ゴルフの経済を知ればビジネスのヒントも見つかる!
今回のテーマは「契約選手の活躍と新型コロナウイルスの影響で企業価値が高まるクラブメーカー」です。
「テーラーメイドゴルフ」が4倍の売値で韓国企業に売却
6月に開催された「全米女子オープン」では笹生優花が史上最年少優勝を果たしたが、彼女が使用していたドライバーはテーラーメイドの「SIM2 MAX」。
ちなみに彼女は、特定のクラブメーカーとは契約せず、自分が使いたいクラブを使える契約フリーの選手である。
今年2月に発売されたSIM2ドライバーは全世界でヒットしており、契約選手のダスティン・ジョンソン、コリン・モリカワ、ローリー・マキロイなどがツアーで使用し高評価を得ている。
日本では「矢野経済研究所ゴルフ用品小売実売調査YPSゴルフデータ」(データ対象期2021年3月)によると、SIM2シリーズは数量シェア25・3%のトップで、ヒット商品となっている。
さて、そのテーラーメイドが5月に売却された。
テーラーメイドは4年前の2017年5月に当時の親会社アディダスが、コアビジネスの靴やアパレルに資源を集中する理由で、米国の投資会社KPSに4億2500万ドルで売却した。
前年にナイキも同様の理由でクラブやボールのゴルフ用品事業から撤退することを表明。
あれから4年、KPSはテーラーメイドを17億ドルで韓国の投資会社セントロイド・インベストメント・パートナーズに売却した。テーラーメイドの価値は4倍にハネ上がったのである。
これだけ企業価値が上がったのには二つの理由がある。
一つはテーラーメイド契約選手の活躍だ。
タイガー・ウッズは、現在ケガで休養しているが、2018年に「ツアー選手権」で5年ぶりに優勝し、翌年の「マスターズ」でメジャー15勝、同年「ZOZOチャンピオンシップ」で優勝し、歴代ツアー優勝最多記録タイの通算82勝目を挙げた。
その他、D・ジョンソン、R・マキロイ、C・モリカワらの活躍もブランド力UPの要因だ。
もう一つは新型コロナウイルスの影響である。
3密を避けながら楽しめるゴルフは、全世界的にブームとなっている。
市場調査会社のゴルフ・データテックによると米国の2020年のラウンド数は前年比13・9%急増。
それに伴い、ゴルフ用品の売上も前年比10・1%増の28億1000万ドルで、過去3番目を記録。今年に入っても好調は続いている。
そして今後のゴルフ界全体の経済状況はどうなっていくのか?
Text/Hirato Shimasaki
Illustration/Koji Kitamura