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全米最古のゴルフクラブの一つ
ザ・カントリークラブで「全米アマ」「全米オープン」を
制したマシュー・フィッツパトリック

Text/Eiko Oizumi
Photo/USGA

「全米オープン」でメジャー初優勝を遂げたマシュー・フィッツパトリック。

 5月の「全米プロ」では最終日、最終組で優勝争いに加わりつつも、スコアを伸ばせず5位タイに終わったイギリスのマシュー・フィッツパトリック。6月に、ボストン郊外の名門コース、ザ・カントリークラブで開催された「全米オープン」で、世界ランク1位のスコッティ・シェフラー、最近のメジャーで毎回のように優勝争いに加わっているウィル・ザラトリス、「全米オープン」チャンピオンのローリー・マキロイら強豪を抑えて、メジャー初優勝を遂げた。

彼は、欧州ツアーで8勝を挙げる中堅プレーヤーだが、メジャーは未勝利に終わっていた。そして今回、3日目を終えてウィル・ザラトリスと4アンダーの首位タイに立ち、ともに最終組でプレー。1打差でザラトリス、シェフラーをかわして逃げ切った。

「子供の頃の夢がかなった!明日引退してもいいくらいだよ。ここでは全米アマでも勝ってるし、すごく居心地がいいんだ。このコースは自分に合っている」

終わってみればわずか10人しかアンダーパーをマークできなかった、今年の開催コース「ザ・カントリークラブ」は、ボストン郊外にある、全米最古のカントリークラブの一つで、全米ゴルフ協会(USGA)設立に貢献した5つのクラブの一つに数えられている歴史と伝統の名門コース。1913年に行なわれた「全米オープン」では、アマチュアのフランシス・ウィメットが優勝したことで有名だが、風が強く吹き、狭いフェアウェイ、小さなグリーンが特徴で、難コースとして知られている。そんなコースでフィッツパトリックは9年前、「全米アマ」で優勝し、今回「全米オープン」でも優勝。なぜ彼はそんなにこのコースと相性がいいのか?

「僕がゴルフを覚えたイギリス・シェフィールドのコースは、風が強く、タフで狭く、グリーンが本当に小さくて、こことよく似ている。違いは、ここほどは距離がないことくらい。そのコースで弾道のコントロールや、アプローチを学んだ」と語っている。
「このコースは、どこに打つべきか、どこに打ってはいけないのかがはっきりしている。自分はそれがよくわかっているし、再びこの地に帰ってきて、いいプレーをしているうちに、日に日に自信が高まった」

彼は9年前の「全米アマ」参戦時に世話になったホストファミリーの元に、今回もフィッツパトリック一家が揃って滞在。「全米アマ」以来、たまにゴルフをしたり、感謝祭には家を訪れるなどの交流を深めてきたそうだが、そんな家族ぐるみの付き合いが続くホストファミリーのもとで1週間過ごしたことも、彼の精神面での安定に一役買ったようだ。

彼は2020年の年末からトレーナーや運動力学者と一緒にトレーニングに取り組み、飛距離アップを目指してきた。翌年1月の「HSBC アブダビ選手権」の練習日には、軽く65を叩き出し、「飛距離が伸びるとこんなにも簡単にスコアが出せるものか」と思ったという。現在ではドライバーだけでなく、アイアンショットでも3〜4ヤードは飛んでいるといい、今回の「全米オープン」でも飛距離アップの効力を体感している。

「もしトレーニングをしていなかったら、ウィル(ザラトリス)に15〜20ヤードは置いていかれていたと思うけど、トレーニングのおかげで、彼をオーバードライブしていた。彼よりも小さい番手のクラブで打てることは、自信につながった」と語っている。飛距離だけが全てではないが、やはりプロでも「目の前の相手よりも飛ぶ」という優越感は、ゲーム運びにおいて、精神的な助けになるようだ。

 さて、彼の心の中には「メジャーで6勝しないとレジェンドとは言えない」というものがあるらしい。メジャー1勝は、いいスタートには違いないが、まだまだこの先、長い道のりであることを知っている。さらなる飛距離アップと技術の研鑽を積み、両親から教えられた「謙虚さ」を持って、自分のやるべきことをやり続けていけば、メジャー2勝目以降も近いかもしれない。 

今週は、そんな彼の母国のメジャー「全英オープン」がゴルフの聖地、セント・アンドリュースで開催される。150回大会という節目の年ということもあり、選手たちの鼻息も荒いところだろうが、ここのところメジャーで好調なプレーが続いているフィッツパトリックにとっては、欧州ツアー「ダンヒルリンクス選手権」でもプレーし慣れた場所でもあり、聖地のナショナルオープンで優勝したいという気持ちは人一倍強いことだろう。

最終日の18番ホール。ティショットが左のフェアウェイバンカーに入り、そこからの2打目を見事ナイスオン。自身も「人生のベストショットの一つ」というくらいの出来栄えだった。

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