• 国境や人種を超えたスポーツの力とゴルフの愉しさをすべての人に。
  1. ホーム >
  2. トーナメントレポート >
  3. 世界選抜チームが2日目のセッションで完勝
    したのは、2...

世界選抜チームが2日目のセッションで完勝
したのは、2003年以来、2回目の快挙!
それでも、なぜ世界選抜チームは勝てないのか?

Text & Photo/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images

今年の世界選抜チームメンバー。松山英樹(右下)はポイントリーダーとして出場した。

 大会2日目、今まで苦手としてきた「フォーサム」で、5戦全勝を挙げた世界選抜チーム。過去、1日のセッションで米国に全勝したのは、2003年以来初めてという快挙達成に、世界選抜チームも、カナダで応援する観客達も大いに沸いた。だが、結果は7ポイント差という大差で敗北。1998年に世界選抜が唯一優勝したときの5マッチ全勝プレーヤー、丸山茂樹も副キャプテンとして参加していたが、残念ながら26年ぶり2度目の勝利を見ることはなかった。

 世界ランキングの話をすれば、米国選抜は1位のスコッティ・シェフラー、2位のザンダー・シャウフェレ、4位のコリン・モリカワ……とトップランカー揃いのドリームチーム。最下位でもマックス・ホーマの25位である。米国選抜の世界ランクの平均が12.42であるのに対し、世界選抜は7位の松山英樹以外は全員2桁台の選手。最下位のマッケンジー・ヒューズは61位で、

 世界ランクの平均は34.42位のため、米国との実力差があるのは明白だ。しかし、前回の2022年の平均は49位で、今年はかなり改善されていたと言っていいだろう。マッチプレー形式の試合では、必ずしも世界ランク上位者が勝つわけでもなく、いわゆるアンダードッグ(劣勢で勝ち目のないチームや人)が勝利する場合も多い。欧米チームの対決「ライダーカップ」を見てもわかるように、欧州チームの方が世界ランク上では常に米国よりも格下であるにもかかわらず、過去14回の大会で10勝、ホームでは1997年大会以来、負けなしの記録を更新中である。となると、世界選抜も欧州のように、強い米国を撃破する可能性は十分あるといっていいはずだ。ただ今のところ、それがうまく機能していないのが実情だ。

 過去、選手の実力差や、チームの結束力(世界選抜は常に言葉の壁について取り沙汰されてきた)が原因で優勝ができないと言われてきた。しかし、ここ最近の世界選抜チームを見ても、ほとんどが英語でコミュニケーションできるメンバーだし、普段からPGAツアーでともに戦っている選手ばかりなので、知らない仲ではない。しかも若手が多く、トム・キム、ミンウー・リーなど、チームに新たなエネルギーを与える存在もいる。ただ、「プレジデンツカップ」や「ライダーカップ」といったチーム戦が毎年ある米国に比べると、2年に1度しかないので、選手間のコミュニケーションや慣れという意味では、多少不利なのかもしれない。

 今年の場合、接戦で敗れるパターンも多く、ポイント差ほどの格差は実際にはないと思われるが、それでも負けたのは、キャプテン達の采配の悪さにあると見られている。

 3日目は午前4マッチ、午後4マッチが行なわれたが、クリスチャン・ベゾイデンハウト、ジェイソン・デイ、ミンウー・リー、アン・ビョンフンの4人は、1日中ベンチ入りで、戦う機会がなかった。その代わり、その他の選手たちは、早朝から夕方遅くまで1日2マッチを戦った。しかも同日に、まったく同じペアリングで繰り返しプレーしたのだ。これは同大会史上、初の出来事で、メディアや観客達は一瞬「え?本当に?」と目を疑ったものである。どんなに調子が良い選手でも、「疲労」がたまっていては、最高のパフォーマンスを引き出すことは難しいし、午前中の選手達の調子を見て、不調気味の選手を下げることもできたはずである。

 3日目終了後、マイク・ウィア主将は「昨日(2日目のフォーサムで)、5勝0敗の勢いがあったので、ベストな選手を送り出そうと思った。いくつかの他のことについても計画があり、検討したが、今日はうまくいかなかった」と語っている。

 ベンチ入りの4人の誰かが、午後のセッションに出場していれば、負の流れが変わったかどうかはわからない。しかし、今回の経験で、「前日、どんなに調子のいい選手でも翌日もいいとは限らないし、1日2マッチでは疲労がたまる」ということははっきりしただろう。選手達はチームの優勝のために貢献したいと思っているし、キャプテンに言われれば疲れていても全5戦で戦いたいと思っているはずだ。そこでキャプテン、あるいは副キャプテンが、選手達の調子を見抜き、誰を出すのか、休ませるのかを判断しなければならない。ここ最近は、データを重視してペアリングや選手出しを検討している世界選抜だが、過去の数値だけを見て判断していたのでは、生身の人間、しかもゴルフという水ものを扱う際はうまくいかないだろう。約11年ぶりに副キャプテンを務めた丸山茂樹も「あまりにもデータを意識しすぎている。もっと伸び伸び、自分のゴルフをやってこい!みたいな言葉が、選手達には必要な気がする」と語っていた。 今回の苦い経験をもとに、次回の大会でキャプテン達はどのような戦略を立てるのか、興味深いところだ。

世界選抜チームに熱いエネルギーをもたらしている、盛り上げ役のトム・キム(左)。右はキム・シウー。
副キャプテンの丸山茂樹(左)、アーニー・エルス(中央)に見守られながら、練習ラウンドを行なう松山英樹。
カナダ・モントリオールの大ギャラリーに声援を送られながらティーオフする松山英樹。世界選抜にとってはホーム開催。
世界選抜チームのキャプテン、マイク・ウィア(前列中央)と副キャプテンたち。

関連する記事