現在の自身の体の状態、今年の見通し、LIVゴルフなどについて、記者会見で語ったタイガー。
昨年、ゴルフの聖地セントアンドリュースで開催された「全英オープン」以降、試合にも出ず、「プレジデンツカップ」の会場にも姿を現すことがなかったタイガー・ウッズ。
5ヶ月が経過した12月に自らがホストを務める「ヒーロー・ワールドチャレンジ」に出場を期待されていたが、直前に足の痛みのため、欠場を表明。
タイガーの現在の状況や今年の見通しをレポートする。
タイガー・ウッズ(米国)
1975年12月30日生まれ。185cm、84kg。2019年「ZOZOチャンピオンシップ」を含め米ツアー82勝、メジャー15勝。2022年世界ゴルフ殿堂入り。
ヒーロー・モトコープCEO
パワン・ムンジャル氏(左)
昨年は、セントアンドリュースで開催される150回記念の「全英オープン」に出たいと早々に語っていたタイガーだが、大会中、足の痛みが悪化し、予選落ちを喫した。
タイガー、足底筋膜炎で試合を欠場
12月にバハマで開催されたPGAツアー非公式試合「ヒーロー・ワールドチャレンジ(以下、ヒーロー世界挑戦)」は、タイガー・ウッズの今後の選手人生の行方をゴルフファンに示すものとして期待されていた。
しかし、彼はまたしても体の不調が原因(足底筋膜炎)で、自分の財団のために毎年ホストを務めている本大会を欠場せざるを得なくなった。
彼の近い将来についてはまだ明言されていない。
46歳(当時)のウッズは、ローリー・マキロイと組んでジョーダン・スピースやジャスティン・トーマスと戦う18ホールの「ザ・マッチ」と、息子のチャーリーと組んで戦う36ホールの「PNC選手権」と併せて、3大会に出場する予定だった。
ちなみに2022年シーズンの彼は、「マスターズ」で4ラウンド、「全米プロ」で棄権するまで3ラウンド、「全英オープン」2ラウンド(予選落ち)と、わずか9ラウンドしかプレーしていなかった。
しかし「ヒーロー世界挑戦」に向けて準備を進めるうちに、ウッズは右足の足底筋膜炎という症状に悩まされることになった。
深刻そうに聞こえるかもしれないが、実はアスリートにはよくある症状で、長時間立ちっぱなしの人に多く発生する。
基本的には、足の裏にある帯状の組織の炎症である。
回復までに1~2か月間必要
足底筋膜炎には奇跡的な治療法はなく、ウッズが再びまともに歩けるようになるまでには、最大で2か月の完全な休養が必要になるかもしれない。
2023年はいずれにしても、軽めのスケジュールを予定していたが、そうなると少なくとも2つの彼のお気に入りのゴルフコースでの戦いは難しいかもしれない。
トーリーパインズGCで開催される「ファーマーズ・インシュランスオープン」と、自身がホストを務めるPGAツアーの試合で、リビエラCCで開催される「ジェネシス招待」だ。
「今の自分は悪循環に陥っている。試合前に十分な準備をするためには歩かなければならないが、ますますひどくなるんだ。足底筋膜炎で最もよくないのは歩くことだが、『ヒーロー世界挑戦』に向けて、足を万全な状態にしようと、どんどん歩いていたところ、悪化する一方だった。歩くのを止めなければならなかったんだ」
「おそらく1~2か月の休養が必要だろう。でも、リハビリの過程でそうなってしまった。綱渡りだよ。回復し、プレーできるようにするためにどれだけ頑張れるか、頑張りすぎて限界を超え、自分を後退させてしまわないか。この1年間、このように綱渡り状態だった。バハマのコースで歩く際のシミュレーションをしようと、ビーチを何度も歩いてみたが、あまりいい感じではなかった。ボールも打てるし、どんなショットでも打てる。ただ、歩けない。この1年間に何度か挫折を味わい、それでもどうにかプレーすることができたが、今回はどうしても無理だ」と元世界1位は語った。
米ツアー通算83勝達成に暗雲
メジャーのみ出場か?
