案
シェビーチェイスCCは、「アメリカン・フットゴルフリーグ」の総本部でもある。9ホールには、直径53センチのカップも切ってあり、フットゴルフを楽しめる。
シェビーチェイスはメンバーコースだが、レストランやバーは一般にも開放しており、結婚式やクリスマスパーティなどのイベントも開催可能。
ユニークなゴルフ場の活かし方
シェビーチェイスCCは9ホールの「ゴルフ場」という一面だけではなく、「フットゴルフ場」としても知られている。
9ホールのフットゴルフはサッカーとゴルフがミックスしたスポーツで、50センチ超のカップにサッカーボールをできるだけ少ない回数で入れることを競うものだ。
なお同コースは「アメリカン・フットゴルフリーグ」の本拠地となっており、全米で100コース以上、フットゴルフが楽しめるコースがあるという。
コロナ禍において、他人との接触を防いで楽しめるゴルフが注目されているが、シェビーチェイスではゴルフだけでなく、フットゴルフも楽しめる。
メンバーを大切にし、人々の交流を重んじる、アットホームなメンバーコース「シェビーチェイスCC」。
コロナ禍で激減している人との交流の場を提供することにも一役買ったようだ。
また最近、ゴルフ離れを食い止めようと、時短プレーが可能な9ホールのゴルフが推奨されているが、そうした時代の流れにも適している。
Text/Eiko Oizumi
Photo/Victor Boghossian Photography、PGA of America