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【PGAツアーレポート】ゴルフ界の「アイスマン」パトリック・キャントレーが今季4勝目

2020~2021年フェデックスカップチャンピオン

ゴルフ界の「アイス    マン」パトリック・キャントレーが今季4勝!

総合優勝


©Getty Images

Patrick Cantlay
パトリック・キャントレー(米国)
1992年3月17日生まれ。カリフォルニア出身、フロリダ在住。今季は「ツアー選手権」など4勝を挙げ、ツアー通算6勝。いつも冷静沈着な彼に「BMW選手権」から「パティアイス(氷のパティ)」の愛称が付けられた。趣味は映画鑑賞とピンポン。

暗い闇を脱出した「氷のパティ」が歩み始めた陽の当たる道

©Getty Images

最終日、9番ホールで大勢のギャラリーを背にアプローチショットをするP・キャントレー。

©Getty Images

1打を争う優勝争いを演じ、1打差の2位でホールアウトしたジョン・ラーム(左)。P・キャントレーと互いの健闘を称えあった。

年間王者が決まる最終戦の大きなプレッシャー

新型コロナウイルスの影響で、前シーズンに延期となった試合が追加開催された2020~2021年のPGAツアーシーズン。
通常よりも試合数が多く、長い1年となったが、そのロングシーズンを戦い抜き、「フェデックスカップ」の総合優勝に輝いたのは、常に冷静沈着な男、パトリック・キャントレーだった。

「(最後の)2週間に渡って首位に居続けることができたのは、素晴らしい経験だったが、ようやく戦いも終わり、ホッとしている」

「長い1年だった。たくさん試合があったし、すごく疲れたよ。とにかくプレッシャーのかかるゴルフをたくさん経験したからね。でも総合優勝できて本当に嬉しいし、自分を誇りに思う」

最終日はジョン・ラームとの一騎討ちの様相を呈し、最終ホールまで1打を争う激闘を繰り広げた。
2019年以降は、「ツアー選手権」で優勝した選手がすなわち「フェデックスカップ」総合優勝者となる仕組みに変更されたため、「ツアー選手権」で勝つかどうかは、その試合に勝てるかどうか、ということだけでなく、さらに、年間王者となり、約16億円のボーナスをゲットできるかどうか、ということもかかってくる。
だから、最終ホールを迎え、1打差という展開は、1年間の試合の中でも、もしかしたらメジャー以上に痺れるものなのかもしれない。

キャントレーがラームに1打差をつけ、リードしていた最終ホールで、双方バーディフィニッシュ。キャントレーが1打差で辛勝した。
今季、複数回優勝している選手は何人もいるが、4勝を挙げた選手は彼1人。
2016~2017年にジャスティン・トーマスが5勝を挙げたが、4勝した選手はそれ以来初である。
今回の優勝で世界ランク4位に浮上した。

背中のケガと親友の事故死で人生のどん底に

パトリック・キャントレーはアマチュア時代から大活躍し、その名を馳せてきたエリートだ。
2011年「全米オープン」と2012年「マスターズ」ではローアマに輝き、世界アマチュアランキングにおいて55週連続で1位の座に君臨。
鳴り物入りで2012年にプロ転向を果たした。だが、2017年の「シュライナーズホスピタルズ・フォー・チルドレンオープン」までツアー初優勝はお預けだった。
将来有望だった彼に一体何が起こったのか?

2013年「チャールズシュワブチャレンジ」(当時のクラウンプラザ・コロニアル)に出場していた彼は第2ラウンド直前の練習中、背中を斬りつけられるような痛みを感じ、その大会を棄権した。
そして翌年の「バイロン・ネルソン選手権」まで約1年間、治療のため戦線離脱している。
ツアー復帰後も背中は回復せず、同年はわずか5試合しか出場できなかった。

その後も彼には数々の試練が続いた。
背中の痛みは完治せず、出場試合数は、2015年は1試合、2016年はゼロだった。
そんな彼は、さらに人生のどん底に突き落とされるような悪夢に見舞われる。

親友でキャディだったクリス・ロス氏がひき逃げ事故に遭い、死亡するという悲劇が起きたのだ。
ようやく2017年から試合に出られるという矢先に、心の支えとしていた大事な親友であり相棒の死。
その衝撃はとてつもなく大きく、2016年の残りの日々を心身の立て直しに費やした。

2017年には13試合に出場。
全ての試合で予選通過を果たした。また、待望のツアー初優勝を11月の「シュライナーズ」で飾り、ようやく陽の当たる道を歩み始めたのだった。

2019年には「メモリアルトーナメント」で2勝目を飾り、2020年10月の「ZOZOチャンピオンシップ@シャーウッド」で3勝目を達成。
今年は「メモリアル」「BMW選手権」「ツアー選手権」で3勝を飾っている。

「僕はある時、人生のどん底を経験した。だが、こうして暗い時代を過ごしてきたことで、人間として成長していると思うし、広い視野を身につけられたと思う。今の自分がいるのも、そういうことを経験したからこそ。今までの努力が報われて最高に嬉しい」

自分を掻き立ててきたものは、賞金ではなく、試合で勝つこと。
プレッシャーを感じながら、世界の強豪と優勝争いし、勝つ。
普段から熱心に練習しているのも、勝つためだ、と語る。

個性が確立し始めファンが注目

「パティアイス」とは「BMW選手権」から付けられた新しいニックネームだ。
冷静沈着で、表情に出すことのないクールな男。
「BMW選手権」ではブライソン・デシャンボー、「ツアー選手権」ではジョン・ラームと、感情の起伏の激しい熱い2人との対照的な対決が2週連続で行なわれたことで、キャントレーの氷のような地味キャラも、ファンたちから愛すべきものとして認識され始めている。
ちょうどこの雑誌が発売される頃には「ライダーカップ」も終了しているが、きっと会場内では「パティアイス」と叫びながら応援するファンたちが急増しているに違いない。
辛い過去を引きずってきたアイスマンの努力が、ようやく報われる時がきたのである。

フェデックスカップ最終ランキング

1位パトリック・キャントレー
2位ジョン・ラーム
3位ケビン・ナ
4位ジャスティン・トーマス
5位ビクトル・ホブラン
ザンダー・シャウフェレ
7位ブライソン・デシャンボー
8位ダスティン・ジョンソン
9位エイブラハム・アンサー
ビリー・ホーシェル
14位ローリー・マキロイ
セルヒオ・ガルシア
20位ジョーダン・スピース
26位松山英樹
コリン・モリカワ
30位ブルックス・ケプカ
70位フィル・ミケルソン

Photo/Eiko Oizumi, Getty Images,PGA TOUR, USGA, PGA of America

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