Text & Photo/Eiko Oizumi

過去、「全米オープン」で2位に入ること6回――「マスターズ」「全米プロ」「全英オープン」で優勝しているかつての世界ランク2位、フィル・ミケルソンは、2013年「全英オープン」で優勝した時点で、キャリアグランドスラムを達成するには、「全米オープン」での優勝を残すのみとなっていた。しかし、12年経った今もグランドスラムは達成できておらず、2021年「全米プロ」優勝によって獲得した出場資格の最終年である今年の「全米オープン」に出場したが、1打差で予選落ちに終わった。
さて、ミケルソン自身は「今回が最後の全米オープンになるだろう」と大会前に語っていたが、彼にとって最後の「全米オープン」になるかどうかは、まだ不明だ。今後、彼が「全米オープン」に出場する道筋はいくつか残されており、①他のメジャーで優勝(5年間の出場資格が与えられる)、②「全米オープン」の予選会を通過、③全米ゴルフ協会からの特別推薦、④「全米シニアオープン」で優勝という方法がある。実際、2021年には全米ゴルフ協会から特別推薦の招待状を受け取っていたが、大会前に「全米プロ」で優勝したため、自力で出場することができたという経緯がある。
第2ラウンドの15番ホールのティーグラウンドにいた時点でのスコアは、4オーバー。予選カットラインは7オーバー(6オーバーまでが予選通過)となっていたため、あと4ホール、パーでしのげば予選通過となるはずだった。しかし、15番ホールと17番ホールでダブルボギーを叩き、通算8オーバーに。最終ホールを迎えた段階で、バーディを取らないと予選通過ができない状況に追い込まれた。ピンの右に乗せ、バーディパットを打ったが、わずかに外れ、パー。1打差で予選落ちとなった。
彼がバーディパットに入る前、重く垂れ込めた暗い曇の下、小雨が降っていた。そして遠くでは雷鳴が聞こえ、光ってもいた。普通なら、この時点で中断のホーンが鳴ってもおかしくないほどだったが、中断にはならなかった。ミケルソンは空を見上げ、「このままプレーしていて、大丈夫なのか?」と言わんばかりの表情を浮かべていたが、そのままプレーは続行された。海外の大会では、雷が近づくずっと前に警告が出され、事前に避難するように言われることが多いので、この遅すぎるタイミングに、私自身も疑問に思った。彼がバーディパットを前に中断し、1度仕切り直したかったのかどうかは、わからないが、少なくとも翌日のプレーとなれば、もう少し彼の最後を見届けるファンの数も多かったはずだ。不穏な天候の中、かつての世界ランク2位の男にとって、悲しいほど寂しいフィナーレだった。
ホールアウト後は「フィル!」の声援がいくつか飛び交う中を、ミケルソンはアテスト場に向かっていった。米国人記者たちが一言コメントをもらおうと待ち構えていたが、「(今回は)パスする」と言って立ち去った。来週の月曜日には55歳になるミケルソン。もう彼のゴルフ人生に「グランドスラム達成」の文字は、刻まれることはないと思うと寂しいものだ。


