タイガー・ウッズもなれなかった米国人初の欧州ツアー賞金王
ゴルフの試合はサンデーバック9で決まるとよく言われるが、ドバイで開催される欧州ツアーの最終戦「DPワールド・ツアー選手権」でもまさにそのとおりのことが起こった。
コリン・モリカワの異彩を放つゴルフと、ローリー・マキロイの不運とが相まって、モリカワが約10億円の試合で優勝したばかりか、欧州ツアーの賞金王となった史上初のアメリカ人としてその名を歴史に刻むこととなったのだ。
世界ランク1位のジョン・ラームが最終戦には出場しなかったため、世界ランク2位のモリカワは、出場選手中、最高位の選手として出場。統計では、彼のデビューは、タイガー・ウッズに次いでプロゴルフ界において印象的なものであったことが数値で示されているが、彼はウッズが達成できなかったことをドバイでやり遂げたのだ。
アメリカから「全英オープン」チャンピオンのモリカワが出場したほか、欧州ツアーのフラッグシップトーナメント「BMW PGA選手権」などに優勝したビリー・ホーシェルもいたが、彼との差は、わずか236ポイント。モリカワは、「WGCワークデイ選手権」に優勝し、その後「全英オープン」で優勝したことで、欧州ツアーの「レース・トゥ・ドバイ」の優勝候補となったのである。
怒りのあまり、シャツを破ったマキロイ
最終日の途中までは、ローリー・マキロイが優勝しそうな雰囲気があった。PGAツアー「CJカップ」で優勝したばかりの彼は、14ホールを終えた時点で15アンダー。2位は14アンダーだった。だが、モリカワが難しいパー4の12番でバーディを奪い、リーダーボードの上位者に名前を連ね始めた頃、マキロイがスコアを崩し始めたのだ。彼は10番でバーディを奪取したものの、その後は1つもバーディを奪うことができなかった。そして15番の短いパー4で、ウェッジで打った2打目はピンそばにピタリとつけるような見事な寄せに見えたが、ピンフラッグに球がぶつかりグリーン横の深いバンカーへと転がり落ちてしまった。そのホールをボギーとし、その後16番も3パットでボギー、18番もボギーとした。マキロイの終盤のプレーへの落胆ぶりは相当なもので、アテストに向かう途中で自分のシャツを怒りのあまり、破ってしまった。
一方モリカワは、最後の7ホールでバーディを5つ奪い、最終的には2位のマシュー・フィッツパトリックらに3打差の17アンダーで優勝。マキロイは12アンダーの6位タイに転落した。
モリカワは表彰式で涙を流しながら、2021年初めに亡くなった祖父に感謝するとともに、次のようなスピーチをした。
「2021年はレース・トゥ・ドバイだけでなく、本当にたくさんの出来事があった。でも、最後はここに来て優勝したかった。レース・トゥ・ドバイで優勝した初のアメリカ人になれたのは特別で、光栄なことだ」
欧州ツアーの将来を確実にする契約
「DPワールド・ツアー選手権」が開催された1週間前、欧州ツアーは、ドバイに拠点を置く港湾運営と物流の会社であるDPワールドと長期的なパートナーシップを結び、欧州ツアーは「DPワールドツアー」という名称に変わると発表があった。
DPワールドと契約したことで、同ツアーの賞金総額は初めて2億ドル(約226億円)を超える(メジャーとWGCを含む)。WGCとメジャーをカウントしないと、2022年における合計賞金総額は1億4000万ドル(約158億円)以上となるが、これまで最高だったのは2019年の1億3000万ドル(約147億円)だ。DPワールドツアー主催の全試合の最低賞金総額は200万ドル(約2億2600万円)であり、2022年には27か国で、最低47試合が開催されることになっている。これには初開催となる日本でのトーナメント「ISPSハンダ・チャンピオンシップ」も含まれる。
DPワールドは2009年以降、欧州ツアーの最終戦のスポンサーを務め、2015年には同ツアーのオフィシャルパートナーになった。欧州ツアーは3年にわたって「サウジインターナショナル」のスポンサーを務めてきた「ゴルフサウジ」と現在、徹底交戦しようとしている。今年の「DPワールド・ツアー選手権」では、賞金総額が1000万ドル(約11億3000万円)まで上がり、同ツアー史上最高の賞金額となる。
選手たちはその決定に大歓迎で、マキロイは、「DPワールドがツアー全体のスポンサーとなることは、すばらしいニュースだ。これによってツアーの長期的な将来が約束され、多くのツアーメンバーたちも安心してプレーできる」と言う。
世界ランク1位のジョン・ラームは、「欧州ツアーと呼ばれているが、実際には世界ツアーといってもいいくらい、様々な国々で開催されている。これはツアーや選手たちにとって非常に良いことだ」と語っている。
Text/Joy Chakravarty
ジョイ・チャクラバルティ(アラブ首長国連邦)
ドバイを拠点に25年以上にわたり世界中でゴルフ取材を続けている。