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【ゴル経スペシャル】ZOZOチャンピオンシップ 賞金総額11億円の経済効果はどのくらい?

©Koji Kitamura

 

ゴルフの経済を知ればビジネスのヒントも見つかる!

今回のテーマは「ZOZOチャンピオンシップ 賞金総額11億円の経済効果」です。

ZOZOチャンピオンシップの賞金総額は11億円!
その経済効果はどのくらいあるの?

昨年10月に日本で開催されたPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」は、賞金総額995万ドル(約11億円)、優勝賞金179万1000ドル(約2億円)という、破格の賞金額で有名だ。
6年契約と言われているが、そのような巨額の投資をしてまでZOZOが追求していることは何なのだろうか?

©Yoshitaka Watanabe

コロナ禍だが、人数を絞って有観客で行なわれた「ZOZOチャンピオンシップ」。スタンド席も有料で販売された。

©Hiroto Shimasaki

ZOZOマーケティング本部・ゴルフ事業部ディレクターの畠山恩さん。

©Yoshitaka Watanabe

最終ホールのギャラリースタンド。ソーシャルディスタンスを取りながら観戦できるよう、通常よりも座席数が少ないが、これも料金を支払った人のみ利用できる。

©Yoshitaka Watanabe

スポンサーとその関係者だけが利用できるコーポレートテント。

©Yoshitaka Watanabe

ソーシャルディスタンスを十分取りながら、最前列で選手たちのプレーを間近で観戦できるフロントローシートも発売された。

ZOZOってどんな会社?

2021年、松山英樹が優勝した「ZOZOチャンピオンシップ」は、日本の企業である株式会社ZOZOがスポンサーを務めるPGAツアーのうちの1試合である。
ここで少しZOZOについておさらいしておくと、1998年に創業者の前澤友作氏が輸入CD・レコードの通信販売を目的に会社を設立。
2000年1月にインターネット上のCD・レコードの輸入販売サイト「STMonline(エスティエムオンライン)」の運営を開始し、同年10月にアパレル商材を中心としたEC事業のさきがけとなるインターネット上のセレクトショップ「EPROZE(イープローズ)」の運営を開始した。
2004年12月に17のインターネット上のセレクトショップを集積したファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」の運営を開始。
2007年に東証マザーズへ上場、2012年に第一部に市場変更している。
2021年3月期の売上高1474億200万円(前期比+23.1%)、経常利益443億8600万円(前期比+60.6%)、従業員数1297人とコロナ禍でEC拡大の影響があるとはいえ、創業23年を経過し大きく成長している。

なぜZOZOは日本でPGAツアーを開催しているのか?

そして2019年からはPGAツアー「ZOZOチャンピオンシップ」を開催。
PGAツアー初の日本開催大会となり、初年度はタイガー・ウッズ、第2回大会は2021年「フェデックスカップ」王者のパトリック・キャントレー、第3回大会は松山英樹が優勝している。

ZOZOがなぜ、PGAツアーのスポンサーとなったのか。
「ZOZOチャンピオンシップ」事務局長である、株式会社ZOZOマーケティング本部ゴルフ事業部ディレクターの畠山恩さんは次のように語る。

「ZOZO創業者で前社長の前澤氏のゴルフへの愛が強かったのはもちろんですが、ZOZOのもっているビジョンとゴルフのもっているビジョンが一致しているからなんです。ZOZOのロゴマークの〇△□は、みな形は違いますが、面積が同じ。つまり、〝みんな違うけど、みんな一緒〟という考え方があります。ゴルフは、年齢や性別を越え、同じフィールドで一緒に戦い楽しめるスポーツ。両者は根本で理念が一致しています」

元々は前社長のゴルフへの大きな愛情と、企業理念とのマッチングが開催の大きな動機であることがわかった。

では、ZOZOはどれくらいの費用をかけて大会を開催しているのか? 

