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【オリンピック応援企画・第1回】オリンピックゴルフのこれから~Road To Olympic 2021~

「コロナに負けるな!」

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて東京オリンピック·パラリンピックが大会史上初めて延期されることになった。

ゴルフも種目に入っており、霞ヶ関カンツリー倶楽部で開催予定だったが、延期日程で同コースを引き続き使用できるよう、IOCが交渉を始めるそうだ。

弊誌では今後1年に渡り、オリンピック応援企画として、随時オリンピックの情報をお伝えしていく。

©Getty Images

3月24日、今夏に開催予定だった東京オリンピック·パラリンピック2020が延期されることが決まった。近代五輪が延期になった例は過去にないが、中止は戦争のため5回。そのうち2回は日本で開催される予定だった。

練習場はプレスセンターに
西コース18番は練習場に

新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、7月23日に開幕する予定だった東京オリンピック·パラリンピック2020の正式延期が決まった。

ゴルフ競技開催コースの霞ヶ関カンツリー倶楽部(以下、霞ヶ関CC)や周辺の自治体にとっても、準備が本格化しつつあるタイミングで丸1年の延期。

ここでは、五輪ゴルフ競技にかかるこれまでの準備状況をレポートする。

急ブレーキがかかったのは、3月24日。

開幕まで約4か月のタイミングでの延期決定だった。

その6日後の30日には、2021年の7月23日の開幕が正式決定。霞ヶ関CCの大会準備にもいったんストップがかかった。

実は新年度突入となる4月1日から、霞ヶ関では五輪に備え本格的な準備作業がスタートするはずだった。

世界から注目を集める大会となるだけに、設備も大掛かりなものになる。必要な資材が運びこまれ、建設を開始することになっていた。

だがジャスト1年の延期が決まったことを受け、IOC(国際オリンピック委員会)は4月2日、競技スケジュールを来年に引き継ぎ、会場も同じ場所を使用できるよう交渉を始めていることを明かしている。

もし来年も同コースでの開催が決定すれば、メンバーにとっては不便を強いられる期間がさらに1年上乗せとなるのかもしれない。

25打席·250ヤードの立派な練習場は、現在プレスセンターとなるため改造中。

アスファルトが敷き詰められ、すでに使用不可の状態になっていた。

だが、延期が決まりメンバーたちはさらに1年、臨時のトリカゴで我慢するしかなくなった。

打席の増設は検討されているものの、自慢の練習場を復活させる意見は今のところ出ていないという。

©Getty Images

延期が決定したことを受け、3月25日に記者からの取材に応じたJOCの山下泰裕会長。「アスリートの安全を第一に考えての苦渋の決断。前向きにとらえ、気持ちをリセットして2021年に向けてさらにしっかりとした準備をしてほしい」と語った。

ギャラリースタンドなど大掛かりな設備の建設は急遽中止に

大会が行なわれる東コースは五輪決定前の2016年から改造に着手。

名匠トム·ファジオと息子ローガンの設計でティーからグリーンまでの芝はすべて剥がし、土も動かす大工事を行なった。

2グリーンも1グリーンに変更され、17年4月に完成している。

昨年の6月中旬からは一日20組のスループレーに限定。

全員ホールアウト後にメンテナンス作業を行なう時間を設けていた。約50人のコース管理スタッフを東海林護統括グリーンキーパーが率い、大会に向け着々と準備を進めていたのだ。

IGF(国際ゴルフ連盟)からはメジャー競技など多くのコース改造経験のあるアグロノミスト(農学博士)であるデニスイングラム氏も1か月に1度程度のペースで来日。

大会に向け着々と準備を続けていたのである。

また五輪本番では競技に使用しない西コースの18番を練習場とするため、芝もこのホールだけ東コースと同じ種類に変更されており、改造の影響で距離も短縮されている。

同コースで来年、開催するかどうかによって、今後再び西コースの18番ホールとして元に戻すかどうかが決定されることだろう。

©Getty Images

オリンピック聖火リレーは中止となったが、「復興の火」は福島県いわき市のアクアマリンパークで3月25日のイベント当日だけ展示が行なわれた。

まずは、来年までにウイルスを沈静化させインフラのさらなる整備が必要

©Getty Images

オリンピック開催に向けて、着々と準備を進めてきた霞ヶ関カンツリー倶楽部。現在は、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、営業を自粛(クローズ)している。

インフラも整備
最寄駅からは徒歩、追加の3駅からはシャトルバス

コース内だけではない。

輸送関係のインフラもすでに始まっていた。当初JGA(日本ゴルフ協会)は、1日2万5000人の観客が想定されることが36ホールを擁する霞ヶ関に決定される理由のひとつになったと語っていた。

だが周辺から、連日この人数を運び込むことは事実上不可能であることが明らかになってきた。

道路が狭く、渋滞が起きやすいなどの理由からだ。組織委員会は、公共交通機関での来場を求めている。

最寄り駅はJR川越線の笠幡駅。会場までは徒歩15分程度で、スペースに限りがあった駅前には、1500人〜2000人を収容できるロータリーが新設された。

しかし川越線は単線。輸送力に限界がある。

そこで私鉄各線からのアクセスも推奨されている。

西武新宿線の狭山市駅、西武池袋線稲荷山公園駅、JR川越線·東武東上線の川越駅からはシャトルバスが運行されることになった。

さらに車での来場者のため、大駐車場からコースまでシャトルバスでピストン輸送する「パーク&ライド」方式も検討されている。

しかしこれらの輸送手段を使うとしても「橋を渡るルートなどが渋滞しやすく、実質1万人程度しか運べないのでは?」との見方を語る関係者もいるようだ。

オリンピックの五輪競技は1年延びた。

1年以上の延長はしないと先頃発表があったが、日本での開催を実施するには、新型コロナの感染拡大が収まり、安全が確保されることが最優先となる。

まずは開催国日本での鎮静化が大前提。国を挙げて全力で取り組むしかない。

©Akira Ogawa

西武新宿線の狭山市駅からは、車で15分ほど。シャトルバスが運行される予定になっている。

©Akira Ogawa

周辺の駅の中では最大の、JR川越線·東武東上線の川越駅。車で25分程度の距離だが、ここからもシャトルバスが運行される予定。

©Akira Ogawa

JR川越線の笠幡駅からは徒歩15分、車で5分ほどの位置。単線で輸送力は限られるが、大会期間中は普段よりも増便か?

©Akira Ogawa

笠幡駅前のロータリー。2000人を収容できるロータリーが新設された。

Text/Akira Ogawa

小川 朗

東京スポーツに入社後、ゴルフ担当を長年務め、海外特派員として活躍。
男女メジャー取材も25試合以上。
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。

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