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スコッティ・シェフラー、ラウンド前に逮捕され、
拘置所でストレッチ。66をマークし、優勝争いへ

Text/Eiko Oizumi
Photo/PGA of America

拘置所からコースへ向かい、短時間で練習をしたのちに10番ティに立ったシェフラー。

 世界ランク1位のスコッティ・シェフラーに、前代未聞の事件が起きた。第2ラウンドの午前中のプレーに備えて、午前6時過ぎにコースに到着しようとしたシェフラーが逮捕されたのだ。

 午前5時過ぎに、試合会場に物資を運ぶベンダーの1人が、シャトルバスに轢かれて死亡。コース周辺には警察官が集まり、混乱した状況の中、交通整理をしていた。  そして午前6時過ぎにシェフラーがコース入りしようとしていた時も、周囲はまだ混乱しており、警察官が交通整理をしていた。シェフラーは警察官の指示に従って行動していたが、別の警察官の指示には気づかず、そこに“大きな誤解”があり、別の警察官の指示に従わなかったため、車から出るよう言われ、手錠をかけられ、警察へ連行されたのだった。

大勢のギャラリーに見守られ、応援を受けながらのプレー。

 その後、誤解が解けて警察官側もシェフラーの言い分を理解し、釈放。コースに向かった彼は、第2ラウンドをプレー。逮捕され、練習もままならないままスタートしたにも関わらず、6バーディ、1ボギーの66で回り、通算9アンダーの3位タイに浮上した。

「私の状況については、混乱した状況であり、大きな誤解が生じたものだった。皆さんががっかりするかもしれないが、詳細についてはコメントできない」と断りを入れながらも、今朝の逮捕されるまでの経過や、逮捕後の話を記者会見でしっかり語った。

「正直、何が起こったのかよくわからない。まだ頭が回っていない感じで、今朝の出来事は説明しがたいが、拘置所でストレッチをして過ごした。これは私にとって、初めての経験だった。待っている間にウォームアップを始めたが、まだ今日、ここでプレーできる可能性があると感じていた。ルーティーン通りにして心拍数を下げようとしたが、頭がまだグルグルと回っている感じがする。でもゴルフができて幸運だった」

 コースに到着したのは、ティータイムの約1時間前。普段はもう少し早くコース入りし、練習のルーティーンに従って時間を使うのが彼のやり方だが、今日はたった1時間弱の中でショットもパットも短縮しながら練習を行なわなければならなかった。そのためか、「いつも通りのプレーするまでに数ホールかかった。準備の時間は大切だが、数ホール経ってから落ち着いた」と語った。

 このような状況でメジャーを戦わなければいけない場合、通常は誰もが精神的に不安定になり、スコアを崩す恐れもありうるが、シェフラーは逆に、コリン・モリカワやブライソン・デシャンボー、松山英樹らの第2ラウンドのベストスコア65に次ぐ66をマークし、一気に4位タイへ浮上。世界ランク1位らしい強さを見せた。

 彼は精神面も強く、少しのことでは動じない強心臓の持ち主と思われているが、実際は好スコアとは裏腹に、さすがの彼でもショックで、体が震えていたのだという。

「非常に動揺した。私を拘置所に連れて行った警官はとても親切で、車の中での会話で落ち着かせてくれた。そして待っている間に、彼に『ちょっと一緒にいてくれませんか?』と頼んだんだ。僕は怒ってはいないけど、ショックで体が1時間ほど震えていたんだ。こんな感覚になったことは、今までになかったよ」

 シェフラーは親切な警察官に付き添われ、冗談も交わしながら、サンドイッチをもらって食べたという。コースに出てからもショックと恐怖で震えは止まらなかったそうだが、心を落ち着け、呼吸を整えようとし、冷静にプレーをしようと心がけた。ポーカーフェースの彼の精神状態が、そんな状況だったとはプレー中の姿を見ても窺い知るよしもないが、「ファンの応援が背中を押してくれた」とシェフラーが語るように、ファンはシェフラーに好意的で、彼らの後押しが彼の気持ちを落ち着かせ、目の前の一打に集中させたようだ。早朝からの珍事に動揺したシェフラーだったが、世界ランク1位らしい強さを見せた1日だった。

ラウンド後に記者会見に臨んだシェフラー。朝の出来事について語った。
シェフラー逮捕時に警察に撮影された写真を、早速使ってTシャツを作り、現地に着用してきたファン。アメリカ人は、なんでもTシャツにするのが早い!

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