今のところウッズは、さらに試合数を増やした時、体がそれに耐えられるかどうか確信が持てない。
PGAツアーであと1勝すれば、サム・スニードの記録を抜き、83勝というツアー最多勝利記録を達成することができる。
「メジャーだけは1~2試合、出場することが目標。体力的にはそれが限界だ。この脚でできることは限られているので、大きな試合に向けてギアを上げていき、奇跡が起きて、優勝争いに加われるといいね。勝ち方を覚えているといいのだが……。 でもまた、そこにいけるよう自らチャンスをつかむだけだ。今年(2022年)、「全英オープン」だけは出たいと思っていたが、まさかメジャー3試合に出場できるとは思っていなかった。あと2試合出場できたことは、大きなプラスになった」
ウッズは、カートの使用が許可されている12月の他の2大会には出場したが、彼の中のプロ精神が、PGAツアーの共催試合である「ヒーロー世界挑戦」でのカート使用を許さなかった。
「『PNC選手権』は、公認のシニアイベントだから、皆、ゴルフカートを使うことができる。そして、『ザ・マッチ』でもカートを使ってプレーするが、PGAツアーでは、カート使用は許可されていない。スタンフォード大学時代のチームメイト、ケーシー・マーティンは、ADA(障害を持つアメリカ人法)に基づき、PGAツアーでのカート使用許可を得ようとしたが、僕はそれに反対した。我々の戦うプロのレベルでは、歩くことはゴルフに不可欠な要素だと思うからだ。カートが公認されるまでは絶対にカートには乗らない」とウッズは語った。
LIVゴルフに言及するタイガー
「グレッグは去るべきだ」
「ヒーロー・ワールドチャレンジ」の大会前の公式記者会見に臨んだタイガー・ウッズ(右)とヒーロー・モトコープCEOのパワン・ムンジャル氏。
LIVゴルフCEO兼コミッショナーのグレッグ・ノーマン。一時、彼の去就に関する記事が書き立てられたが、CEOの座から降りることはなさそうだ。
LIVゴルフとの関係と世界ランキングの欠陥
ウッズはまた、PGAツアーとLIVゴルフとの間で展開しているバトルや、新しい公式世界ゴルフランキング(以下OWGR)システムについても発言している。
PGAツアーとLIVゴルフは共存できる可能性があると思うか?と聞かれ、ウッズは次のように答えた。
「両団体が訴訟を止めれば、チャンスはあると思うが、今のままでは共存できない。LIVのリーダーシップや、グレッグ(ノーマン)の存在、彼がPGAツアー自体に反感を持っているようでは、共存はできない。グレッグにはLIVから去ってもらい、最終的には2つの訴訟の間に立って、何かを解決できればいいと思う」
また、出場選手層などを基準とするようになった新しいOWGRシステムについて、ウッズは次のように語る。
「欠陥のあるシステムであり、それには誰もが気付いている。ドバイの『D
Pワールドツアー選手権』が『RSMクラシック』よりもポイントが少ないのに、出場したトッププロの数はドバイの方が多かった。だから、明らかに欠陥のあるシステムだ。ではどう修正するか?そのための話し合いをしなければならないだろう。OWGR委員会と、それに関わる主要なツアーと話し合いを持ち、どうにかして今よりも良いシステムを考えなければならない。以前、僕が2位以下を大きく引き離し、世界ランキング1位だった時、翌年は一度も試合に出場しなくても、ずっと1位でいられたことを覚えている。その時、システムを変更したことがあった。過去にも変更されたことがあるし、今回もできれば近いうちに、絶対に変更されると思う」
Text & Photo/Joy Chakravarty
Photo/Getty Images、LIV GOLF、Dan Imai