具体的な数字は開示してもらえなかったが、今回の「ZOZOチャンピオンシップ」の賞金総額は995万ドル(約11億円)。
観客はコロナ禍のため1日5000名限定で、チケットは、最も安い「1-Dayチケット」が1万8500円~2万5000円、最前列で選手を間近に観戦できる「フロントローシート」は4万5500円~5万2500円で販売された。
また、コース内では大会のロゴ入り記念グッズなどを販売。
これらの収入があったとしても、大会主催者として費用は少なくとも11億円+数億円は必要と考えられる。
加えて、テレビ放送のスポンサーフィーを支払わねばならないことなども考えると大きな出費だ。

経済効果だけでなく、日本のゴルフ界の未来にとっても大きな意味を持つ大会

©Yoshitaka Watanabe

松山英樹が優勝したことで、注目度が高まった2021年「ZOZOチャンピオンシップ」。

©Hiroto Shimasaki

スポンサーはZOZOだけではない。トップパートナーにリポビタン、プレミアムパートナーにサトウ食品、オフィシャルパートナーにテーラーメイド、ポロ・ラルフローレン、アース製薬、ポケット・カードと、サブスポンサーもおり、場内に商品を展示したり、出店したりしている。

©Hiroto Shimasaki

ロゴ入りグッズを販売しているマーチャンダイズテント。

©Hiroto Shimasaki

ゴルフグッズだけでなく、クッキー缶なども販売していた。

さて、1大会で11億円以上を費やしてPGAツアーの試合を開催することに、主催者としてどんなメリットがあるのだろうか?

「一番のビジネスである、ZOZOタウンを広く知ってもらえるチャンスの場になっていますね。
ZOZOタウンの利用者は若い世代が中心ですが、ゴルフをする親世代にもZOZOを知ってもらうきっかけになっています。
また、2020年夏から〝ZOZOゴルフ〟も立ち上げていますが、まずは知ってもらうことが大切。お陰さまで売り上げも伸びています」

試合を主催する企業は、会社の知名度アップ、会社のブランド強化、プロアマの活用によるCS向上、及びビジネスの拡大などを考える。
ZOZOは「ゴルフを楽しんでいるファンに、この大会を届けること自体が使命と考えています。それがビジネスにつながればいいですね。コロナ禍で心の隅に追いやっていた純粋に物事に感動することを、この試合で頑張っている選手の試合にかける思いや熱を通じて感じて頂けたら…」

実は社内でも、開催1年目は「ZOZOチャンピオンシップ」について、この大会がいかに大きな大会か、の認識が希薄だったという。
20年は米国開催、21年は入場制限で社員も全員参加できなかったが、次回からは、再び社員が総出で参加し、この大会の意義を共有できればいいと考えている。

日本企業がPGAツアーの試合のスポンサーを務めることによって、日本人選手が世界へ羽ばたく大きなきっかけ作りができる。ZOZOは大会の出場枠として、JGTO(日本ゴルフツアー機構)賞金ランキング上位7名、「ブリヂストンオープン」上位3名、スポンサー推薦8名の枠を持っているからだ。
トップアマの中島啓太も推薦で昨年の「ZOZOチャンピオンシップ」に出場したが、このように日本人選手が、日本にいながらにしてPGAツアーの舞台を経験し、飛躍するチャンスを得られることは大きい。
ZOZOとPGAツアーとの契約はあと3年あるが、その後の継続も望みたい。
日本は世界で2番目のゴルフ大国。
ZOZOがPGAツアーを開催する意味は、日本のゴルフ界にとって非常に大きい。

Text/Hirato Shimasaki

嶋崎平人

ブリヂストンスポーツでゴルフ用具の企画開発、トーナメント運営等を担当。退職後は、「マスターズ」を始め、トーナメント取材、ゴルフ関連ライターとし経済誌、雑誌などに執筆中。

Photo/Yoshitaka Watanabe,
Hirato Shimasaki
Tournament/2021 ZOZO Championship

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