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【PGAツアーレ ポート緊急特集】タイガー・ウッズが交通事故!もう一度「奇跡」を

タイガー・ウッズ、選手生命の危機!?
タイガーにもう一度「奇跡」を!

2月末にタイガー・ウッズが交通事故を引き起こし、重度の負傷を負ったニュースは、世界を震撼させた。

米ツアー82勝(歴代1位タイ)、メジャー15勝のタイガーには健康体で再びツアーに戻り、新たな記録を樹立してほしい!

そんな気持ちを込めて特集する。

©Getty Images

2008年、左ヒザのケガを押して「全米オープン」に出場し、19ホールのプレーオフの末優勝したタイガー・ウッズ。ヒザの痛みに耐えながらプレーする姿が印象的だった。

 

©Getty Images

事故の2日前にリビエラCCで行なわれていた「ジェネシスインビテーショナル」では、優勝者のマックス・ホーマ(右)にトロフィの授与を行なっていた。

 

タイガーの大事故、なぜ起こった?

2月23日の午前7時過ぎ、ロサンゼルス郊外の高級住宅街でタイガー・ウッズが運転していた車が横転し、九死に一生を得る大事故が発生したことは、皆さんの記憶にも新しいことだろう。
タイガーの事故のニュースは世界中に瞬く間に広がり、日本でもワイドショーのトップニュースとして伝えられていた。

タイガーの事故現場は、米国ロサンゼルス郊外のランチョ・パロスベルデスとローリングヒルズ・エステートの境界付近の幹線道路。
このあたりは高級住宅街として知られ、タイガーが生まれ育ったサイプレスの街から車で西に30分走った場所にある。
このあたりはクネクネと曲がりくねった道が多く、制限速度よりもスピードを出す車が多いことから、地元では交通事故多発地帯として知られていたようだ。
「ロサンゼルスタイムズ」によれば、過去にもコントロールを失ったトラックが衝突し、炎上する事故を起こしたこともあるという。

この日は午前8時から自身が契約している「GOLF TV」のセレブとのレッスン撮影のため、1人で「ジェネシスインビテーショナル」のコーテシーカー(ジェネシスGV80)を運転し、撮影場所のローリングヒルズCCへ向かっていた。
だがその途中、スピードの出し過ぎでコントロールを失い、中央分離帯に激突。車が横転して反対車線の道端のブッシュに突っ込んだというわけである。あと10分ほどでコースには到着する予定だった。

その後、駆けつけた消防士や警察官によりフロントガラスはバールでこじ開けられ、自力で脱出できない彼を救出。近隣のハーバーUCLA医療センターに搬送され、緊急手術により一命を取り留めた。
特に右足下部~足首にかけて損傷が激しく、粉砕骨折していたと言われている。
脛骨や腓骨、足はネジやピンでつないだと同医療センターのアニシュ・マハジャン医師は説明した。

タイガーはシートベルトを着用しており、エアバックも作動していたが、タイヤ痕は見られないという報告からすれば、ブレーキを踏むことなくそのまま横転し、反対車線に転がっていったようだ。
反対車線には対向車はおらず、他人を巻き込まなかったこと、命に関わる大事故にも関わらず命に別状がなかったのは不幸中の幸いだった。

©Getty Images

米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で、横転したタイガー・ウッズ運転のSUV。

©Getty Images

前週、ホストを務めた「ジェネシスインビテーショナル」のコーテシーカーを運転していたタイガー。サイドに大会ロゴが見える。

 

タイガーの右足は複雑骨折ボルトとピンで固定

©Getty Images

タイガーは事故後、カリフォルニア州のハーバーUCLA医療センターに運び込まれ、緊急手術を受けた。

仲間たちからタイガーへ贈られた激励と感謝の気持ち

このニュースに、日頃から親しくしているツアー仲間たちは大きな衝撃を受けた。特に最近最も親しい付き合いのあるジャスティン・トーマスはSNSで「(事故のニュースを聞いて)胃が痛いよ。僕の親友の1人が事故に遭ってしまうなんて。なんとか無事でいてくれればいいが……。子供たちも心配だ。きっと彼らも辛い思いをしているに違いない」と心情を吐露した。

また、ローリー・マキロイは「WGC・ワークデイ選手権」の記者会見で次のように語っている。

「ツアーに復帰してほしいが、仮にクラブを置くことになっても、彼は今後もゴルフというゲームの一部であり続ける」ローリー・マキロイ

「彼はスーパーマンではない。
彼も生身の人間であり、今はただ彼が生きていて、子供たちが父親を失わなかったということを喜ぶべきだと思う。
このことが最も重要であり、ゴルフのことは二の次だ……ひどい事故に遭ったのに、命を失わなかったのはとてもラッキーだ。
彼が回復して、ツアーに復帰できればいいが、もしそれが無理でも何らかの形でゴルフというゲームの一部であり続けることは確かだ。
コース設計や財団の仕事、トーナメントのホストを務めることなどいろいろある。
仮にクラブを置くことになっても、素晴らしい方法でいろんな方面においてゴルフに影響を与えていくはずだ」

選手個人だけでなく世界中のツアー団体からも熱いメッセージが寄せられた。
PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏は「タイガーの回復を心から祈っている。
彼の回復のためにツアーもできる限りのことをするつもりだ」と全面的に彼の回復を応援する。

