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【世界のゴルフ通信】From Europe 欧州ツアーの大幅な改革~欧州ゴルフに新たな息吹と光~

DPワールドツアーの新しく魅力的なスケジュール

南アフリカで開催されている「ネッドバンク・ゴルフチャレンジ」が2025年から「レース・トゥ・ドバイ」の一環として開催される。左からPGAツアー・執行副社長兼社長のタイラー・デニス氏、「サン・インターナショナル」最高執行責任者のグラハム・ウッド氏、ゲーリー・プレーヤー、ネッドバンク最高経営責任者のマイク・ブラウン氏、DPワールド最高経営責任者のキース・ペリー氏。 ©Getty Images

暗雲垂れ込めていた欧州ゴルフに光

ヨーロッパのゴルフ界にとって、良い時期を迎えている。
「ソルハイムカップ」、「ライダーカップ」がいずれも大西洋の東側で開催され、優勝したからだ。 

2021年、ウィスリングストレーツで行なわれた「ライダーカップ」で、欧州が苦い敗北を喫した時、今後アメリカの支配が10年以上にわたって続くだろうと予想され、暗い雰囲気が広がった。
しかし、これらの暗い雲は、LIVゴルフによってもたらされたゴルフ界の大きな変化と、LIVへイアン・ポールター、セルヒオ・ガルシア、リー・ウエストウッドらが移籍したことによって残された役割を引き継いだ新しい世代の選手によって吹き飛ばされた。
ルーク・ドナルドというローマの征服者によって宣言されたこの新たな世代交代は、欧州のゴルフに新たな活力と希望をもたらしたのだ。
しかし、新たな変化の風が感じられるのは、「ライダーカップ」だけではない。
来シーズンのDPワールドツアーでは、エキサイティングな新次元をツアーシーズンにもたらすために、大幅な改革が行なわれる。
これには、5つのグローバルスイング、プレーオフの2試合及び、2つの新しいボーナスプールが含まれている。
この充実したスケジュールには、5大陸にわたる24か国で44試合が組み込まれており、ツアーメンバーには合計1億4850万ドルの賞金を争う機会が提供される。
PGAツアーのスター選手を集めるために、高額なロレックスシリーズイベント5試合が引き続き開催されるが、「レース・トゥ・ドバイ」はアラブ首長国連邦でのプレーオフ2試合で終了することになる。

これに「レース・トゥ・ドバイ」の600万ドルのボーナスプールと4大メジャーの賞金が加わり、DPワールドツアーのメンバーにとって、この冬、ゲームを充実させるためのこれ以上のインセンティブはない。
ルーツは依然としてヨーロッパにあるものの、これこそまさに、年間を通じて競技が可能な、真の世界ゴルフツアーであることは否定できないだろう。

賞金額もアップ!
年間を通じた真の世界ツアーに

2023年1月に開催された「アブダビHSBC選手権」で優勝したビクター・ペレツ(フランス)。同大会は2024年からは11月に「DPワールドツアー・プレーオフ」の1試合として開催される。 ©Getty Images
2022年の欧州ツアー最終戦「DPワールドツアー選手権」で優勝したジョン・ラーム(左)とレース・トゥ・ドバイ総合優勝を果たしたローリー・マキロイ。2024年からは「アブダビ選手権」と2週連続でUAE にて開催される。 ©Eiko Oizumi

来シーズンは最終戦終了の4日後からスタート

次年度のシーズンが、新年の鐘が鳴るかなり前から始まるのはいつも奇妙に思うことだが、ドバイで行なわれる「DPワールドツアー選手権」終了からわずか4日後の11月23日に、「オーストラリアPGA選手権」で開幕する。
新しいスケジュールとして、2つの新規試合「ドバイ・インビテーショナル」と「バーレーン選手権」が追加された一方、「ISPSハンダ・ワールドインビテーショナル」は姿を消した。
「中国オープン」は、2019年以来の復活だが、新型コロナウイルス・パンデミックからの国の回復において、心理的に重要な目標地点を示している。

