2023年「タルサ大会」以来、3勝目達成!
「パッティング」を改善し、優勝したダスティン・ジョンソン
2024年LIV Las Vegas(個人戦)優勝
LIVゴルフ1年目の2022年、初代年間王者についたダスティン・ジョンソン。
いきなり初年度から53億円近い賞金を獲得したLIVゴルフの中でも最強プレーヤーの1人だが、今季の第2戦「LIVゴルフ・ラスベガス」で1年ぶりの勝利を果たした。
しばらく優勝のなかった、彼の勝因はなんだったのだろうか?
今シーズン初優勝を飾ったダスティン・ジョンソン
2月8日~10日に米国ネバダ州のラスベガスCCで開催された、LIVゴルフ第2戦「LIVラスベガス」で、4エイシズGC・キャプテンのダスティン・ジョンソンが、LIVゴルフで通算3勝目、今シーズン初優勝を飾った。
通算12アンダーでの勝利で、1打差の2位タイには、スマッシュGCのテーラー・グーチ、レンジゴーツGCのピーター・ユーラインが入った。
ジョンソンは、プロゴルファーとしてのキャリアでは31勝目。優勝賞金400万ドル(約6億円)を獲得した。
「今日(最終日)は最初から、プレッシャーを感じていた。とても難しいコンディションだったし、上位には本当にたくさんのいい選手がいたからね。ブライソン(デシャンボー)、ジョン(ラーム)と一緒に回り、タフな1日だった」
2日目を終え、ダスティン・ジョンソン、ブライソン・デシャンボーが首位タイに立ち、2打差の3位にはジョン・ラームがつけていた。
このビッグ3が、最終日(3日目)のマーキーグループ(いわゆる最終組)でプレーし、PGAツアーやメジャーでもなかなか見られないような、豪華な顔ぶれが話題となった。
ジョンソンは、1番でバーディを奪ったものの、6番、9番、11番でボギー。
「風の読みを間違え」て、いいショットをしたにもかかわらず、思い通りの場所にボールを運べなかった。
このままスコアを落とし、優勝戦線から脱落するのかと思われたが、13番でバーディを奪取すると、15番、17番でもバーディ。11アンダーで並んでいたピーター・ユーライン、テーラー・グーチを17番のバーディで1打突き放し、12アンダーで臨んだ最終ホールをパーで終了。
ジョンソンの優勝が決まった。
「先週(マヤコバ大会)と今週、パットがとても入ってくれた。すごくパットの調子がいい。去年と比べると、パットの好調が最も大きな勝因だ。去年はすごくパッティングの不調で悩んだからね。決めなければいけないパットは全て入ってた。1打差のリードにしたかったら、絶対に決めなきゃいけない17番のクラッチパットのようにね」
大事な場面でのパッティングも決まり、バーディ数は、今大会全体で1位だった。
バーディ数は大会中1位
「マスターズ」での活躍も期待!
今年40歳を迎えるDJ
今季の活躍に期待!
