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松山英樹もかつて2勝し、世界に羽ばたくきっかけとなった
「アジア太平洋アマチュア選手権」で優勝した
ディン・ウェンイーの苦悩

Text/Eiko Oizumi Photo/Asia Pacific Amateur Championship

第15回「アジア太平洋アマチュア選手権」で優勝した、中国の19歳、ディン・ウェンイー。「マスターズ」「全英オープン」の出場権を獲得した。

 中国のディン・ウェンイーが「アジア太平洋アマチュア選手権」の最終ラウンドを67で回り、通算12アンダーで優勝。パー70の太平洋クラブ御殿場コースで4日間連続の67をマークし、中国の同胞、チョウ・ズチンに1打差で勝利した。富士山の麓で雨のコンディションに苦しみながら、戦い抜いた末のこの勝利は、15回の歴史で中国選手による5回目の優勝となり、国別最多勝記録となっている。

「本当に気持ちがいいです。昨年はプレーオフで敗れて、これ以上良いプレーはできないと感じていました。今年はトロフィーを手にして、驚くほど素晴らしい気分です」とディンは語った。「17番ホールをプレーする前、バーディーを狙うのではなくパーをセーブしたかったんです。18番のバーディーパットでは緊張しました。なぜかわかりませんが、3~4フィート、オーバーしてしまいました。でもカップインできました」

 ディンは、世界アマチュアゴルフランキングで5位と、この大会で最も高いランクの選手として出場。昨年は、ロイヤルメルボルンGCで開催された今大会で、プレーオフの2ホール目で敗れていた。

 19歳の彼は最終ラウンドで、3番でバーディを奪って首位に立ち、9番でさらにバーディを追加。ハーフターン時点で18歳のチョウ・に3打差をつけた。チョウはパー5の18番でバーディを奪い、一時的に首位タイに立ったが、ディンが17番(パー3)でバーディを奪取。18番ではティーショットがバンカーに入り、140ヤード地点にレイアップしたものの、その後のアプローチショットはグリーン奥に着地し、2パットでカップイン。今大会を制した。

 優勝記者会見で、ディンはこれまで憧れてきた中国人選手に、李昊桐(ハオトン・リー)を挙げた。

「間違いなくハオトン・リーです。彼は『全英オープン』でトップ3に入ったと思います。本当に良い選手であり、兄のような存在です。私は中国の選手が何かできないとは思いません。ただ、私たちには“何でもできる”という信念があります」

一方、2位に入ったチョウは、以下のように語った。

「今週のパフォーマンスには満足しています。大きなミスはありませんでした。ティーショットは全て良かったです。数回のミスはありましたが、このコースで4日間でボギーが6つだけというのはかなり良い結果です。ディンの優勝をとても嬉しく思います。トロフィーがまた、中国チームのもとに戻ってきてよかったです」

 この勝利により、ディンはAACの優勝トロフィーを手にしただけでなく、「マスターズ」、ロイヤルポートラッシュでの第153回「全英オープン」、ロイヤルセントジョージズでの第130回「アマチュア選手権」への出場権を獲得した。だが、大会が始まる前から、今大会終了後にプロ入りして、DPワールドツアーにプロとして出場したいと公表していたディン。優勝記者会見でそのことを問われると、「この大会前には優勝できるとは思っていませんでしたが、今となっては問題ですね……。たぶん来週にはプロ入りすると思います。アマチュアでもプロでも、これらの大会には出たいと思っています」といい、2つのメジャー出場を諦め、DPワールドツアーの出場権を取ることに決めた。

アリゾナ州立大に在籍するディン・ウェンイー。身長は192センチ。
今年の「アジア太平洋アマチュア選手権」の1、2位を独占した中国。左は優勝したディン・ウェンイー、右は2位のチョウ・ズチン。

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