一方、南アフリカのレジェンドゴルファーであるゲーリー・プレーヤーとの新しいパートナーシップにより、「ネッドバンク・チャレンジ」は2024年は12月に移動し、2025年シーズンの開幕戦として開催される。
奇妙なことに、タイミングのズレのため、この試合は2024年シーズンのスケジュールにはない。
今年の〝アフリカのメジャー〟「ネッドバンク・チャレンジ」は、従来の12月開催に戻る前に、2023年シーズンの最後から2番目の試合として開催される。

ゲーリー・プレーヤーは、1981年に大会が創設され、5人の選手の1人として出場して以来、この試合に関わってきた。
だから、来年からは彼の世界のゴルフへの貢献を称賛し、メジャー9勝の彼をたたえる大会が正式に開催されるのは適切だろう。
ジャック・ニクラスとアーノルド・パーマーが、PGAツアーで独自の試合を開催し、たたえられているのと同様だ。

70年にわたる輝かしいキャリアの中で、プロとして150以上の勝利を収めたプレーヤーは、次のように述べている。

「夢を抱いて、何もない状態から始めたトーナメントの未来を今から楽しみにしているし、とても深く感謝している。こうして40年以上経って、多くの人々によって夢は共有され、楽しまれているのは素晴らしい。 このようなトーナメントの遺産は、このイベントに情熱を傾け、それを繁栄させた多くの素晴らしい人々の意志を反映している。『アフリカのメジャー』は全て、克服し、鼓舞するという南アフリカの精神を表していると思う。私はこの精神を祝うために毎年サンシティで1週間、みんな集まってイベントに参加できることを本当に光栄に思う」

ドバイの最終戦に向けて欧州ツアーもプレーオフ制度を導入

「ISPSハンダ選手権」はアジアンスイングの一試合として開催される。今年の同大会優勝者は、ルーカス・ハーバート(中央)。 ©Yoshitaka Watanabe

スケジュールの変更とよりエキサイティングな演出

2024年には他にもエキサイティングな変化が待ち受けている。
史上初めて、「レース・トゥ・ドバイ」の総合優勝者を決定するためにプレーオフシリーズが採用され、「アブダビ選手権」が従来の1月の開催枠から11月の最後から2番目の試合へと移動した。
この試合には、「レース・トゥ・ドバイ」ランキングの上位70名が出場する。
そして上位50名が、シーズン最終戦の「DPワールドツアー選手権」に進出。
今シーズンと同様に、2024年の「レース・トゥ・ドバイ」ランキングの上位10位(既に免除されている選手は除く)は、2025年シーズンのPGAツアーのシード権を獲得できる。

そして、最初の8か月間で5つの「グローバル・スイング」が行なわれる。
「オープニング・スイング」、「インターナショナル・スイング」、「アジア・スイング」、「ヨーロッパ・スイング」、そして「クロージング・スイング」の5つだ。
各スイングには独自のランキングとチャンピオンがあり、それぞれが総額100万ドルのボーナスプールから20万ドルを獲得できる。

そして各スイングのチャンピオンたちは、「バックナイン」イベントへの出場資格を獲得する。
「デンマーク・ゴルフ選手権」終了後、「レース・トゥ・ドバイ」の上位10名(メジャーと『スコティッシュオープン』以外の、通常のグローバルスイングの試合で少なくとも8回プレーした選手)に、さらに100万ドルのボーナスプールが分配される。

人気のある「ロレックスシリーズイベント」に変更はなく、従来通り、1月の「ドバイ・デザートクラシック」が全5試合の中の最初の試合として開催され、4大メジャー以外で最も高額の賞金を提供する。
その他の試合には、7月の「スコティッシュオープン」、9月の「BMW PGAチャンピオンシップ」、そして11月の「アブダビ選手権」「DPワールドツアー選手権」が含まれる。

これらの試合の賞金額は、それぞれ驚異的な数字となるが、これらの数字を合計すると、DPワールドツアーの今後の1年は明るくエキサイティングなものとなるだろう。

DPワールドツアーの来シーズンのスケジュールの流れ。第1章で「グローバルスイング(5つに分割)」、第2章で「バック9」、第3章で「DPワールドツアー・プレーオフ」というように、シーズン中の試合が段階を経て進行する。

Text/Euan McLean

ユアン・マクリーン(スコットランド)

スコットランド・グラスゴー在住のスポーツライター。『サンデーメール』などに寄稿。欧州ツアーなど過去20年にわたり取材。

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