• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 【ゴルフ上達のメンタル法】vol.9「自分の能力の範囲内で賢...

【ゴルフ上達のメンタル法】vol.9「自分の能力の範囲内で賢くプレーすればスコアアップできる!」

ゴルファーのバイブル『禅ゴルフ』のジョー・ペアレントが『ゴルフ・グローバル』の読者のために特別寄稿!

今回のテーマは「自分の能力の範囲内で賢くプレーすればスコアアップできる!」。

ショットの調子は悪くないが、なぜかスコアがまとまらない……
そういう人は一度、クラブ選択やコース攻略について考えてみよう。
パー5のティーショットだからといって、必ずしもドライバーを握る必要はない。
そのホールが要求する攻め方ができているかどうかがスコアメイクのカギとなる。

Joe Parent
(ジョー・ペアレント)

過去、ビジェイ・シン、デビッド・トムズ、クリスティ・カーら男女有名米ツアー選手のメンタル面をコーチ。著作にベストセラー『禅ゴルフーメンタル・ゲームをマスターする法』などがある。米国『ゴルフ・ダイジェスト』誌で世界のトップ10に入るメンタルゲーム専門家に選ばれ、何千人ものあらゆるレベルのゴルファーを指導。公式HPは、drjoeparent.com

コースマネジメントや気持ちの切り替えでスコアはまだまだよくなる

Illustration/Masaya Yasugahira

Illustration/Masaya Yasugahira Photo/Eiko Oizumi

次のショットまでにどんなショットを打つかを考えておく

「もし、打つ前にいつもコース戦略を考えていたら、そして常に自分の能力の範囲内でプレーしていたら、何打節約できたか自問してみなさい」―ジャック・ニクラス

「コースマネジメント」とは、各ホールで各ショットをどのように打つかを考えることで、どこに打っていくかを考え、クラブを選択し、ターゲットにボールを運ぶためにはどのようなショットを打てばいいか、を考えることである。
これには、ライ(ボールのある地点周辺の芝や地形の状況・状態)、風の影響や高低差の計算、コース上のペナルティエリアの位置などが含まれる。
また、ラウンド中の思考や意思決定の過程のマネジメントや感情のコントロールの仕方も含まれる。
ここでは、「コースマネジメント」を向上させるためのヒントをいくつかご紹介しよう。

パー3ホールで刻む勇気とイマジネーション

「コースマネジメント」の基本として、私は1953年に出版されたトミー・アーマーの著書「How to Play Your Best Golf All the Time(常に最高のゴルフをする方法)」の中の次の教えが好きだ。

「最も得意なショットで、次のショットが最も打ちやすい場所に打つこと」

まず、自分が最も打ちやすいクラブとショットの種類を選ぶ。
次に、コース上で次のショットが最も打ちやすい場所を見つけて、そこに向かって打っていくのだ。
そのくらいシンプルなことなのだが、それにはいつもとは違う決まりごと、あるいは考え方が必要だ。
違う視点で物事を見ることで、クラブやショットの種類の選択肢は劇的に増え、どんなボールを打っていくかをイメージする創造性もはるかに豊かになる。

それは、パー5ホールでティーショットをアイアンで打つことを意味するかもしれない。
あるいはグリーン周りで、特にカップの近くにバンカーやペナルティエリアがある場合、あえてカップから遠い場所に打っていくことかもしれない。
しかし、このゲームプランに忠実であれば、スコアカードに大叩きのスコアを記すことは少なくなるはずだ。

最高のゴルファーの一人であったトム・ワトソンは、「パー3で(ワンオンを狙うのではなく)刻むのは勇気がいることだ。しかし、それがその状況下では最も賢いプレーかもしれない」と述べている。

ビリー・キャスパーは、1959年にウィングドフットGCで開催された「全米オープン」で優勝したが、グリーンが非常に硬く、グリーン奥にいくとトラブルになるタフで長いパー3ホール(3番ホール)で彼の想像力が生きたことが幸いした。
大会中の4ラウンドとも、この220ヤードの3番ホールで、彼は(決してグリーンオーバーさせたくないため)グリーンの手前に刻んで、競争相手を困惑させた。そして、毎日そのホールでパーを取り、優勝したのである。

ティーイングエリアを左右に歩いてみて、直感でしっくり来るところにティーアップしてみよう。

©Getty Images

今年、「WMフェニックスオープン」でツアー初優勝した世界ランク1位のスコッティ・シェフラー。写真はTPCスコッツデールで最も有名な16番パー3。持ち球や風向き、ピンの位置などを計算して左のティー付近からグリーンを狙っている。

ティーアップする場所を決めるときの考え方

2つのティーマークの間の、どこにティーアップするのか理想的な場所を決めるのに、一般的に教えられている法則がある。
右利きのゴルファーの場合、持ち球が(あるいはそこのホールで打とうとしている球筋が)フェードボール(左から右に曲がる球筋)の場合は、ティーイングエリアの右側にティーアップし、ドローボールを打つ場合は、やや左寄りにティーアップする。

だが、単純にこの法則に従うのではなく、自分ができるだけ気持ちよくティーショットを打てるように、自分の直感に従おう。片方のティーマークからもう片方のティーマークへ、ショットの落下地点を眺めながらゆっくり歩いてみよう。
一歩一歩、景色を見ながら多少なりとも安心だと感じる度合いを意識してみよう。
目線と直感が一致したとき、自信を持って心に決めたショットをするために、自分にとって最も打ちやすいティーアップスポットを見つけたことになる。

