Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/Asian Tour
先週、「〜全英への道〜ミズノオープン2022」で国内男子ツアー3勝目を挙げたジンバブエのスコット・ビンセントが、イギリスで初開催されたアジアンツアー「インターナショナルシリーズ・イングランド」でアジアンツアー初優勝。日英で2週連続Vを遂げ、優勝賞金36万ドル(約4700万円)を手にした。
ビンセントは2015年にプロ転向後、2016〜2018年にはアジアンツアーを転戦し、2位を5回経験していたが、優勝の経験はなかった。その他、アフリカやカナダなど世界各地でプレーし、2018年にはジンバブエ代表として「ISPSハンダ・ワールドカップ」に出場。2021年には「東京五輪ゴルフ」にも出場した。世界を股にかけて戦うビンセントだが、2019年からは日本を主戦場に、腰を据えて本格参戦。2019年にはABEMAツアー「LANDIC CHALLENGE7」で初優勝し、2020年〜2021年には「Sansan KBCオーガスタ」でレギュラーツアー初優勝。そのわずか2週後の「ANAオープン」でツアー2勝目飾った。
そして今年は「ミズノオープン」で優勝し、子供の頃からの夢だった「全英オープン」出場をも決めた。そんな嬉しい優勝直後にイギリスに乗り込んだビンセントだったが、予期せぬドタバタ劇があった。
優勝直後の日曜日の夜に、イギリスに向けて出発した彼は、ヘルシンキ、アムステルダムを経由し、24時間かけて到着したものの、クラブが届かなかったという。火曜日はとりあえず、ヤーデージメモを見ながらコースを歩いてチェックするだけ。なんとかその後、クラブも無事到着した。
日本とイギリスは8時間の時差があり、時差ボケを解消するのも一苦労。だが、そんなことでめげることなく、初日から69、68、69と連日60台をマーク。最終日は7バーディ、1ダブルボギーの66を叩き出し、3日目を終えて首位に立っていたオーストラリアのトラビス・スミスを1打差で逆転した。
「すばらしい!私がプロ転向後、初めてプレーしたアジアンツアーで、初優勝を遂げることができて嬉しい。ここまで長かったような気もするが、自分のゲームが正しい方向に向かって前進しているということだ」
最終日の3番ホールではダブルボギーを叩く場面もあったが、「あそこはすごく変なホールだった。でもあんなスタートを切って、チャンスを逃すのも嫌だから、すぐに気持ちを切り替えて、まだまだ残りのホール数がある、と思ってプレーしていた。後半はバーディがたくさんきて、とてもエキサイティングな展開になった。すごく我慢強くプレーしなければならなかったし、目の前の1打に集中したよ」とコメント。「なぜ、日本とイギリスでこんなに環境が違うのに、2週連続で調子がいいのか?」と聞かれると、「ただ我慢強くプレーしているだけだよ」とニコリ。
最近は、普段キャディを務めているケルシー夫人が4月に長女ゾーイちゃんを出産し、育児休暇をとっているため、2連勝には立ち会えなかった。だが、この後もう1試合、ロンドン郊外で開催される話題沸騰の「LIVゴルフインビテーショナル」に出場してから、妻のいるアメリカ・コロラドに帰るという。
「7月の全英オープンまでは、アメリカでゆっくりしていると思う。早く家族に会いたいね。その後のスケジュールは決めていないけど、8月の日本プロには戻ってくるつもり。将来、PGAツアーでプレーしたいし、メジャーにもたくさん出たいね」
ビンセントの世界進出は、まだ始まったばかりだ。