• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. コラム >
  3. 【US Open】クラークの3パットを願ったマキロイ、メジャ...

【US Open】クラークの3パットを願ったマキロイ、メジャー5勝目ならず

©Eiko Oizumi

最終日、優勝争いを展開していたスコッティ・シェフラー(左)とローリー・マキロイ。

2014年「全米プロ」以来、メジャー優勝から遠ざかっているメジャー4勝のローリー・マキロイ。
なんとしてでも5回目のタイトルが欲しいところだが昨年の「全英オープン」でキャメロン・スミスに優勝をさらわれたのと同様、今回もまた、あと1歩のところでお預けとなった。

サウジ&PGAツアーの件で振り回された1年
今後は自身のプレーに集中

©USGA

最終日の14番ホールで事件が起きた。3打目がバンカーのアゴに刺さり、ボールが埋没。USGAの競技委員を呼び、無罰でドロップが許されたが、今もこの裁定を疑問視する人は多い。 

3日目を終えて、リッキー・ファウラー、ウィンダム・クラークに1打差の3位につけていたローリー・マキロイ。
最後にメジャー優勝した2014年「全米プロ」以来、33試合目の試合となったが、優勝したクラークに1打足りず、通算9アンダーで2位。
今回もまたメジャー5勝目はお預けとなった。

「誰かに悪いことを願うわけではないけど、本当に(クラークの)3パットを望んでいた。なんとかプレーオフに進出して、優勝のチャンスをつかみ続けたかったんだ。たとえば1人の選手を応援していて、その選手が自分自身という状況だったんです。他の選手がつまずいたり、ミスしたり、(お気に入りの選手が優勝する)一縷の望みにすがっていた」

だが、望み通りの結末とはならず、クラークはパーパットを決めて優勝。
マキロイはメジャーで3度目の2位に甘んじた。
「全米オープン」で優勝しなかった選手の中では最高スコア(9アンダー)を記録したにもかかわらず、である。

ここで、通常なら「プレーオフがあるかもしれないから、集中力を高めておこう」とか、「自分のプレーが優勝するには不十分だった。クラークのプレーをたたえたい」などというのが普通だろう。
だが、彼ははっきりと「相手のミスを願う」と非常に率直な発言をしていたことに注目したい。
彼を批判するわけではないが、ここまで率直にいうのも珍しい。
それだけ彼には気持ちの余裕がなかったのか、それとも最近、サウジとPGAツアーの統合話で裏切られた気持ちでいっぱいとなり、嘘で塗り固められた世界に嫌気がさしたのか。

彼はここ1年以上、PGAツアーの顔として、選手を代表するスポークスマンとして、プロゴルフの歴史と未来を守ろうとLIVゴルフに対抗し、人間関係をも損ねながらコースの外でも戦ってきた。
昨年はフェデックスカップの総合優勝を飾り、コース内外で大活躍のマキロイだったが、今年に入ってまだ米ツアーの優勝はない。
ここ最近はLIVゴルフについての考えを発言することを控えると言い、「全米オープン」でも大会前に予定されていた記者会見をキャンセル。
ラウンド後の記者会見でも質問の数を制限するなど、極力メディアとの接触を避けていた。
サウジの政府系ファンド(PIF)とPGAツアーとの統合話が発表された直後のメジャーということもあり、その関連の質問が記者たちから次々に投げかけられるのを予想していたからだろう。

メジャー5勝目に向けてできるだけ雑事に心を奪われず、プレーに集中しようとしていたが、優勝は叶わなかった。
だが、最終日のプレーが終わった彼の頭には、次のメジャー「全英オープン」がすでにあった。

「もう少しだ。こうして自分を優勝争いの位置に置き続けていけば、遅かれ早かれ優勝できると思う。次のメジャー(全英オープン)で優勝できれば、本当に素晴らしい。今日のような悔しい日曜日をたくさん乗り越えて、他のメジャーで優勝するんだ」

Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/USGA、Getty Images

関連する記事