ラスベガスの会場には、妻のポーリナさんとその父母、ジョンソンの父親と、キャディでもある弟が勢揃いし、優勝を祝福。
ポーリナ夫人の父親は、NFLのレジェンド、ウェイン・グレツキーだ。
「優勝する時に、たくさんの友人や家族がいることはいつも素晴らしいことだ。そういうことは、そんなに何度も起こることではないが、優勝した時に彼らがいればすごく楽しい」
今年の6月で40歳になるダスティン・ジョンソン。
パワーヒッターのブライソン・デシャンボー、ジョン・ラームと一緒に回っても、さほど引けを取らない飛距離も健在だ。
パッティングも復調し、「今後の試合も楽しみ」と語るが、「LIVラスベガス」が終わると、3月にはサウジアラビア、香港、オーランド(米国)の試合が続く。
そしてオーランドの後は、今季初メジャーの「マスターズ」だ。
2020年のチャンピオンのジョンソン、「マスターズ」でメジャー3勝目に期待がかかる。
LIV Las Vegas
2024年2月8日〜10日/Las Vegas Country Club Par 70·7089Yards
個人戦・最終成績
優勝 | ダスティン・ジョンソン | −12 |
2位 | テーラー・グーチ ピーター・ユーライン | −11 |
4位 | マシュー・ウルフ | −10 |
5位 | グレアム・マクドウェル ポール・ケイシー ジェイソン・コクラック | −9 |
8位 | ジョン・ラーム | −8 |
9位 | セバスチャン・ムニョス エイドリアン・メロンク ブライソン・デシャンボー | −7 |
12位 | ブルックス・ケプカ | −6 |
30位 | フィル・ミケルソン | −2 |
34位 | 香妻陣一朗 | −1 |
3人がトップ10入りし
ブルックス・ケプカがキャプテンを務める
SMASH GCが2年ぶりチーム戦優勝
「勝ち方を知っている選手が揃っている」
強風が1日中吹き荒れ、気温が10度を下回るラスベガスCCで、「LIVラスベガス」のチーム戦を制したのは、ブルックス・ケプカ率いるスマッシュGC。
通算33アンダーとし、2位の4エイシズGC(ダスティン・ジョンソンがキャプテン)に7打の大差をつけた。
ブルックス・ケプカにとってはこれで5回目の表彰台(個人戦・チーム戦含め)となり、テーラー・グーチにとっては、違うチームで3勝目を飾った(過去、4エイシズGC、レンジゴーツ GCに属していたことがあり、今季からスマッシュGC)ことになる。
「このチームの選手たちは皆、勝ち方を知っているし、プレーの仕方もわかっている。今日はタフなコンディションだったが、Gマック(グレアム・マクドウェル)がいいプレーをしていた。このタフな状況でいいプレーができるんだ。それを今日はGマックがやってみせた」(ケプカ)
マクドウェルは今季からスマッシュGCに移籍したが、最終日に5つスコアを伸ばし通算9アンダーの5位タイに浮上。
LIVゴルフの初期メンバーの彼にとって、個人戦、チーム戦を問わず、初優勝となった。
「このチームの一員であることに誇りを持っている。ブルックスには、自分をチームに入れてくれて感謝しているよ。今年から最終日は4人のスコアがカウントされることになったから、かなりプレッシャーを感じたが、このフォーマットはとても素晴らしいと思う。今日は大きな1日だった。もっともっと表彰台に上りたいし、スマッシュGCの今年の活躍には、かなり期待が集まっていると思う」(マクドウェル)
44歳の「全米オープン」チャンピオンは北アイルランド出身で、過去15年間、フロリダに住んでいる。
フロリダは、風が強いことで有名だが、強風のシチュエーションでもいいプレーができるコツを体得している。
最終日、多くの選手がスコアを崩す中、たった1人、ノーボギーで5つスコアを伸ばした。
また、昨年、個人戦で総合優勝したテーラー・グーチは、ダスティン・ジョンソンに1打差の2位タイでフィニッシュ。
「ブルックスの周りに毎日いると、成長できているような気がする。彼はここ10年間で最も素晴らしい選手の1人だし、他にもうちのチームにはメジャーチャンピオンがいる。彼らの周りにいることで、もっといい選手に押し上げてくれるんだ」と語った。
チーム戦・最終成績
優勝 | SMASH GC | –33(300万ドル) |
2位 | 4 ACES GC | –26(150万ドル) |
3位 | RANGEGOATS GC | –24(50万ドル) |
4位 | CRUSHERS GC | –18 |
5位 | LEGION ⅫⅠ | –16 |
6位 | TORQUE GC | –16 |
7位 | MAJESTICKS GC | –12 |
8位 | FIREBALLS GC | –12 |
9位 | CLEEKS GC | –9 |
10位 | RIPPER GC | –9 |
11位 | IRON HEADS GC | –3 |
12位 | STINGER GC | +5 |
13位 | HYFLYERS GC | +7 |
LAS VEGAS
O嬢レポート
ケイレブ・スラットの父親役を演じたハットン
前週(第1戦)のマヤコバで、チーム戦優勝を果たした、ジョン・ラームの新規チーム「リージョン13」。
チームには、19歳のケイレブ・スラットがいるが、ティレル・ハットンがスラットの父親代わりになってチェックインさせたという。
「僕はチェックイン時にケイレブの様子を見ていたんだけど、彼もかなり緊張した面持ちで僕の方を見ていた。僕がチェックインし終えた後、ケイレブが無事チェックインできるかどうか心配だったので、ちょっとウロウロしていたが、彼の担当の女性は、ケイレブをチェックインさせるためには、誰か21歳以上の人間が必要だというので、僕が運転免許証を見せて、チェックインさせたんだ」
なぜゴルフ場の池に飛行機が⁈
以前、本誌11号で、高級メンバーコースであるラスベガスCCの池には、飛行機が浮かんでいる、と紹介したことがあったが、今大会期間中も飛行機の模型が浮かべられていた。
これは一体なんなのか?
