Text/Eiko Oizumi
Photo/Tsukasa Kobayashi

今季は「関西オープン」13位タイが最高位で、2018年「ゴルフ日本シリーズJTカップ」以来、優勝から遠ざかっていた小平智が、第2ラウンドを終え、1イーグル、6バーディーの64を叩き出し、通算13アンダーで単独首位に立った。
「ショットは昨日もよかったが、今日はパットが入った。2日間ノーボギーで回れた」
2018年、スポット参戦したPGAツアー「RBCヘリテージ」でプレーオフの末優勝し、日本人5人目の米ツアー制覇を果たした小平は、下部ツアーを含めて7年間、米ツアーを主戦場に戦った。だが、米ツアーのシード権を失い、2024年「長嶋茂雄INVITATIONALセガサミーカップ」から日本ツアーに復帰。同大会で2位タイに入ったものの、その後はふるわず、今季は「関西オープン」13位タイが最高位。9試合に出場中、棄権1回、予選落ち4回で、現在、賞金ランク66位となっている。だが、「ISPS HANDA夏の決戦・誰が一番強いんだトーナメント」第2ラウンドで今季自身最多アンダーパーの8アンダーを記録し、今年の「関西オープン」1ラウンド以来の首位に立った。好調の裏には、不調から脱却を図るため「心もゴルフも整えよう」と決心し、6月末から1ヶ月半にわたって行なった「アメリカ合宿」と松山英樹からの助言があった。
「日本にいるとお世話になっている人とのお付き合いや、誘惑もあり、そういうのに行ってしまう自分が嫌だった。だから、自分を厳しい場所に身を置いて、心もゴルフも整えようとアメリカ合宿に行ったんです。その間、ヒデキ(松山英樹)と3日間で2ラウンド、一緒にゴルフをやらせてもらって、いい刺激を受けましたし、『昔、小平さん、こう言う感じでしたよね?』と言ってくれたりして、じゃあ、それをやってみようかな、とスイングのことで試したことが発見につながっています。シャフトももともと使っていたものに戻したり……。その成果は、確信には変わっていないけど、徐々に確かめている段階ですね」
2023年1月に自身のコーチでもあった父・健一さんが他界し、心の支えとゴルフの指針を失った小平。スイングに悩んだ時に「親父だったら、どう言ってたんだろう?」と不安な日々を送り、試合に出てもモチベーションが上がらなかったという。そんな時、「心もゴルフも整えよう」と思い立ち、試合を休んで渡米。米ツアーを主戦場に戦う松山英樹や久常涼、平田憲聖らが「小平さん、一緒に回りましょう」と声をかけてくれ、「本当に人に恵まれていると思う。父に言われていたようなことを、ヒデキが言ってくれた。自分は運がいいと思う」と、助言を受けただけでなく、人のやさしさにも触れた。
そしてアメリカ合宿から帰国した今は、松山からの助言による気づきもあり、試合でスイングを試している段階。まだ確信は得られていないが、「明日も試しながら、どんどん自信をつけていきたい」と姿勢は前向きだ。下がっていたモチベーションも、少しづつ上がってきており、「夏から秋にかけて大きな試合が続くので、その辺でヒデキにいい報告をしたい。そして成績を残してベイカレントに出たいという気持ちが強くなっているし、そこでヒデキと戦いたいというふうに変わってきたところを見せたい」と語る。
父でありコーチを失った喪失感でいっぱいだった小平が、人の優しさに触れ、再び自身のゴルフとやる気を取り戻しつつある。PGAツアーチャンピオンの小平が、今週、7年ぶり・ツアー8勝目を実現するのも不可能ではなさそうだ。
