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藤田寛之&宮本勝昌が
3回目の「全米プロシニア」に臨む

Text & Photo/Eiko Oizumi

芹澤信雄に師事し、これまで活躍を遂げてきた藤田寛之(左)と宮本勝昌。藤田はチャンピオンズツアーメンバーとして、今大会に臨む。

 

  5月22日〜25日に、ワシントンDC郊外のコングレッショナルCCで「全米プロシニア選手権」が開催され、日本勢は、今年からチャンピオンズツアー(米シニアツアー)メンバーの藤田寛之と、藤田同様、チーム芹沢(芹澤信雄に師事)の宮本勝昌、片山晋呉、兼本貴司が出場する。昨年のチャンピオンは、現在LIVゴルフで活躍するリチャード・ブランド。2013年には井戸木鴻樹が日本人初のチャンピオンに輝いている。

 藤田にとっても宮本にとっても、今大会は3回目の出場。宮本は初出場を果たした2023年に優勝争いの末、10位タイに入っている。

「初年度は何が何だかわからないままやってきて、浮き足だったままプレーしたら2日目までいい成績で、一瞬優勝争いにも食い込んだ。2回目の去年は、鼻息を荒くしてやってきたけど、まったくうまくいかず39位タイに終わってしまった。松山選手も言っているけど、あまり自分に期待しすぎない方がいいのかな。でも彼のマスターズへの熱い思いを見ていたら、そういうパッションがないと優勝できないだろうし、いつもどうやって試合に入っていっていいかわからない。だから、今回はちょっと初日に不安があったとしても、ピークを試合中に持ってくるために1日遅めに入ってきた。ピークを長時間保つのは難しいですからね。2〜3日目にいい感じにできたらいいなぁと思ってます」(宮本)

 宮本は藤田のように、チャンピオンズツアーを主戦場に戦いたいと思っているが、予選会を勝ち抜くのはなかなか至難の業だ。今年も予選会を受ける予定だが、一方で、昨年の藤田のようにメジャーで上位に入ってポイントを稼ぎ、今年のチャンピオンズツアーのファイナルに出場してシード権を獲得することも視野に入れている。

「99年にPGAツアーに来た時は、優勝争いができるとは思わなかったし、予選通過が関の山。だけど、今の方がチャンスがあると思う。去年、藤田さんは全米シニアオープンで悔しい思いをしたけど、僕も見てて悔しかった。夢を見られますよね」

 一方、チーム芹沢の兄弟子の藤田は、昨年の「全米シニアオープン」でプレーオフの末敗れたものの、チャンピオンズツアー「シモンズバンク選手権」で3位タイ、最終戦の「チャールズ・シュワブカップ選手権」で26位タイに入って、今季のシード権を獲得。今年の2月の「ハッサントロフィーⅡ(19位タイ)」からスタートし、今大会で10試合目を迎えている。現在のところ、チャールズ・シュワブカップ賞金ランキング49位で、来シーズンのフルシード権を獲得できる36位以内に入るには、もう少し試合で上位に行く必要がある状態だ。

「移動や慣れない環境、経費などではしんどい部分もありますが、楽しいですね。この年齢で、また新たな恵まれた環境でゴルフができている。来たくても来れないステージに自分はいることができて、周りの選手たちを見るとスターばかり。こんなに楽しいことはないんじゃない?って思いますね。今はアメリカを満喫していますよ」

 チャンピオンズツアーは、選手層も厚く、技術のレベルが高い。しかも、コースは難易度が高く、簡単に上位争いできるほど簡単な場所ではない。若い頃であれば「もっとうまくなりたい」「強くなりたい」と思い、トレーニングを積んだり、ボールを打ち込んで自分を追い込むこともしただろうが、今は違う。もちろんこの場所にできるだけ長くいたいとは思うが、かといって、苦しい思いをして自分を追い込むことはしたくないのだという。

 藤田はゴルフ人生を山登りで例える。

「自分の人生で日本で賞金王を獲った時が山の頂上だとすれば、今、シニアツアーに出ている自分は、山を降りている状態。山登りをしていた時は、試練とか苦しみを乗り越えながら、とにかく上を目指していたが、帰りはちょっとのんびりといろいろな景色を見ながら、ゆっくり楽しもうと思う。そしてちゃんとしっかり降りきっていこう、というスタンスなんです。登る時は重装備だけど、帰りは荷物を置いて、軽装で。まさかチャンピオンズツアーという世界で実際プレーするとは想像していなかったけど、周りからもプレッシャーをかけられることもなく、自分でそこまでプレッシャーをかけることもなく、楽しみながら下山したいんです」

 これまでコツコツと頑張ってきた自分に、神様がご褒美をくれた、という心境で今はアメリカでプレーしているのだという。そしてきつい練習やトレーニングをしてまで、この場所にい続けることを目標とはしていない。だが、周囲のうまい選手たちを見ると「もうちょっと練習しようかな」と、日本にいる時よりも練習量が増えていたりもするそうだ。

「ロッコ(メディエイト)のペタペタのところからのアプローチとか、カーク・トリプレットのとにかく真っすぐピンに飛んでいくアイアンやグリップ、フェースのスクエア感がすごい。そういうのを見た時は、どうやって打ってるんだろうって練習している時に見に行ったりもしますよ」

 いよいよ「全米プロシニア選手権」が今日から開幕。チャンピオンズツアーのシード権を来季も維持したい藤田にとっても、チャンピオンズツアーで藤田と共にプレーしたい宮本にとっても、大事な一戦となる。

フェリペ・アギラ(チリ・左)とリカルド・ゴンザレス(左から2番目)と話をする藤田(右)。

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