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今年で最後のセントアンドリュース?!
タイガー・ウッズ、6回目の聖地で感涙

Text/Eiko Oizumi
Photo/Stuart Franklin、Richard Heathcote/R&A/R&A via Getty Images
  Dan Imai、

予選ラウンドで姿を消したタイガー・ウッズ。18番ホールのスウィルカンブリッジを渡りながら、ギャラリーに、聖地に別れを告げた。Photo/Stuart Franklin/R&A/R&A via Getty Images)

 昨年2月に交通事故で瀕死の重傷を負ったタイガー・ウッズ。大掛かりな手術とリハビリを成功させて、再び今年の4月に「マスターズ」で復帰し、見事に予選通過。5月の「全米プロ」でも予選通過を果たし、奇跡的な回復ぶりを見せていたが、3試合目のメジャー「全英オープン」では通算9オーバーで、予選通過は果たせなかった。

「初日も2日目も、グリーン上で苦戦した。グリーンスピードがつかめず、十分な強さでパットできなかったんだ。何度もパットをショートさせてしまったよ。昨日もそうだった。それに何度かミスショットもあったし、それが悪いライにハマってしまった」

 初日の1番ホールでは、クリークに2打目を打ち込み、ダブルボギー発進。その後もバーディよりもボギーがかさみ、3バーディ、5ボギー、2ダブルボギーで78(6オーバー)で終了した。「明日は66を出すくらいじゃないと予選通過できない」と語っていたが、2日目も1バーディ、2ボギー、1ダブルボギーの75で、通算9オーバー。6回目の聖地での「全英オープン」で予選通過を果たすことはできなかった。

 1995年にアマチュアとしてセントアンドリュースでの「全英オープン」に初出場したタイガーにとって聖地・セントアンドリュースとは、いつきても特別な場所であり、初めてグランドスラムを達成した場所でもある。1995年に初めて訪れた時、練習ラウンド中に橋の上に座って写真を撮ったが、その写真が今も事務所に飾られているそうだ。

「1995年にこのコースに恋に落ちて以来、ずっとお気に入りのコース。いろいろな方法でプレーできるのが好きなんだ。今日は午前中が冬で、午後は夏。だが、そんなことはこの辺ではよくあること」

もしかしたら今年でセントアンドリュースでの「全英オープン」に出場するのも、最後になるかもしれない……そんな思いを胸に戦った2日間だったが、予選カットラインからはほど遠く、週末の聖地でのプレーは実現できなかった。2日目の最終18番ホールでティショットを放ったタイガーは、ギャラリーからの大きな歓声と拍手を浴びながら、名物のスウィルカンブリッジへ。キャップを右手に掲げ、ギャラリーたちの歓声に応えながら、そして大好きなセントアンドリュースへ別れを告げるように、橋の上でキャップを左右に振った。

「すごく感情的になってしまった。1995年以来ここにきているが、次のここでの「全英オープン」はいつ? 2030年だとしたら、肉体的にプレーできるかどうかわからない。だから、今回がセントアンドリュースでの最後の「全英オープン」のように感じたんだ。ファンのスタンディングオベーションや温かい拍手や歓声は、信じられないくらい素晴らしかったよ」

「ジャック(ニクラス)やアーノルド(パーマー)が過去、引退した時にどんな経験をしたのかわかった。自分も最後は同じような気持ちだった。ファンたちはゴルフとは何なのかを理解しており、全英オープンのチャンピオンになることがいったいどんなことなのかを理解しているんだ。僕はあまり涙を流さないタイプの人間だけど、ちょっと涙が出てしまった。ファンたちは僕のスコアでは予選通過はできないことを知っていた。でも、18番の方に戻ってくるにつれて、どんどん彼らの歓声が大きくなっていった。僕はこの試合にいつも敬意を払っているし、ゴルフというゲームの伝統をリスペクトしている」

「僕は幸いここで2回も優勝している。ただ自分の健康状態がどんな感じになるのかがわからないだけに、とても感情的な気持ちになってしまった。今後、「全英オープン」でプレーすることはできると思うし、ゴルフという競技から引退するつもりはないけど、セントアンドリュースに戻ってくるまでプレーできるかどうかわからない。あと8年後に、競技レベルのゴルフができるかどうか疑わしいね」

 アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラス、トム・ワトソンが過去この地で「全英オープン」を引退し、スウィルカンブリッジの上で立ち止まって記念撮影を行なったように、タイガー・ウッズにも「橋の上のセレモニー」を行なったのちに勇退してほしい。今から8年後には、彼は54歳。彼のいう「優勝争いができる競技レベルでのプレー」は難しいかもしれないが、是非彼には再びこの地に戻ってきて、史上最強のレジェンドゴルファーとして、最後の舞台を踏んでほしいと願っている。

次のセントアンドリュースでの「全英オープン」開催は、2030年となると見られているが、8年後に再びこの地に戻ってほしいと願う。
キャディのジョー・ラカバとハグを交わすタイガー・ウッズ。ラカバによれば、自身がホストを務める「ジェネシスインビテーショナル」(来年2月開催)でツアー復帰したいと語っているという。
「全英オープン」チャンピオンのフィッツ・パトリックらと予選ラウンドをプレー。オーガスタナショナル(マスターズ)やサザンヒルズ(全米プロ)に比べて、アップダウンが少ないため、比較的痛みもなく歩きやすいのでは? と想像したが、それでもアイシングなどのケアは毎晩行ない、まだまだ本調子ではなかったようだ。

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