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ゴルフの国際的な普及のために……
PGAツアーとLIVゴルフが合併

Text/Eiko Oizumi
Photo/CNBCの動画より , Getty Images

CNBC局の番組にそろって出演した、PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏(右)とPIF(サウジ政府系ファンド)のトップ、ヤシル・アル・ルマイヤン氏。約2年以上にわたって敵対関係にあった両者が和解し、合併するという電撃ニュースに、世界のゴルフファンや関係者、選手は大いに驚いた。

 今からちょうど1年前の今週、ロンドン郊外のセンチュリオンGCでLIVゴルフ第1戦「ロンドン大会」が開催された。その大会初日、ショットガンスタートで選手たちがティオフすると、PGAツアーのコミッショナー、ジェイ・モナハン氏は書簡という形で、LIVゴルフに出場したPGAツアーメンバーに無期限での出場停止を伝え、大きな反響を呼んだのだ。それ以来、PGAツアーとLIVゴルフの間ではいくつもの訴訟が生まれ、敵対関係にあった。

 あれから1年。いまだLIVゴルフとの関係に歩みよりはなく、世界のゴルフは分断したままのように思われていた両者が、突然合併するという驚きの声明を発表した。正式に言えば、PGAツアー、DPワールドツアー(欧州ツアー)、PIF(サウジ政府系ファンド)の三者が、ゴルフ界統一のために各団体のゴルフ関連事業及び、権利を統合し、世界最高の選手による最高の戦いと興奮を提供することで、全ての関係者が恩恵を受ける新しい共同所有の営利組織を設立する(組織名は未定)、という契約に署名したのだ。

 そしてこの発表をもって、当事者間で係争中の全ての訴訟は和解し、終結するとし、2023年シーズン終了後にPGAツアー、またはDPワールドツアーへの再入会を希望するLIVゴルファーに対して、公正かつ客観的な手順を確立し、各ツアーの方針に従って、公正な再入会基準と条件を決定するために協力して取り組むことになった。つまり、LIVゴルファーが希望すれば、PGAツアーやDPワールドツアーに再び復帰できるというものである。

 PGAツアー・コミッショナーのジェイ・モナハン氏は次のように語っている。

「分裂と混乱の2年を経て、誰もが愛するゴルフというスポーツにとって、今日は歴史的な日となった。この革新的パートナーシップは、PGAツアーの持つ歴史、レガシー、競争重視主義の強さを再認識させ、DPワールドツアーとLIVゴルフ(チーム戦のコンセプトを含む)を組み合わせることにより、選手、ビジネスとチャリティのパートナー、そしてファンに利益をもたらす組織を形成する。我々が常に約束してきた、ゴルフ界最高峰の競争の舞台を提供し、未来へと前進することを、ファンは再認識するだろう」

「LIVゴルフと世界レベルの投資実績を持つPIFと、歩調を合わせて前進できることを嬉しく思う。PIFのヤシル・アル・ルマイヤン最高責任者のビジョンと、ゴルフ界の亀裂を解決するだけでなく、このスポーツを新たな高みに引き上げるという、協力的で前向きなアプローチを称賛する。これはゴルフ界にとっていい意味での新時代の幕開けとなるだろう」

 一方、PIFのヤシル・アル・ルマイヤン最高責任者は以下のように述べた。

「PGAツアーと提携し、PIFの比類のない成功や、世界中のビジネス、セクターに革新と成功事例をもたらしてきた実績を活用できることを誇りに思う。我々は歴史と伝統を維持しながらも、さらに進化する機会がゴルフというスポーツにあると信じている。このパートナーシップは、ゴルフの影響力を拡大する最良の機会。ジェイ・モナハンやキース・ペリー(DPワールドツアーCEO)と協力し、ゴルフの最高の姿を世界中の人々に提供するのを楽しみにしている」

 なおPIFは、LIVゴルフが2年目のシーズンの途中だが、PGAツアー、DPワールドツアー、PIFはチーム戦を今後さらに盛り上げ、成長させるために協力し合うという。

 契約条件に基づき、新組織の取締役会は、ゴルフ関連の全ての商業面の運営、ビジネス、投資を監督及び指揮するとし、ファン、スポンサーや全ての関係者にとって魅力的かつ有益な競技スケジュールを確立する。現時点ではPIF、PGAツアー、LIVゴルフ、DPワールドツアーのみが新組織の出資者となるが、今後PIFは、新組織への追加出資の独占権をもつとともに、PGAツアー、LIVゴルフ、DPワールドツアーと新組織への出資の第一拒否権を有するという。PGAツアーは取締役会の過半数を任命し、組織の過半数の議決権を保有する。

 これとは別にPGAツアーは501(C)(6)非課税法人として存続し、大会の認可、競技とルールの管理、その他全ての運営上の責務を含む、大会の管理体制を維持。ジェイ・モナハンはコミッショナー、エド・ハーリヒーはPGAツアー・ポリシーボードの会長となり、PIFのヤシル・アル・ルマイヤン最高責任者がPGAツアー・ポリシーボードに加わる。DPワールドツアーとLIVゴルフは、それぞれのツアーで現在の管理体制を保持する。

 新組織の取締役会には、会長としてアル・ルマイヤン、最高経営責任者としてモナハンが含まれる。取締役会には、アル・ルマイヤン、モナハン、ハーリヒー、PGAツアー・ポリシーボードメンバーであるジミー・ダンで構成される執行委員会も含まれる。取締役会の名簿は後日発表され、3人の創設メンバー全員が代表を務めることが予想される。

 なお、フィル・ミケルソンやブライソン・デシャンボーらLIVゴルファーは、この決定に対して喜んでいる一方、大金をちらつかされても忠誠を誓い、LIVに移籍しなかったPGAツアーメンバーの中には、モナハンに裏切られたと感じる選手も多く、大きな波紋を呼んでいる。

電撃ニュースを発表したあと、「カナディアンオープン」会場で選手とミーティングを行なったジェイ・モナハン(左)。選手からは「偽善者」との声もかかった。

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