Text & Photo/Eiko Oizumi
今季のPGAツアー開幕戦であり、予選落ちのない、高額賞金のかかるシグネチャーイベントの第1戦「ザ・セントリー」がハワイ・マウイ島のカパルア・プランテーションコース(7596ヤード・パー73)で行なわれ、3日目を終えて首位に立っていたクリス・カークが最終日に8バーディ、ノーボギーの65で回り、通算29アンダーで優勝。優勝賞金360万ドル(約5億2400万円)とフェデックスカップポイントを700ポイント獲得した。なお、世界ランキングは25位に浮上。通算6勝目を飾った。1打差の2位にはサヒス・シガーラ(28アンダー)、3位にはジョーダン・スピース(27アンダー)が入った。
「今日は信じられない日だった。もちろん最終日を迎えるにあたっては緊張もしたけど、心静かにプレーすることができたし、1日中、手堅くていいプレーができた」(C・カーク)
カークは2011年に「サンダーソン・ファームズ選手権」でツアー初優勝を飾ると、2013〜2015年には「ドイツバンク選手権」など、毎年優勝を重ねた。だが、2016年からは成績不振に陥り、アルコール依存症とうつ病のため、戦線離脱。休養を経て、2020年に下部ツアー「キング&ベアークラシック」で優勝すると、2023年には「コグニザントクラシック・イン・ザ・パームビーチズ(旧ホンダクラシック)」で8年ぶりにPGAツアーで優勝。昨年11月には、アルコール依存症、うつ病を克服して優勝し、復帰を果たしたことでPGAツアーから、「カレッジアワード」(勇敢な選手に贈られる賞)が贈られた。
「人生で間違いなく最高のことは、アルコール依存症を克服できたことだ。過去何度も言ったけど、もし克服できなかったら、僕のPGAツアー人生はしばらく前に終わっていただろうからね」
「依存症であることを公言したことは、確実に役に立ち、プラスに働いた。私の人生の大半は、ある意味、人前で生きているようなもの。だから、私にとってとても大事なことは、毎朝起きて、自分の顔を鏡で見たときに何も隠し事をする必要がなく、自分であることに誇りを持てるということだ。私が依存症を公言しない限り、このことはあり得なかったと思う」
38歳のカークは、いつも物静かで、感情を面に出さないタイプのプレーヤー。最終日の17番ホールで2打目を約80センチにピタリとつけて楽々とバーディを奪った時も、力強いガッツポーズを繰り出すこともなかった。
「(バーディを取っても)嬉しそうにはおそらく見えないと思うが、そういうふうに自分を作り上げてきたんだ。最終ホールで、このパットを入れれば優勝という場面ですら、そのキャラクターを壊したくなかった。僕は、感情を出さないようにしてプレーしたいんだ。何年もかけて、それが自分のベストなプレー方法だと気づいた。僕は本当に一つ一つ、1打1打コツコツとベストを尽くしたいタイプ。1日の中でできるだけ多くの時間を、次のことに集中するようにしているんだ」
翌週の「ソニーオープン・イン・ハワイ」でも上位争いに加わっていたが、最終日はスコアを伸ばしきれず、通算11アンダーの18位タイに終わった。ハワイでの2試合を終えて、現在、フェデックスカップランキング1位のクリス・カーク。今年はまだまだ優勝争いに顔を出すことも多くなりそうだ。