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「全米プロ」に続き、「全英オープン」で逆転優勝
目指すはグランドスラム達成

Text/Eiko Oizumi
Photo/R&A

「全英オープン」で メジャー2勝目を飾ったザンダー・シャウフェレ。

 ロイヤル・トゥルーンで開催された、152回「全英オープン」は、悪天候の最終日に65をマークして、通算9アンダーとしたザンダー・シャウフェレが初優勝。5月に「全米プロ」でメジャー初優勝を飾ったばかりだが、早くもメジャー2勝目を手にした。2位タイには、2打差の7アンダーでジャスティン・ローズ、ビリー・ホーシェルが入賞。シャウフェレは、世界ランキングもローリー・マキロイを抜き、3位から2位に浮上。30歳8ヶ月26日で、PGAツアー9勝、メジャー2勝を達成した。なお、同年に「全米プロ」と「全英オープン」で優勝したのは、2014年のローリー・マキロイ以来、10年ぶり。フェデックスカップ・ポイントランキングでは、スコッティ・シェフラーに次ぎ、2位のままとなっている。

「全英オープンで優勝することを、ずっと夢見てきた。黄色いリーダーボードと、ファンのスタンディングオベーションを見ながら18番を歩くのは、本当に最高だ。僕の人生で最高な気分の一つだ。歩いている時に鳥肌がたったけど、すぐに集中しなければならなかった。まだ試合は終わってなかったからね」

 最終日は、ジャスティン・ローズやスリストン・ローレンスらが入れ替わり立ち替わり首位に立つ中、バック9で4つバーディを獲ったシャウフェレがリーダーボードの一番上に浮上。ローズも5バーディ、1ボギーと健闘したが、シャウフェレの盤石なプレーを覆すことはできなかった。通常、メジャーで1勝を挙げるのは難しく、2勝目はさらに難しいと言われているが、シャウフェレは通常通りに冷静なプレーぶりで、最終日は終始ピンチに陥ることもなかった。6バーディ、ノーボギーの66というスコアが、その証だ。

「(2勝目を遂げるのも)非常に難しかった。でも最初の勝利(全米プロでの勝利)が、今日のバック9で大いに役に立った。ある種の冷静さを持って戦うことができ、この試合で最も難しいバック9で大いに助けられた」

「ミスをかなり抑え込んだことが、今週最もうまくやったこと。風雨の中での本当に難しいプレーが、1回だけで済んだのは幸いだった。自分でやろうとしていたことの多くをコントロールできた」

「同年にメジャーで2勝するなんて、夢のよう。1勝するのに時間がかかったが、今や2つも勝つことができて、格別。今日のラウンドは、今まででプレーした中で最高のラウンドだった」

 「全米プロ」では両親が不在の中、メジャー初優勝を飾ったが、今回は父のステファンさん、母のピンイーさんも見守る中、マヤ夫人、兄、叔父と、チーム・シャウフェレのほぼ全員が見守る前での勝利を達成。

「僕を最初から支えてくれた人たちが、みんなここにいる。今夜は素晴らしい夜になるだろう。僕は13歳頃にゴルフを真剣にやると、決心したが、15〜16歳の時に、父と座って、本当にやりたいことや、目標について話し合った。父と一緒に座って、他の選手たちがメジャーや大きな試合で勝つのを見てきたんだ。全英オープンでプレーするまで、選手たちが18番ホールを歩く姿を毎年見てきたし、それは僕と父の2人がずっと夢見てきたこと。今夜は父がクラレットジャグ(優勝トロフィ)に飲み物を入れて、最初の一口を飲むので、父が何を入れるかは決めるだろう」

と語った。ステファンさんは、シャウフェレにとって父であり、コーチであり、メンターでもある。優勝直後、ステファンさんのサングラスの奥には涙が溢れていたが、欧州人の彼にとって、「全英オープン」で息子が優勝することほど、嬉しいことはないだろう。しかも、クラレットジャグに酒を入れて、初めて飲み干せる特権を、親孝行な息子が譲ってくれた。

 そして、シャウフェレの「優勝は結果にすぎない」と言うモットーを、今大会の優勝直後も語っていた。

「クラレットジャグを手にするのは素晴らしいが、それも結果に過ぎない。時にはうまくいき、特にはうまくいかないこともある。今日は多くのことがコントロールでき、優勝を手放すつもりは毛頭なかった。過去の厳しい敗北や、バック9で優勝を早く夢見て失敗した瞬間に比べて、今日はそうならないように自分を引き戻すことができた」

 同組でプレーしていたジャスティン・ローズは、シャウフェレの強さをこう分析している。

「彼は最高の状態にあり、素晴らしいプレーヤー。チャンピオンになるための全ての要素を持っている。パワーがあり、ウェッジがうまく、パターもうまい。ボールを遠くに飛ばすこともできるし、アイアンもうまい。多くの武器を持っているが、彼の最も評価されていない点の一つは、メンタリティの強さ。彼は非常に冷静な選手で、自分の思い通りのプレーができているように見える。多くの可能性もあり、これからの将来が楽しみ」

 ゴルフもうまく、メンタルも強い。そして、優勝は結果に過ぎない、と次の目標へ頭をすぐに切り替えて、さらなる高みを目指すシャウフェレにとって、次なる目標は、グランドスラム達成だ。今季のメジャーはこれで終了のため、来年の「マスターズ」までその目標はお預けだが、今年はもう一つ、「パリ五輪」での2回連続・金メダル獲りの期待もかかる。

最終組から3組目で、ジャスティン・ローズとともにティーオフしたシャウフェレ。
終わってみたら、ジャスティン・ローズ、ビリー・ホーシェル

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