Text/Eiko Oizumi
Photo/Tsukasa Kobayashi

2日目を終えて通算8アンダーの24位タイだった、ツアー屈指の飛ばし屋・幡地隆寛が3日目、10バーディー、ノーボギーの62で回り、通算18アンダーに。大岩龍一とともに、一気に首位タイに浮上した。なお、62は3日目のベストスコアだ。
「今週は、パターのフィーリングがすごくよくなった。さらに今朝、クラブハウスのトイレの個室にいる時に、ブルックス・ケプカの動画を観て、そのイメージで打った朝イチの2打目がビターっと来て、『あ、これだ!』と思った」
幡地は初日、ティーショットでテークバックを上げる時に、ティーグラウンドのデコボコにヘッドが当たり、球が大きく曲がったのだという。それ以来、ショットがおかしくなり、できるだけショット前にはボールの後ろを踏んで、デコボコを整えるように務めていた。だが、時々直し忘れ、何度か球が曲がってしまったそうだ。デコボコに当たらないように、フェースを開いて上げすぎていた幡地は、「どうやってテークバックを上げてたっけ?」と自身のテークバックの上げ方を思い出すため、クラブハウスの中でも電波が入りやすいトイレの中で自分の目指しているブルックス・ケプカのスイングをYouTubeで観て、ケプカになりきってスイングしたところ、思い通りのショットが打てるようになったのだという。
「今年、右ヒザがすごく流れていたので、しっかり股関節で止められるようにしたい、とスイング改造もしつつ、いろんな選手のスイングを参考にしていたんですけど、アドレスでの踏ん張りの感じや、インパクト周辺の手のフィーリングが出せるスイングっていうのが、ケプカのスイングイメージに近いかなと思ったので、とりあえず完コピを目指してます」
2015年にプロ転向した幡地は、それから9年後の2024年3月にアジアンツアーと豪州ツアー共催の「ニュージーランドオープン」で優勝。その後、同年に「関西オープン」でツアー初優勝を果たし、「バンテリン東海クラシック」で2勝目を挙げた。だが、今年はこれまで10試合に出場し、「JAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIP byサトウ食品」の52位タイが最高位で、予選落ちが6回と大きく低迷。獲得賞金は45万1556円で、賞金ランク143位となっている。昨年は2勝したものの、その上を目指すために何をしたらいいのかがわからず、今年の2月に目澤秀憲コーチを紹介してもらい、人生で初めてコーチをつけてスイング作りに取り組んだ。だが、体を大きく使う幡地が、目澤氏のスイング理論をそのまま取り入れると、「自分の手の感覚が邪魔をした」のだという。そこで、自分の感覚を活かすスイングを目指すため、ミンウー・リーの長く引くテークバックを真似したこともあった。しかし、それによって左肩を痛めたこともあり、そのイメージでスイングするのは中止し、現在は目澤氏の理論を取り入れつつ、ブルックス・ケプカのスイングを取り入れているのだと語る。
前週の「ISPS HANDA夏に爆発 どれだけバーディー取れるんだトーナメント」では、スコアの伸ばし合いが話題となったが、今週の「ISPS HANDA夏の決戦・誰が一番強いんだトーナメント」でも、スコアを大きく伸ばす選手が続出。幡地は、「スコアの伸ばし合いになるから、ずっと上を見ながらプレーしなければいけない、となった時に、自分は始めから優勝を狙うゴルフではなく、スコアを積み重ねて3日目、4日目の前半のプレーが終わった時に優勝争いのスイッチを入れるようなゴルフをしていた。なんで初日から優勝を狙っているんだろう?調子がいいからといって、それは違う」と思い直すことができたことも、好スコアの要因となったのだと語っている。
「(優勝賞金4260万円は)非常に魅力ですね。そこを押し殺して、予選を通るとか、優勝するとかは考えずに、初日の1ホール目から4日目に向けて、積み重ねていかないといけない。そういうゴルフを思い出せたのがよかったかなと思います」
今年の獲得賞金が約45万円の幡地にとって、今大会で優勝すれば賞金ランキングで一気にトップ10入りを果たせる絶好のチャンス。最終日のラウンドも、1打1打好プレーを積み重ね、チャンスがあればバック9で優勝を目指して攻めていく作戦だ。