Text/Eiko Oizumi
Photo/R&A/Getty Images

ローリー・マキロイにとって、今年の「全英オープン」は6年前の悔しさを乗り越え、心から満足できる一週間となった。地元・北アイルランドでの開催という特別な舞台へ「グランドスラマー」の称号を引っ提げ臨んだ今大会は、地元の人々からも優勝が期待されていたが、惜しくもクラレットジャグ(優勝トロフィー)には手が届かず、通算10アンダーで、優勝したスコッティ・シェフラーとは7打差の7位タイ。だが、彼はすべてを出し切り、満足気な表情を浮かべていた。
「今週は誰もスコッティに太刀打ちできなかった。彼は本当に素晴らしい選手。今週は圧倒的に強かったし、この2年間ずっとそうだった。彼こそが僕たちが目指す“基準”なんだ」と賞賛を惜しまなかった。さらに、「ゴルフの歴史上、ここ24〜36ヶ月のスコッティのようなパフォーマンスを見せた選手は、せいぜい2、3人しかいない」と、その活躍を高く評価。「彼は素晴らしい人間で、ゴルフ界にとっても最高のアンバサダーだ」とも語った。
また、地元のファンの前でプレーできたことへの感謝も口にした。
「クラレットジャグ以外は、望んでいたものをすべて得られた。この観客の前でプレーできたことに、本当に感謝している。R&Aがまたここに戻ってきてくれれば、競技者として、あるいはもっと髪が白くなってからでも、あと1、2回はここで戦いたい」と、再びポートラッシュでの開催を強く望んだ。
マキロイは、試合を振り返り、後半の勝負どころを以下のように分析した。
「8番、9番、10番が痛かった。17アンダーには届かなかっただろうけど、2位にはなれたかもしれない。10番ではフライヤーからダブルボギー。あそこが致命的だった」
それでも後半は粘りのゴルフを見せ、バック9ではボギーを1つだけにとどめ、12番、15番でバーディを奪取。最終的に7位タイでフィニッシュした。
今年序盤の3勝で見せた切れ味も、戻ってきている、と手応えを感じている。「ただ、あの3勝はスコッティが今ほどの調子じゃなかった。まだまだゴルフは続くし、9月の『ライダーカップ』が最大の目標」と語り、今後に向けての意気込みを見せた。「それまでに疲れをためないように、試合数を調整していくつもり」と話し、まずはリフレッシュに時間をあてる。すぐにはアメリカに戻らず、イギリスで家族と過ごす予定のようだ。
一方、キャリアグランドスラムを達成した立場から見ても、今のシェフラーの活躍には心からの敬意を抱いている。
「彼のしていることも素晴らしいけど、どうやってそれをやっているかにも驚かされる。派手さはないけど、実行力は今のゴルフ界で随一。見ていて本当に感心させられる」
「彼のような存在を見ると、モチベーションになるのか、それとも気が滅入るのか?」と問われると、マキロイは次のように答えた。
「どちらでもない。僕にできるのは、自分のベストゴルフに集中すること。それができれば、また勝てる週も来ると信じている」。
母国の熱狂的な声援に包まれながら戦った一週間。地元の期待を一身に背負い、そのプレッシャーで予選落ちをした6年前とは全く違う気持ちで、ロイヤルポートラッシュを去ることができた。クラレットジャグは逃したものの、マキロイはゴルフ人生の中でも特別な時間を刻んだ。
