一度は無観客で開催を決定していたダイキンオーキッドレディス。政府からの要請「大規模なスポーツや文化イベントについて、今後2週間、中止か延期、規模縮小」を受け小林浩美LPGA会長は断腸の思いで中止を決定した。
新型コロナウイルスがゴルフ界に及ぼした影響力
自粛ドミノの1枚目は、新型コロナウイルスの発生国である中国で倒れた。
2月4日、米男子ツアー3部に当たるPGAツアーチャイナがQTの開催地を海南島からインドネシアのピンタン島に変更すると発表されたのだ。
その後、中国女子プロゴルフ協会(CLPGA)もツアー序盤戦4試合の日程をいったんすべて白紙に。第2戦のブルーベイLPGAは中止が決定し、3、4戦目も延期されることが決まった。
この決定は日本の女子プロゴルファーたちにも衝撃を与えた。
実は日本からもCLPGAのQTに、昨年は34人が大挙して挑戦。うち10人が出場権を獲得していたからだ。
大量受験の原因は、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)にある。原則的にQT受験資格をJLPGA正会員のみに限定しているため、プロテスト不合格で行き場を失った選手たちが中国へと活路を求めたからだ。
ピンチをチャンスに変えた選手たちにとってみれば、さらなる試練に見舞われた形となった。
政府からの要請で開催自粛モードに
2月26日、政府はスポーツ団体や文化団体に対しイベントや公演の中止を要請。野球、ラグビー、芸能界と同様、ゴルフ界も「自粛ドミノ」に巻き込まれていった。
これに先んじてパシフィコ横浜で6万人の集客を目指していた「ジャパン・ゴルフフェア2020」(3月19~21日に予定)も2月21日に中止が決定。
開催まで1か月を切っており、すでに出店社やセミナー主催者からは会場の使用料も振り込まれていたため、大混乱に陥った。
また、会場内で行なわれる予定の「日本プロゴルフ殿堂入り選手の表彰式」も来年に延期、日本プロゴルフ協会のインストラクターたちがレッスンの腕を競い合う「PGAティーチングプロアワード」も流れた。
現在ネットTVなどと協力して最終審査を放送するなど、新しい試みが検討されている。
国内女子ツアーの開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」(琉球GC)は、2月19日に前夜祭とプロアマの中止と無観客試合となることを発表。
しかし、政府の見解発表を受け28日になって開催中止を決めた。
第2戦「明治安田生命レディス ヨコハマタイヤゴルフトーナメント」(土佐CC)、第3戦「Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント」(鹿児島高牧CC)も中止が決まった。
以降の試合についても不透明な状況が続く。
さらに全日本高校ゴルフ連盟も3月25日から予定している「全国高等学校・中学校ゴルフ選手権春季大会」の開会式(3月23日)の中止を発表。
選手、大会関係者、来場者の健康被害を考慮せざるを得ない状況に直面している。
競技については開催の方向だが、予断は許さない。
2019年ダイキンオーキッドレディスディフェンディングチャンピオンの比嘉真美子。コロナウイルス感染拡大を回避して開催は中止された。
今年のダイキンオーキッドレディスのポスター。
練習場やゴルフ場も休業でゴルフ経済危機
花粉症の時期と重なって、今年の春先はマスク着用のゴルファーが多いかもしれない(写真はイメージ)。
東京では最大級の練習場であるロッテ葛西が、2月29日から3月15日まで臨時休業を実施した。
一般のゴルフ場でも、コンペだけでパーティーをキャンセルするケースも急増。
大皿から取るビュッフェスタイルが、感染リスクを高めるとの考えから、敬遠される傾向が露わになった。
週末に予定されていた企業主催のコンペも続々キャンセル。
自粛ドミノが猛スピードで広がっていくと、ついに若洲ゴルフリンクス(東京都江東区)も3月2日から15日まで休業を決めた。
民間に運営委託されているものの、東京都港湾局が所有するコース。他の東京都港湾局所管施設が休止される中、本コースも休業を余儀なくされたのだ。
入浴も食事も期待せず、シンプルにゴルフを楽しむだけであれば、感染リスクはゼロに近付く。原点に返りゴルフの楽しさを見直す、いい機会ととらえる余裕が欲しい。
駐車場でスタッフが「休業」を知らせるロッテ葛西ゴルフ。
ホームページ上でも休業を告知。ゴルフ産業にもコロナウィルスは暗い影を落としている。
Text/Junko Ogawa
小川 淳子
東京スポーツのゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材。現在はフリーでゴルフ雑誌などで執筆。