また、オーガスタナショナルGCのフレッド・リドリー会長は「タイガー・ウッズはオーガスタナショナルファミリーの一員だ。彼の事故のニュースには皆、衝撃を受けたが、とにかく彼の全快を祈り、つらい時期を過ごしている彼の家族にも祈りを捧げたい」とコメントしている。

その他、スコットランドに拠点を置くR&Aも、セントアンドリュース・オールドコースの脇にある砂浜にタイガーのロゴと祈りの言葉を描き、タイガーへエールを送ったのだ。

もともと今年初旬に、5回目の背中の手術を受けたと発表をしていた彼だが、「マスターズ」どころか、今後のツアーへの復帰も不透明となってしまった。
45歳のタイガーが、今後、ツアーでプレーできるほど回復することはできるのか?
またできるとしたら復帰はいつか? 早期のツアー復帰を期待したいところだが、可能であったとしても、まだ当分先の話になることだろう。

ベン・ホーガンは1949年、大型バスと正面衝突する大事故に遭い、病院に搬送されたことがあった。
奇跡的に助かり、その後「全米オープン」で優勝したというエピソードは有名だが、ホーガンは当時36歳。
45歳のタイガーは年齢的にもハンデがあり、ホーガンと同じというわけにはいかないかもしれない。

だがまずは、歩行ができるようになり、日常生活を通常通りに送れるようになることを祈るばかりである。
そして、車の事故を何度も引き起こしている彼には、運転手をつけて欲しいと願う。

©Getty Images

ロサンゼルス郡のアレックス・ヴィラヌエバ保安官が事故後に記者会見を開き、タイガーを刑事告発しない旨を伝えた。

 

タイガーの歴史的記録を脅かすケガと手術の日々

数々の大記録を樹立してきたタイガーの偉業の歴史は数々のケガを克服してきた歴史でもある。不可能を可能にしてきた「奇跡の男」のケガの歴史を振り返る。

©Getty Images

2015年「ファーマーズインシュランスオープン」で、ケガのため途中で棄権したタイガー。

 

アマチュア時代から、「左ヒザと腰」に〝爆弾〟を抱え続けてきたタイガー

©Getty Images

2008年「全米オープン」では左ヒザに激痛を抱えながら戦ったタイガー。最終日の18番ホールでは首位のロッコ・メディエイトに並ぶバーディを決め、ガッツポーズ。プレーオフに進出し、見事な勝利を収めた。

 

タイガーのケガの歴史を振り返ってみると、実はアマチュア時代から左ヒザにメスを入れていたことに気づく。
幼少の頃からゴルフを始め、類稀な才能を発揮してきたタイガー・ウッズは、1996年にプロ入りしてからもそのスピーディでアスレチックなスイングとともに記録を次々に塗り替えてきたが、体(特に左ヒザと腰)には相当無理がかかっていたようである。

彼の絶頂期だった2000年~2005年にはケガを負うこともなく、順調に勝ち星を伸ばしていたが、2006年以降はほぼ毎年試合を欠場したり、手術を行なっていた。

2008年の「全米オープン」では左ヒザの激痛に耐えながら、19ホールのプレーオフの末優勝したという超人的な記録があるが、この時などは「ほとんど片足でプレーしているようなタイガーに負けた」とこぼしていた選手もいたくらい、奇跡的な優勝だったのである。

今回の交通事故による負傷は、過去の歴史を振り返っても最大級であり深刻だ。世界最先端の医療技術を駆使して、スーパースターがこれからも記録を更新し、ゴルフを楽しめることを祈るばかりだ。

手術・ケガの内容

1994年12月
左ヒザの2つの良性腫瘍と瘢痕組織除去手術(アマチュア時代)
2002年12月
左ヒザの靭帯周辺の良性嚢胞とヒザの水を除去手術
2006年9月
肩甲骨の筋肉を負傷
2007年7月
左ヒザに膝前十字靭帯損傷があるにも関わらず、手術を受けずに残り6試合で5勝
2008年4月
「マスターズ」終了後2日目、左ヒザの軟骨損傷を修復するため、関節鏡を用いて手術
2008年6月
「全米オープン」優勝直後、左ヒザの前十字靭帯損傷と左脛骨の2つの疲労骨折治療のため手術
2009年11月
SUVで自宅前の消火栓に激突し、首の痛みと唇を切る5針のケガを負う(不倫発覚)
2010年3月
首関節に炎症、「プレーヤーズ選手権」を棄権
2011年4月
左ヒザの内側側副靭帯捻挫とアキレス腱損傷(マスターズ)
2011年5月
左ヒザ、アキレス腱、ふくらはぎの負傷のため「プレーヤーズ選手権」棄権
2013年8月 腰のけいれん
2014年3月
腰痛のため、「ホンダクラシック」棄権
2014年4月
腰の神経痛除去のため手術を受ける(1度目)
2015年9月
2度目の腰の手術を受ける(椎間板切除術)
2015年10月
3度目の腰の手術を受ける(不快感を取り除く)
2017年4月
4度目の腰の手術を受ける
2017年5月
薬物服用・飲酒運転を疑われ逮捕。実際は痛み止めの薬の飲み合わせが悪く、酩酊状態に。
2019年8月
左ヒザの軽度の靭帯損傷のため、手術を受ける
2020年12月
5度目の腰の手術を受ける(椎間板切除)
2021年2月
交通事故で両足とも複雑骨折。緊急手術を受ける

 

Text/Eiko Oizumi
Photo/Getty Images、PGA TOUR

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