世界の各国ゴルフ情報の中からヨーロッパの話題をお届け!
ゴルフの聖地・英国では、コロナウィルスの前に数多くの名門メンバーコースが財政難に喘いでいる。
ヨーロッパで営業を継続しているコースも、プレーヤー同士の接触を避けるため、コース内でもソーシャル·ディスタンスを守ることをプレーヤーたちに徹底している。
春の訪れはまだ先?英国のゴルフ場
スコットランドは、世界中にゴルフを広めた国だ。
だから、たとえ世界中でゴルフをやめても、その存続のためならどんなことでもするというのは当然だ。
今は、コロナウイルスの危機によって日常生活が停止するという、前例のない時代。
しかも重苦しい空が春になり、ようやく晴れようという英国の地をウイルスが襲うというのは、二重に不公平な話ではないか。
例年であれば、何千人ものゴルファーが、生まれたばかりの子羊のように胸を躍らせながらゴルフ場に戻ってくる。
毎年4月初旬は、暗く厳しい冬が終わり、凍てついたゴルフ場が再開される喜びの時期であり、ゴルフシーズンへの希望と期待が高まる時期である。
だが、今年はスノードロップ(ヒガンバナ科の白い花)が芽吹き、スイセンの黄色い花がようやく広がり始めたものの、それほど楽しいものではない。
見通しの暗いメンバーコースは非常に多く、大部分のクラブでは、ロックダウン前から、今後への不安を抱いていた。
3月23日に英国のボリス·ジョンソン首相が、イタリア、スペイン、フランスに続き、国民全員に対して外出禁止を指示したが、そのメッセージは明確なものだった。
食料品の購入や、ウォーキング、ランニング、サイクリングなど毎日1時間の運動以外、長距離の移動や外出が禁止されたのである。
スコットランドのある新聞社では果敢にも、これから恐るべき事態になったとしても、ゴルフ場は非常に安全な場所の一つであると宣言したのだが、ゴルフのプレーは認められなかった。
今年、全英オープンが開催される予定だったロイヤル·セントジョージズGCも現在はクローズしている。
首相からの禁止令の違反者を、ソルハイムカップ主将が一喝!
ジョンソン首相の発表によりゴルフ禁止が義務化されたわけだが、誰もが発表に耳を傾けていたわけでもなかった。
ソルハイムカップで欧州選抜の主将を務めたカトリオナ·マシューは、こんなツイートをしている。
「ガランGCは練習している人が増えたらしいけど、長い順番待ちリストに名前が載っているルール破りはコースから追い払うか、メンバー資格を取り上げるかすればいいんじゃないの? ばかみたい」
マシューは道義心から、エジンバラ郊外の名門クラブのメンバーたちを非難した。
彼女のような模範的な人物がルールを無視してゴルフの名誉を傷つける身勝手な少数の人々に対して異を唱えたことは、極めて重要なことだった。
このメッセージは広く伝わり、受け入れられたのである。
現在、ヨーロッパのコースは半数以上がクローズしているが、写真はまだクローズ前のイギリスのコースで。接触を避けるため、握手はせず、ヒジでタッチ。
ゴルフの聖地 セント·アンドリュースの今
現在、セント·アンドリュースは、不気味なほど静まり返っている。
今ここで行なわれているスポーツは、ジョギングくらいだ。
この街は、「死ぬまでにしたいことリスト」の夢をかなえたい世界中のゴルファーとセントアンドリュース大の学生で賑わっているが、現在はゴーストタウンと化してしまった。
R&Aでは、この前例のない危機の中でゴルフ界を支援する方法を模索しているが、この状況下で生き延びられないプライベートメンバー制クラブもあるだろう。
幸いブローラという英国の美しいコースの窮状はSNSを通じて報道され、世界中のゴルファーが続々と反響したことで十分な資金が集まり、失われずに済んだが、これほど幸運な例はまれである。
ゴルフ界も、今回の恐ろしいパンデミックが引き起こした新たな難題に適応しようとしているが、以前と同じ風景を取り戻すことはできないかもしれない。
Text/Euan McLean
ユアン・マクリーン(スコットランド)
スコットランドを拠点に欧州ツアー、海外メジャーを過去20年以上に渡り取材。