1981年、FBIのエージェント2人がラスベガス上空をセスナ機で飛行中、エンジントラブルに見舞われ、不時着した。
幸い搭乗していた2人の命に別状はなかったという。
その15年後、「カジノ」という映画の中でもこのシーンが取り入れられたが、オーナーが「ラスベガスの歴史と、自分のコースで起こった事件の現場を残したい」ということで、2018年から飛行機を浮かべている。
フリートウッドが陣中見舞い
LIVゴルフの会場に、トミー・フリートウッド!
まさか、次なるビッグネームの移籍はフリートウッド?!と思いきや、彼は、同週に行なわれている「WMフェニックスオープン」には出場せず、ラスベガスに住むコーチ、ブッチ・ハーモンのもとを訪れ、スイングチェックしていたのだという。
その練習の合間に、イアン・ポールター、リー・ウエストウッドら同郷の仲間と久しぶりに再会。
嬉しそうでした!
地の利を生かせず11位に沈んだアイアンヘッズGC
ラスベガスに20代半ばから住んでいるケビン・ナがキャプテンを務める「アイアンヘッズGC」。
2年前からダニー・リーもラスベガスに住み始め、いわば彼らにとってはホームのような土地だ。
ナは、PGAツアーで2勝を挙げた地であり、このコースでもD・リーと時々プレーしているという。
家族や友人も大勢いるので、なんとか好成績を残したいところだったが、チーム戦では13チーム中、11位に沈んだ。
PGAツアー在籍時代から、「コースにトイレをもっと設置してほしい」と訴えていたジョン・ラーム。
LIVゴルフの会場には、選手用のトイレがほぼ毎ホール用意されていた。
これでラームも一安心?!
今年は、ビンセント兄弟がチームは違えど、揃ってLIV ゴルフに出場している。
右はアイアンヘッズGCのスコット・ビンセント(兄)、左は、昨年末の「LIVプロモーションズ(予選会)」で勝ち抜いたキーラン・ビンセント(弟)だ。
「弟は素晴らしい選手だし、毎週、自分を奮い立たせてくれる誰かがいるというのは最高だね」(スコット・ビンセント)
前週のマヤコバ(メキシコ)の試合で、食中毒になり、インフルエンザにも感染したというヘンリク・ステンソン。
練習日はこんな感じで、体調的に辛そうだったが、終わってみれば個人戦は5アンダー、15位タイ。
「全英オープン」チャンピオン、体調が悪いのにさすが!
