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【2020マスターズ大特集】2019年のタイガーウッズ優勝を振り返る「過去、 優勝するのが最も難し かった」

©Getty Images

タイガー・ウッズの復活優勝から1年。

今年のオーガスタは、どんなドラマが待ち受けているのだろうか?

「メジャーではもう勝てない」と言われ続けたタイガー・ウッズが劇的な復活優勝を遂げて早1年。

メジャー16勝目を再びオーガスタの地で達成するのか?

あるいは世界ランク1位のローリー・マキロイが、グランドスラムを今年こそ達成できるのか?

様々な想いが交錯するマスターズ。今年も早朝から目が離せない!

コロナウィルスの影響で第2次世界大戦以来の開催延期となった2020年のマスターズはどんな結末がまっているのだろうか?

©Getty Images

オーガスタナショナルの10番ホール。
ローリー・マキロイが2011年最終日にこのホールでトリプルボギーを叩き、首位から転落。

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クラブハウスの屋根裏部屋には、クロウズネスト(カラスの巣)と呼ばれる宿泊施設がある。
マスターズの週は、招待されたアマチュアのみが宿泊可能。チャンピオンズロッカールームは二人でシェアして使用。

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オーガスタナショナルGCの正門前に掲げられた看板。
MEMBERS ONLYの文字が眩しい。

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全選手のスコアを確認できる1番ホール脇のメインスコアボード。

Text/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images

2019 MastersReview

タイガー・ウッズ「過去、優勝するのが最も難しかった」

タイガー・ウッズの優勝で幕を閉じた2019年のマスターズを振り返る。

©Getty Images

二人の子供を始め、母クルチダさん、ガールフレンドのエリカ・ハーマンさんの前でついにメジャー15勝目を達成。歓喜に満ち溢れたタイガー・ウッズ。

タイガー、11年ぶりのメジャー優勝にオーガスタ沸く

昨年4月、灰色の今にも崩れそうな空模様の下、第83回マスターズでは、世界中の人々が立ち尽くすような(ゴルフ界は確実にそうであった)現実とは思えない物語が展開された。

タイガー・ウッズがメジャー15勝目、5度目のマスターズ制覇を果たしたのだ。

ウッズは、オーガスタナショナルGCでの最終ラウンドを2アンダーの70で回り、2008年全米オープン以来11年ぶりのメジャー優勝を飾った。

当時、左足の疲労骨折や、ほんの数日後にシーズンを終わらせるほどの手術を要した左ヒザの不調にも関わらず、ロッコ・メディエイトとのプレーオフを制した全米オープン以来の優勝である。

「最高の日曜日で、ゴルフにとって素晴らしい日だった」と、オーガスタナショナルGCおよびマスターズ委員長であるフレッド・リドリーは語った。

「マスターズの歴史の中でも特に素晴らしい一日だ」

ニクラスのメジャー優勝記録まであと3勝に迫るウッズ

最後の手段として「脊椎固定手術」を受けたものの、繰り返す腰痛のために2年間マスターズには出られなかったウッズ。

マスターズ優勝からは14年も遠ざかっていたため、関係者の大部分は、ウッズはもはや4大メジャーでは優勝できないと考えていた。

しかし昨年4月14日、ウッズはマスターズでもう一度グリーンジャケットに袖を通すこととなり、マスターズ6勝というジャック・ニクラスの記録にはあと1勝、彼のメジャー18勝の記録にはあと3勝と迫った。

この勝利でPGAツアー81勝となり、その時点で、サム・スニードの持つ歴代最高記録まであと1勝となったが、同年10月に日本の千葉県で初開催されたZOZO チャンピオンシップで優勝したことによりこの記録に並んだ。

43歳のウッズは、86年に46歳で優勝したジャック・ニクラスに次ぐ最年長マスターズ優勝者となった。

最終ホールはボギーであったが、ウッズは、72ホールを13アンダーの275で終え、世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンやザンダー・シャウフェレ、全米オープンに2勝し昨年の全米プロでウッズを僅差で破ったブルックス・ケプカと1打差であった。

