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世界ランク1位のスコッティ・シェフラー
大逆転で金メダル獲得!

Text/Eiko Oizumi Photo/IGF, Getty Images

左から銀メダリストのトミー・フリートウッド(イギリス)、金メダリストのスコッティ・シェフラー(米国)、銅メダリストの松山英樹。

 「パリ五輪ゴルフ」でもやっぱりこの男が主役だった。世界ランク1位で、「五輪ゴルフ」初出場のスコッティ・シェフラーが、最終日に大逆転劇を演じて、米国に金メダルをもたらした。

 3日目を終えてジョン・ラーム(スペイン)、ザンダー・シャウフェレ(米国)が14アンダーの首位に立ち、1打差の3位にトミー・フリートウッドという展開で迎えた最終日。世界ランク1位のスコッティ・シェフラーが62という好スコアをマークし、通算19アンダーでホールアウト。後続組のトミー・フリートウッドが、18アンダーで終了したことで、シェフラーの金メダルが決まった。最終ラウンドで逆転し、金メダルを獲得した初の選手である。

「五輪での戦いは、僕の人生の一部であり、とても一生懸命取り組んでいた。競技で戦うことが大好きだが、ここで戦えたこと、金メダルを獲得できたことを誇りに思う」

 3日目のプレーが終わった時点で、トップ5にも入っていなかったシェフラーに対して、「今週の金メダルはないだろう」と多くの人は予想していた。しかし最終日の彼は、世界王者らしくベストパフォーマンスを見せ、9バーディ、ノーボギーという圧巻のプレー。終盤でジョン・ラームが大きくスコアを崩し、フリートウッドがスコアを伸ばしきれなかった中、大きくスコアを伸ばしたシェフラーが金メダルを獲得したのだ。

「オリンピックに参加できるのは、本当に特別なこと。ゴルフがオリンピック競技になったことは、私たちにとってとても楽しいことだ。最初のオリンピックの後、ゴルフ界で非常に高い位置を占めるようになったと思うし、今でもその価値は変わらないと思う。国を代表することは、非常に特別なことであり、それを誇りに思う」

米国の国歌が流れ、星条旗が掲揚されたのを見て、涙を流したシェフラー。

 シェフラーは小さい頃から両親に、国歌が流れる時は帽子をとって胸に手を当てるよう教えられ、アメリカ人であること、自由であること、そして自分の国を代表することの意味を教えられた。そして今回、五輪で金メダルを獲得し、表彰台で国歌を聴き、一番高い位置に星条旗が掲揚されているのを見て、感極まり、涙を流した。

「もともと僕は感情的な人間なんだ。マスターズで優勝した直後にも、実はトイレでかなり泣いたんだ」
五輪ゴルフについて、ゴルフの五輪への復帰当初(リオ五輪)から、男子プロたちにはその価値を軽視されがちだったが、こうして世界ランク1位のシェフラーが全力で金メダルを獲りにいき、表彰台で涙を流したことで、五輪男子ゴルフの価値はメジャー並みであることが証明されたと言っていいだろう。
 本人は、メジャーも五輪の金メダルもランク付けはしないと語っているが、高額賞金がなくても、フェデックスカップポイントが付かなくても、米国を代表することに誇りを抱き、素晴らしい選手たちと全力でメダル獲りの戦いに加われたことに大満足していた様子だった。

 特に、最終日のシェフラーの猛追に大きく貢献したのが、キャディのテッド・スコットの存在だ。
「4番〜9番までバーディが取れず、いいパットを打っているのに入らなかった。そんな時、キャディのテディが我慢強くプレーすることを手助けしてくれ、グリーンの読みもうまくいった。
テディはいつも、僕を正しい精神状態に保つのが得意。正しいことをしていると思っても、バーディを取れないのは非常にフラストレーションがたまるものだが、そんな時に、テディは我慢強くプレーするのを助けてくれたんだ。また、金曜日のバック9から、テディが全てのパットを読んでくれるようになった。以前もそうしていたが、今年はあまりやっていなかった。今回は、ライン読みが僕にとって難しかったから助かったよ」

 ラウンド中、ラームが20アンダーに達した時は、リーダーボードで確認することができたが、自分自身がメダル圏内にいるのかどうかもわかっていなかったという。ただ、できるだけバーディをとって、リーダーボードを駆け上がり、メダルを狙うということに集中していた。そんな精神状態を保ってくれたのがスコット。彼は以前、ババ・パトソンのキャディを務めていたことがあり、開催地のル・ゴルフナショナルも「ライダーカップ」で経験済み。彼の金メダル獲得への大きなアシストにつながった。

会場には、今年生まれたばかりのベネットちゃんとメレディス夫人の姿もあった。

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