日本人唯一のLIVゴルファー
香妻陣一朗 直撃インタビュー
「LIVゴルフでずっとプレーしたい」
昨年末の「LIVゴルフ・プロモーションズ(予選会)」でトップ3に入り、今年からLIVゴルフに本格参戦している香妻陣一朗。
日本から唯一人出場しており、ケビン・ナ率いるアジアチームの「アイアンヘッズGC」に所属している。
彼がLIVゴルフでプレーしたかった想いなどを語ってもらった。
チーム戦ならではのメリット
ゴルフ・グローバル(以下GG):LIVゴルフには、以前もスポット参戦していた香妻選手ですが、今年から本格参戦。第1戦目に出場して感想は?
香妻:ちょっと緊張しましたね。すぐに慣れましたけど、レベルの高さをすごく感じるんで、自分がベストな状態でないと通用しないと思いました。
GG:チームメイトと一緒に行動することも多いと思いますが、その辺で何かやりづらさのようなものはありますか?
香妻:やりづらさとかはないですね。個人あってのチームなんで、とにかく個人で頑張れば、チームにも貢献できる。チームには迷惑をかけないくらいの成績を残したいです。
GG:キャプテンのケビン・ナからは、何か言われてます?
香妻:一緒に頑張ろうって感じですね。昨日も彼の自宅に行って、バーベキューをやったけど、歓迎されていると思うし、やりやすいチームに入ってよかった。
GG:チーム戦ならではの良さは、何かありますか?
香妻:チームのメンバーがいいプレーをしたら、「ナイスプレー!」と心から思えるし、僕がもしゴルフで悩んでいたら、チームのメンバーの誰かが教えてくれたり、ということもあるのかな、と思いますね。
GG:一緒に食事する機会もあると思いますが、そういう時は英語で?
香妻:いや、僕はそんなに英語を話せないですけど、しゃべれるようになりたいですね。メンバーのやり取りをずっと聞いてて、言ってることは徐々にわかってきています。
GG:自分の成績だけじゃなくて、チームの成績も気になる?
香妻:そうですね。メンバーがいい位置にいたら、自分も頑張らなきゃいけない!と思うし。貢献したいですね。
LIVゴルフの良さはこんなところにある
GG:LIVゴルフは世界中に行くツアーですが、何か楽しみにしていることは?
香妻:いろんな国を回れるのは、めちゃ楽しみです。スペインも行ったことないし、アデレードも行ったことがないので、楽しみですね。
GG:ずばりLIVの魅力は?
香妻:いろんな魅力がありますけど、フォーマットも違うし、チーム戦というのもいい。「今までと違う」というところかな。みんなユニフォームを合わせているところも面白い。僕もラスベガスまでは合わせられていませんでしたが、3月のサウジ大会からユニフォームを着用し始めました。やっぱりかっこいいですよね、チームでユニフォームを揃えて動いてたら。
GG:以前から、世界の強い選手と戦いたいと言ってましたが、ここは理想的な場所?
香妻:そうですね。僕の中では理想なんじゃないかと。僕はPGAツアーやDPワールドツアーにこだわりはなく、チャンスがあればどこにでも行くという感じだったので、動きやすかったかな、と思います。PGAツアーを目指す人は躊躇してしまうかもしれないけど……。そういう人たちの気持ちもわかります。
GG:ラスベガスの大会中、ジョン・ラームと回るチャンスもありましたが、ラームとはどんな話を?
香妻:昔、アマチュアの時に日本に来たことがある、と。パー6のコースがあったと言ってました。それと、僕と同い年だという話題になり、「自分の方が年配にみえるけど」って。
GG:ラームのゴルフは?
香妻:ティーショットがすごかったですね。精度が高い。ちょこちょこと外してても、崩れないのがすごい。
GG:今年はどういう1年にしたいですか?
香妻:やれるだけのことはやって、来年もLIVに残れるようにしたいですね。こんな環境でゴルフができるなんて、なかなかないんで。来年1年だけじゃなく、これからずっとLIVに居続けることが、僕の目標です。
GG:LIVのイベントがない時は、日本の試合にも出る?
香妻:今のところ、東建やミズノオープンにも出ます。
Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/LIV GOLF