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「子供の頃からの悪い癖が出た」
パドレイグ・ハリントンの終盤の崩落

Text & Photo/Eiko Oizumi

ラフから脱出させるハリントン。

 最終日、一時は10アンダーまでスコアを伸ばし、2022年「全米シニアオープン」以来のシニアメジャー2勝目を飾るかと思われたパドレイグ・ハリントン。15番ホールでダブルボギーを叩き、8アンダーに落としたが、そこからスコアを伸ばすことができず、最終ホールでさらに一つ落として7アンダーでホールアウト。トーマス・ビヨーンと並び1打差の2位タイに終わった。

 彼は前半で32をマークし、通算7アンダーへ浮上。さらに11番、12番、14番でバーディを奪い、通算10アンダーに到達した。「14番までで7アンダー。もっと伸ばせたかも。逆立ちできるくらいの気分だったよ」とハリントンは語った。その時点では、カブレラが3組後ろで追っていることなど気にもしていなかった。「あの時点ではすべてがうまくいってた」と言う。

 だが、突然歯車が狂った。15番ホール(424ヤード・パー4)でのダブルボギーについて、彼は次のように分析した。

「自分は子供の頃から、自信過剰になる癖があるんだ。それが15番のティーで出てしまった。いつもそれで苦しんできた。調子に乗って、集中力を欠いてしまうんだ。本来なら、簡単なティーショットだった。5番ウッドで、軽くドローをかけて打つだけ。でも、集中しきれず、最後の一瞬でパニックになり、ひどいフックになった」

 深いラフからの2打目は、再度ラフに入り、3打目でようやくグリーン手前15ヤードへ。そこからパターで寄せ、約4メートルのパーパットを外して、8アンダーに後退した。

 ほぼ同じタイミングで、カブレラが13番でバーディを奪って追いついた。さらに、ハリントンがつまずいた15番でカブレラがバーディを獲り、逆転。ハリントンは16番のパー5でティーショットをミスしてバーディを逃し、17番パー4ではフェアウェイをとらえながらバーディチャンスを作れず、18番では大きく右にティーショットを曲げた。

 だが、そこからのリカバリーは見事だった。高いウェッジショットで木越えを成功させ、グリーンオン。約10メートルのバーディパットは決まらなかったが、内容には納得していた。

 だが、次の1メートル弱のパットは、読み切れずに外してしまった。18番でボギーを叩き、通算7アンダーでホールアウト。彼は自らの「自信過剰」という過去の過ちについて語り始めた。

「18歳のときに『アイリッシュユース選手権』で同じことをやった。残り3ホールで2打リードしていて、気が抜けたんだ」

 さらに、1999年に勝った「全英オープン(カーヌスティで開催)」の話も持ち出した。

「あのときは、どんなに短いパットでも『これを外せば負ける』と自分に言い聞かせていた。その恐怖が、逆に自信過剰を抑えてくれた」

 カブレラの最終ホールのグリーン上で、約10メートルから2パットでいければ、2打差で優勝が決まる、という場面をハリントンはテレビで観ていた。「こうなったら、2パットで(2打差で)優勝してほしい」と願ったが、最初のパットは約2メートルもショート。「ああ、ダメだ……」と沈痛な声を漏らした。

「パーパットを彼が外したら、もっと悔しくなる」

 観ていられなくなった彼は、その場を後にし、立ち去った。結局、カブレラがパーを逃してボギーでホールアウト。通算8アンダーとなり、結果は1打差の敗戦に終わった。最後の4ホールで3オーバーを叩いた自分自身に、ますます悔しさが募ったハリントンだった。

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