EMIRATES GOLFCLUB エミレーツゴルフクラブ
●設計:カール・リッテン ●全長:7301ヤード・パー72(パブリック)
●備考:1988年にオープンした中東初の芝生のゴルフ場。マジリスコースの他に、ファルドコース、パー3コースあり。コースレコードは1994年にアーニー・エルスが記録した61。「Slync.ioデザートクラシック」開催コース。
地下資源の少ないドバイを変えたゴルフ産業
エミレーツゴルフクラブの開発は元々、当時国防大臣で現在はドバイの首長であるシーク・ムハンマド氏の発案だった。他の首長国や湾岸諸国と比べると、ドバイの石油・ガス資源は少なかったため、世界中からビジネスを誘致する方法として、ドバイは単に砂漠だけの地ではないと高官たちを説得。ゴルフを利用しようとしたのだ。シーク・ムハンマド氏は1986年、エミレーツGCの建設を提案した。
私は1987年にこのコースの建設が開始された時から、世界で最も有名なコースの一つに成長していくまでを見てきた。シェイク・ザイード・ロード沿いのこのコースは、アラビア湾からちょうど1キロのところにあり、現在はドバイマリーナと住居が立ち並ぶ島との間に挟まれた場所にある。
ゴルフはドバイの発展に大きく貢献し、毎年プロの試合に何百万人もの観光客を呼び込んでいる。第1回「ドバイ・デザートクラシック」が1989年にエミレーツGC・マジリスコースで開催され、それ以来毎年行なわれてきた。
エミレーツGCは、世界のトッププロたちの技術を試す、最高のコースとみなされており、見事なアラビア調のクラブハウスは、依然としてドバイの象徴的な建物の一つだ。エミレーツGCには現在、18ホールのファルドコースもあり、照明設備もあるのでナイターゴルフも可能。2021年には「トップゴルフ」がエミレーツGCの敷地内に開設され、地元の人に新たなゴルフの楽しみ方を提供している。
レジェンドたちがプレー
マジリスコースの魅力
だが、誰もがプレーしたいと思っているコースは、前述のマジリスコースだ。ここでは、セベ・バレステロスやアーニー・エルス、タイガー・ウッズ、ローリー・マキロイ、セルヒオ・ガルシア、ブライソン・デシャンボーといったチャンピオンたちが過去、プレーしたことがあるが、それだけこのコースのクオリティは高い。
マジリスコースで楽しいのは、ほとんどのホールでバーディチャンスがある点にある。短いパー3の4番ホールは、見かけによらずトリッキーなホールだが、このグリーンは最近改修され、さまざまなピンポジションが可能になった。中でも右奥のピンポジはとても難しい。
パー3の7番ホールは、大きな池越えの壮麗なホールだ。7番ホールを終えると、ゴルフ界で最も象徴的な景色の一つへとたどり着く。8番ホール・パー4は中東で最も写真撮影されているホールだ。1987年に私が初めて撮影したときと現在とを比べると、その差は歴然としている。なだらかな右ドッグレッグで、グリーンはこの地域で海面から最も高い位置にある。王様のマジリスの横だ。ミスして右や左に行くと、砂地獄が待ち構えている。
このゴルフ場には真っすぐなホールは少なく、18番ホールも例外ではない。このロングホールは、ティーグラウンドからいかに飛ばすか、がすべて。飛ばし屋やプロたちはショートカットして木越えを狙うが、成功すればとても多くのご褒美が待っている。
私が選手だったら、このコースを世界のベストコース・トップ10に選ぶだろう。また、ゴルフ写真家から見ても、このコースがナンバー1になるのは必定だ。コースを設計したカール・リッテン氏は、ゴルフ写真家のためにコースを設計したといってもいいほど美しいコースなのである。
Photographer
デビッド・キャノン(イギリス)
海外メジャー100大会以上を取材し、現在も第一線で活躍中のゴルフフォトグラファー界の巨匠。自身もシングルハンデの腕前で、息子はプロゴルファー。アメリカ、ヨーロッパ、中東、オーストラリア、アジアと世界各国を股にかけて撮影している。Getty Images所属。