時折、ティーショットするのに自分の目線にしっくりこないホールもあるかもしれない。
ホームコースでさえも、あり得る。
マークとマークの間のどこにティーアップしてもしっくりこないのだ。そのような状況では、狙いを定め、どんなショットをするかを決めるのは容易ではない。
どんなショットをしたいのかを決め切れないから、思い通りにスイングするのは難しいし、不安定なショットになる。
そんなことでは、次回、その場所からのティーショットで不安が増すばかりだ。

もっと気持ちよくショットできるように、お気に入りのティーイングエリアに立っている姿を想像してみよう。
ほとんどいつも、自信を持ってナイスショットできるティーだ。
ボールの後ろに立ち、フェアウェイのどこにボールを落としたいかを決め、お気に入りのティーからプレーしたときに放つ自分の弾道で打てるよう、狙いを定める。
アドレスした後は、もうフェアウェイの方は見ないようにしよう。
自分が打ったショットが希望通りの場所に落下する、そのフェアウェイがあることを想像すること。そしてまるで自分がそのホールを本当にプレーしているかのようにスイングしてみよう。

このテクニックを使えば、より思い通りに、自信に満ちたスイングができるようになり、どこでプレーしても、良い結果を残せるようになるだろう。

真っすぐ打っても、曲がってもトラブルになりにくい狙い方

フェードやドローを打とうとするゴルファーの多くは、フェアウェイ横のラフからフェアウェイに向かってボールが曲がってくることを想定し、その方向を狙っている。
そうすることで、万が一、彼らが期待した小さなフェードが大きなスライスに変わったとしても、 十中八九フェアウェイを確保することができると考えるからだ。

しかし、打ったショットがたまたま真っすぐ飛んで、狙ったところにそのままダイレクトに飛んだとしたらどうだろう。
そんなにいいショットがラフに入ってしまうなんて、なんて悲しいことだろうか!

また一方で、真ん中を狙って真っすぐ打とうとする人もいるが、フェードやドローがかかり過ぎると、これもフェアウェイから外れてしまう。
どちらの方がマシか、を選ぶだけの話だ。そこで、両者の長所を生かした〝いいトコ取り〟の代替案を紹介しよう。
ボールが曲がることをイメージしている側のラフの端(ドローならフェアウェイの右のラフの端、フェードならフェアウェイの左のラフの端)から、フェアウェイの幅の3分の1くらい横の場所に視線を移動させてみよう。
そこを目標に据えるのだ。ボールが予想通り曲がれば、フェアウェイの3分の2が使えることになるし、もしボールが真っすぐ飛んだとしても、フェアウェイをキープすることができる。
少し予想外の方向に行ってしまったとしても、数ヤードの余分なスペースがあるので安心だ。
ボールがどの方向にハネたとしても、フェアウェイの幅の中で余裕を持たせているので、もっと自信を持って、思い通りにスイングすることができるようになるのだ。

タイガー・ウッズには怒っても「10ヤード」歩いたら忘れるルールがある

©Getty Images

ショットでミスをして怒りを覚えても、10ヤードを歩いたあとは次のショットに気持ちを切り替えるというタイガー・ウッズ。次のショット地点に辿り着くまでのウォーキングタイムは、気持ちのリセットタイムだ。

©Getty Images

タイガーもショットでミスをすれば怒りも覚えるし、ガッカリする。次のショットに持ち込まないのが一流。

タイガーも実践する感情コントロール術とは?

ミスショットに動揺するのは理解できるし、その後の数秒間の感情も、実は問題ではない。
問題は、その感情を引きずること。
次のショットに悪影響を与え、悪いプレーの負のスパイラルに陥ってしまうのが問題なのだ。

腹を立てても、その後それを乗り越えればいい。
タイガー・ウッズには「10ヤードルール」がある。
それは、ショットに腹を立てるのはいいが、腹を立てていいのは次のショットに向かって10ヤード歩くまでの間だけ。
それ以降、そのショットのことは忘れて、目の前のショットだけに集中する、というもの。
以下にタイガーのもう一つの悪いショット克服法をご紹介しよう。

ミスショットに対する激しい気持ちの反応(怒りなど)が収まったら、深呼吸を1、2回する。
そして息を吐き出すとき、ネガティブな感情が吐き出されるイメージを持ち、そのエネルギーをポジティブな方向に使うようにもっていくのだ。
前のショットでやりたかったスイングが出来るようになるまで、素振りを1~2回行なう。
その時に感じるいいショットと悪いショットのフィーリングの差によって、次のショットの最高の準備をするために、何をすべきかを知ることができる。

この「ショット後のルーティーン」は、悪いショットを断ち切るために、2つのメリットがある。

❶悪いスイングではなく、良いスイングの感覚を持つ

❷負の感情から、次にナイスショットするために何をしたいかというポジティブな感情に向ける

以上、コースマネジメントと感情マネジメントのコツを押さえれば、最高のプレーができることが増え、プレーをより楽しめるようになり、もっといいスコアでプレーできるようになるのだ。

Illustration/Masaya Yasugahira  Photo/Getty Images

関連する記事