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【世界のゴルフ通信SP】From Asia 逆境をチャンスに変えて 営業中止中にコース改造・ゴルフ界も免疫作り

世界のゴルフ通信・アジアのゴルフ事情を紹介します。

コロナウイルスの大流行により、アジアの多くの地域のゴルフ場やゴルフビジネスが苦境に立たされているが、そんななか、営業中止の期間でコースの改造・改良に取り組むゴルフ場も出てきています。

コースをクローズしている間に、コース改造に踏み切ったタイのアマタスプリングCC。

アジアの国の大半がゴルフ場閉鎖

コロナウイルスの大流行により、アジアの多くの地域のゴルフ場やゴルフビジネスが苦境に立たされている。

アジア地域を統括するゴルフ関連非営利団体であるアジアゴルフ産業連盟(AGIF)の最高経営責任者であるエリック・リンジ氏は、「世界全体のゴルフ業界にとって極めて困難な時期を迎えており、それはアジアでも同じだ」と全体的な状況を要約して述べている。

AGIFの調査によると、4月中旬の時点では、オーストラリア、中国、日本、マカオ、ミャンマー、韓国および台湾のゴルフ場は程度の差こそあれ、オープンはしていた。

カンボジア、インドネシア、パプアニューギニアおよびフィリピンでは、一部閉鎖。しかしバングラデシュ、ブルネイ、香港、インド、マレーシア、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、シンガポール、スリランカ、タイおよびベトナムでは全てのゴルフ場が閉鎖された。なお、ブータンと北朝鮮での状況は不明である。

リンジ氏は次のように述べている。

「状況は日々変化しているため、これはその一面をとらえたのに過ぎない。多くの国の政策立案者がゴルフ場を当面、閉鎖する決定を下しており、これによってコースではスタッフを解雇せざるを得なくなり、チャリティーゴルフによる資金調達も大きな打撃を被っている」

 新型コロナウイルス感染症の発生を転機として、R&A(英国ゴルフ協会)は「アジアのゴルフコースの基本的なメンテナンスに関する声明」を発表した。

これによりゴルフ場のメンテナンス、労働者、雇用の保護を目的とする、必要最低限に縮小したメンテナンス体制を定めるとともに、安全な距離に関する規則が緩和された後でプレーを再開する数百万人のゴルファーの心身の健康のためにゴルフ施設を確保している。

「アジアのゴルフ業界とゴルフ場を持続可能なものにするには、コースメンテナンススタッフが安全かつ確実に業務を続ける必要がある」と、R&Aアジア太平洋地域·サステナビリティ&農学部長のクリス·グレイ氏は言う。

「R&Aから出されたアジアのゴルフ産業に対する声明には、政府が規制を行なう可能性がある場合に、ゴルフ場のメンテナンスを安全に実施するために不可欠な方法についての概要が盛り込まれている。ゴルフ場は形状も、土壌のタイプも、作られる環境もさまざま。したがってこの指針は、個々のコースや気候の状況に合わせて改変する必要があるだろう」と付け加えた。

ゴルフ場の経営陣は、コースコンディションの維持やスタッフ、メンバーに関して当然懸念を抱きつつ、各国の政府規制への遵守を進めるため、適応力と柔軟性が求められ、その結果、多くのゴルフ場で、迅速かつ見事な対応が行なわれている。

マレーシアのホライゾンヒルズゴルフ&CCでは全従業員が検査を受けている。

従業員にウイルス検査。
コース閉鎖中にコース改造

マレーシアでは、クアラルンプールのコタペルマイゴルフ&CCと、ジョホール州の最南端に位置するホライゾンヒルズ·ゴルフ&CCの2カ所で勤務するスタッフ、キャディ、労働者全員を対象に大規模なウイルス検査を実施している。

また、タイのアマタスプリングCCはコース閉鎖を好機ととらえ、コースの改修と改良を施した。

「タイのコースではたいてい、ソンクラーン(タイの新年)の間に改装工事を行ないます。コロナウイルスにより早めにクローズできたので、早めにスタートを切ることができるでしょう」と、アマタスプリングのデビッド·タウンエンド支配人は語っている。

一方、多くのシンガポールのゴルフ場ではメンバーに対して、善意を示す取り組みを行なっている。

センバワンGCとナショナルサービス·リゾート&CCは、コースと飲食店を一時的に閉鎖した代わりにメンバーフィ1か月分を無料にした。

また、セントーサGCは、閉鎖月の代わりとして利用できる平日のゲスト無料クーポンを配布している。コースが提供するこうした善意のしるしは、会員1人あたり1万円前後となっている。

またシンガポールでは、安全な距離を確保し、1日の組数を通常の半分に減らすとともに、ティーオフの間隔を8分から16分にすることで、コースの混雑を回避。プレー再開の許可が出た場合でも、これと同様のルールが、少なくとも一時的に施行されるだろう。

またR&Aからの指導に基づき、コースメンテナンス作業を行ない、コースのコンディションを維持するように言われている。

「コースで正しく感染対策が取られているなら、芝生のメンテナンスチームを引き続き雇用しながら、再開に向けて必要な作業の完了が可能という二重の利点がある」とリンジ氏は語る。

クアラルンプールのコタ·プルマイゴルフ&CCでもコロナウイルス検査を実施。

コースメンテナンス要員は作業可能に

一部の国では、芝刈り、エアレーション、散水など最低限の基本的なメンテナンス作業に限って実施が許可されている。

だが、メンテナンスが許可されていない国の場合は、営業可能な状態に戻すまでに何か月も時間がかかるかもしれない。

現在、多くのゴルフ場やゴルフビジネスにとって極めて悲惨な状況となっているが、今後はゴルフ業界特有の資格を取得した経営者を重視し、アジアの新世代のゴルフ場経営と芝生管理を認定する『グリーン·キーピング認定』と『認定クラブマネージャー』の教育要素に、新型コロナウイルス感染症に関するケーススタディを追加していく、とリンジ氏は語る。

先行きが不透明なため、あらゆるレベルでゴルフの将来に暗雲がたれこめているが、世界中のゴルフ業界にとって言えることは、我々の誰もがビジネスに取り組む方法を変えていかなければならないということだ。

Text/Spencer Robinson

スペンサー・ ロビンソン
(シンガポール)

ゴルフライター、ブロードキャスターとしてシンガポールを拠点に活動。

アジアゴルフインダストリーフェデレーションの最高コミュニケーション責任者。

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