97年は父に抱きしめられて祝福され、昨年は二人の子供の親として優勝を迎えたタイガー

©Getty Images

昨年はサム(長女)とチャーリー(長男)の二人の子供の前で初めてメジャー優勝を果たした父親を見せた43歳のタイガー。
母クルチダさん、ガールフレンドのエリカ・ハーマンさんも18番グリーン奥でタイガーを祝福。

強豪が崩れる中、完璧なプレーで逃げ切り優勝

日曜日は悪天候に備えて、マスターズの歴史上初めてティオフの時間が朝に前倒しされ、プレーヤーたちが1番ティと10番ティの双方からスタートしたが、この日、シャウフェレは、混戦のなかで首位を争ったプレーヤーの一人で、最終4ホールをパーで上がり68で終えた。

ジョンソンも68で終えたが、ケプカは、他の一握りのプレーヤーのように、パー3の12番ホールでミスショットし、勝利を逃した。彼はウッズにもっとプレッシャーをかけられただろうが、最終3ホールをパーでしか上がれず70で終えた。

パトリック・キャントレーが15番をイーグルで上がり、しばらく首位となったが、このカリフォルニア出身者は、16番と17番でボギーをたたいて脱落し、9位タイに終わった。

ウッズは完璧なプレーで、最終ラウンドの混戦から抜け出した。ケプカとイアン・ポールターが12番でクリークに打ち込んだ後、ウッズは、プレーイングパートナーで第3ラウンド首位のフランチェスコ・モリナリやトニー・フィナウが同じ失敗を犯すのを見ていた。

ウッズは12番をパーで手堅くまとめ、その後、13番、15番、16番でバーディを奪い、単独首位に立った。

カーヌスティでの18年全英オープンでウッズを下して優勝したモリナリは、15番で再びクリークに打ち込み、首位返り咲きの望みを絶たれた。

彼は2オーバーの74で終えたが、通算11アンダーの277で、フィナウ、ウェブ・シンプソン、この日のベストスコアに並ぶ67をマークしたジェイソン・デイとともに4者同スコアで、5位タイに終わった。

©Getty Images

1997年、メジャー初優勝をマスターズで飾った21歳のタイガーを父アールさんは抱擁して祝福。右はクルチダさん。

二人の愛する子供達の前で初めて見せた強い父親像

約50センチのボギーパットを沈めた後、ウッズは両腕を空に突き上げ、雄叫びをあげた。

それから、父親がメジャーで優勝するのを見たことのなかった2人の子ども、サムとチャーリーを抱き締めた。

このシーンは、97年の18番グリーン奥での祝福を彷彿とさせる。その時タイガーは、270の記録を樹立し、魅惑的なパフォーマンスを繰り広げた後、父親を抱き締めたのだ。

「(最後の)パットを決めたとき、何をしていたのかわからないが、何か叫んでいたのは確かだ」

と、ウッズはラウンド後にバトラーキャビンで語った。

「子どもを連れてきたが、歴史が繰り返しているような感じがしたよ。97年には父がここにいて、今、私が2人の子どもの父親になっているんだから」

ウッズの父、アールは06年に亡くなったが、息子が21歳で12打差で優勝し、オーガスタナショナルでの最年少優勝者となった最初の勝利を含め、彼が記録したマスターズにおけるこれまで4回の優勝を見ている。

ニクラスは早速ツイッター上で、ウッズに次のような祝福のメッセージを送った。
私から@TigerWoods!へ、本当に「よくやった」。彼や今回のゴルフの試合のことを誇りに思う。本当に素晴らしい‼

ウッズは今回のトーナメントを「過去、最も勝つのが難しかった試合だ」と語った。

そして、「難しさの上では本当に圧倒的。このような経験は現実とは思えない」と付け加えた。

Text/Dave Shedloski

デーブ・シェドロスキー(アメリカ)
過去、ジャック・ニクラスやアーノルド・パーマーの自叙伝などの著書も手がける。男・女・シニアと幅広く取材。

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